いつでも最前線で警備に当たるという自負がある。
かつて野の歩哨として活躍していた椋鳥たちは、田の歩哨となり、今は街の警備に当たっている。そこが最前線であるからだ。
駅前のネオンに照らされたねぐらは、二十四時間警備には都合がいい。おかげで街の椋鳥は寝不足で、それゆえ鳴き声も喧しい。
2012年4月5日木曜日
2012年4月1日日曜日
2012年3月20日火曜日
鳥の卵
「冷蔵庫を貸してくれませんか」と鳥に訊かれた。訳を聞くと「卵を冷やしたい」という。
なんでも、この鳥には時々冷やさないと孵らない卵が生まれるそうだ。
冷蔵庫を貸すくらいどうってことはないから、快く貸した。
けれど、困ったことにその鳥の卵が鶏卵そっくりなので、どれが食べていい卵で、どれが冷やし中の卵かわからなくなってしまったのだ。
「卵が孵るまで、六週間ほどです。それまで決して卵を動かさないでください。どうかよろしくお願いします」
と言われたから、もう、どの卵も触れることができない。
大好きなゆでたまごが食べられない由々しき事態は当分続く。
なんでも、この鳥には時々冷やさないと孵らない卵が生まれるそうだ。
冷蔵庫を貸すくらいどうってことはないから、快く貸した。
けれど、困ったことにその鳥の卵が鶏卵そっくりなので、どれが食べていい卵で、どれが冷やし中の卵かわからなくなってしまったのだ。
「卵が孵るまで、六週間ほどです。それまで決して卵を動かさないでください。どうかよろしくお願いします」
と言われたから、もう、どの卵も触れることができない。
大好きなゆでたまごが食べられない由々しき事態は当分続く。
2012年3月17日土曜日
死よりも強し
連れ合いを何者かに殺された鴉は、自らの羽を一枚、また一枚と嘴で引き抜き、その亡骸の周囲を守るように飾っていった。
死んだ鴉はいつまでも黒く輝き、その周りの羽は、日に日に色が褪せていった。
丸裸になった鴉は寒さと飢えに震え、それでもなお亡骸から離れようとしなかった。
羽のない鴉が死んでいるのを見つけた老人は、傍らに別の鴉の死骸と大量の白っぽい羽が落ちているのを見て、ひどく驚いたそうだ。
二羽の鴉は、老人が孫と一緒に手厚く葬ったという。
死んだ鴉はいつまでも黒く輝き、その周りの羽は、日に日に色が褪せていった。
丸裸になった鴉は寒さと飢えに震え、それでもなお亡骸から離れようとしなかった。
羽のない鴉が死んでいるのを見つけた老人は、傍らに別の鴉の死骸と大量の白っぽい羽が落ちているのを見て、ひどく驚いたそうだ。
二羽の鴉は、老人が孫と一緒に手厚く葬ったという。
2012年3月11日日曜日
2012年3月9日金曜日
油断大敵
「鰻には注意しなさいよ」と鴎は散々親から聞いていたけれども、鰻というのがどういうものだかは教えてもらわなかったのである。
「あなたの伯父さんは、鰻に殺されたの」と聞かされれば、鴎も鰻を恨めしく思う。
きっと「鰻」というのは、鋭い牙とか角とか、爪とかを持っていて、大きくて恐ろしいものだろうと、一生懸命想像した。
さて、そんなことを考えていたら、腹が減ってきた、海の中に黒くて細長い生き物がいる。あれはまだ食べたことがないが、魚のようにピチピチと暴れたりはしないだろう。きっと捕まえやすいはずだ。
++++++++++
原本のエピソードをそのまま使いました。鰻に首を閉められて殺される鳥が結構いるそうです。
(戦前の本の内容で、確認は取っていません。)
「あなたの伯父さんは、鰻に殺されたの」と聞かされれば、鴎も鰻を恨めしく思う。
きっと「鰻」というのは、鋭い牙とか角とか、爪とかを持っていて、大きくて恐ろしいものだろうと、一生懸命想像した。
さて、そんなことを考えていたら、腹が減ってきた、海の中に黒くて細長い生き物がいる。あれはまだ食べたことがないが、魚のようにピチピチと暴れたりはしないだろう。きっと捕まえやすいはずだ。
++++++++++
原本のエピソードをそのまま使いました。鰻に首を閉められて殺される鳥が結構いるそうです。
(戦前の本の内容で、確認は取っていません。)
2012年3月5日月曜日
犬と猫との親友
うたた寝から目覚めるのは、たいてい犬が先で、猫は大あくびを四回してから、犬を見上げる。
犬は早く猫と遊びたくてうずうずしている。猫はもう二回伸びをしてから、犬のしっぽに気づく。
ワホワホしているしっぽに徐に跳びかかる。犬は猫をあしらうようにしっぽを振り回すが、実のところ犬のほうがよほど興奮しているのだ。
毎日のように繰り返されるそれを、大勢の鳩が見て呆れているけれど、瞬きをしたら鳩ももう忘れている。こうして毎日が過ぎていく。
2012年3月4日日曜日
仲のいい犬と猫
猫が寝心地のよい場所を探しまわって辿りついたのは、犬の腹だった。
寝てばかりの猫の寝台になることを嫌がっていた犬も、次第に慣れていった。
猫のヒゲから得る情報は、犬にとって、非常に新鮮だったからだ。
ひなたの匂いにを嗅ぎ分けられるようになった犬と、ドッグフードも食べる猫は、今日も窓際でうたたねをしている。
寝てばかりの猫の寝台になることを嫌がっていた犬も、次第に慣れていった。
猫のヒゲから得る情報は、犬にとって、非常に新鮮だったからだ。
ひなたの匂いにを嗅ぎ分けられるようになった犬と、ドッグフードも食べる猫は、今日も窓際でうたたねをしている。
2012年3月3日土曜日
海鳥の巣
小さな島で一人で暮らしていたカースバードは、孤独で、歳を取り、身体も弱っていた。
ある嵐の晩、一組の海鳥の夫婦が、カースバードの島にやってきた。
彼らは巣を作る岩場を探していたが、なかなか条件の合う地を見つけられずにいたのだ。
「この島で、子供を作りたいのです」と海鳥はカースバードに伝えた。
海鳥は巣を作り、たくさんの卵を産むと、一つだけカースバードに与えた。
カースバードはその卵で元気を取り戻した。
カースバードは鳥たちに天気を教え、海風と大きな鳥たちと、密猟者から卵を守った。
そして、たくさんのヒナが生まれた。ヒナはカースバードが見守る中、巣立ち、季節がめぐるとまた戻ってきた。
「この島で、子供を作りたいのです」と海鳥はカースバードに伝える。
そして、巣を作り、卵を一つだけ、カースバードに与えた。
海鳥を見守りながら、カースバードはもっと歳を取った。
いくら海鳥の卵が滋養に満ちているとは言っても、カースバードはもう本当に年寄りだったから、少し元気になって、もっと老いていった。
そして、カースバードは「この島の海鳥の巣を守るについてのあれやこれや15条」を書き残して、死んだ。
ファーン諸島の聖カスバートをもじった。
ある嵐の晩、一組の海鳥の夫婦が、カースバードの島にやってきた。
彼らは巣を作る岩場を探していたが、なかなか条件の合う地を見つけられずにいたのだ。
「この島で、子供を作りたいのです」と海鳥はカースバードに伝えた。
海鳥は巣を作り、たくさんの卵を産むと、一つだけカースバードに与えた。
カースバードはその卵で元気を取り戻した。
カースバードは鳥たちに天気を教え、海風と大きな鳥たちと、密猟者から卵を守った。
そして、たくさんのヒナが生まれた。ヒナはカースバードが見守る中、巣立ち、季節がめぐるとまた戻ってきた。
「この島で、子供を作りたいのです」と海鳥はカースバードに伝える。
そして、巣を作り、卵を一つだけ、カースバードに与えた。
海鳥を見守りながら、カースバードはもっと歳を取った。
いくら海鳥の卵が滋養に満ちているとは言っても、カースバードはもう本当に年寄りだったから、少し元気になって、もっと老いていった。
そして、カースバードは「この島の海鳥の巣を守るについてのあれやこれや15条」を書き残して、死んだ。
ファーン諸島の聖カスバートをもじった。
2012年2月28日火曜日
2012年2月27日月曜日
子守をする小馬
小馬が走ると子供も走る。
背に乗せた子供が眠る。小馬はゆっくり歩む。
子供が泣けば、尾で頭を撫でる。
夕焼け空に向かって小馬が歌う。子供も歌う。
子供はいつでも歌を歌うけれど、小馬が歌えるのは草原に日が沈みきるまでの短い間だけ。
お日さまがちょっぴり油断しているその間だけ。
日が沈めば、子守はお月さまに交代だ。
背に乗せた子供が眠る。小馬はゆっくり歩む。
子供が泣けば、尾で頭を撫でる。
夕焼け空に向かって小馬が歌う。子供も歌う。
子供はいつでも歌を歌うけれど、小馬が歌えるのは草原に日が沈みきるまでの短い間だけ。
お日さまがちょっぴり油断しているその間だけ。
日が沈めば、子守はお月さまに交代だ。
2012年2月26日日曜日
2012年2月21日火曜日
動物の保護色
小さなカメレオンが今にも落ちそうな葉っぱの上でポーズを取る。上手に葉っぱ色に似せることができていると、非常に満足している。
リーフフィッシュはくすぐったい。このケッタイな小さな生き物をリーフフィッシュは知らない。
カメレオンが水に潜ったのか、リーフフィッシュが枯れ木に絡まったのか、それはお月さんだけが知っている。
リーフフィッシュはくすぐったい。このケッタイな小さな生き物をリーフフィッシュは知らない。
カメレオンが水に潜ったのか、リーフフィッシュが枯れ木に絡まったのか、それはお月さんだけが知っている。
2012年2月19日日曜日
針鼠と蛇の喧嘩
啓蟄。
「やあ、蛇。ぼくのごちそうになる気はないかい?」
「おはよう、針鼠。ずいぶん旨そうなツラをしてるね」
そんな会話を交わして、針鼠は蛇を、蛇は針鼠を食べようとした。
が、お互いがお互いを食おうというのだから、これがうまくいくわけはないのだ。
「まず、オレがお前を食べるよ、針鼠」
「いいや、ぼくが先だよ、蛇」
喧喧囂囂。
針鼠は困っていた。蛇が絡まって解けないのだ。
蛇もまた困っていた。針鼠が刺さって動けないのだ。
多くの獣や鳥が見ていたが、誰も二人を解き外す術を知らない。
「やあ、蛇。ぼくのごちそうになる気はないかい?」
「おはよう、針鼠。ずいぶん旨そうなツラをしてるね」
そんな会話を交わして、針鼠は蛇を、蛇は針鼠を食べようとした。
が、お互いがお互いを食おうというのだから、これがうまくいくわけはないのだ。
「まず、オレがお前を食べるよ、針鼠」
「いいや、ぼくが先だよ、蛇」
喧喧囂囂。
針鼠は困っていた。蛇が絡まって解けないのだ。
蛇もまた困っていた。針鼠が刺さって動けないのだ。
多くの獣や鳥が見ていたが、誰も二人を解き外す術を知らない。
2012年2月16日木曜日
狐狩り
英国紳士たちが首を傾げるのは、このところめっきり狐が捕まらないからなのである。
どんなに猟犬を増やしても、どんなに立派な衣装に着替えても、狐が全く見つからない。
犬たちもずいぶん苛苛している。
というのも、ある狐がニッポンに留学して、犬に化けることを覚えてしまったからなのだ。
教える方も習う方もずいぶん優秀な狐で、犬の鼻をも化かすことができるという術を身につけ、帰国後に英国中の狐に広めてしまったそうである。
「狐に化かされた」という言葉は、まだ輸入されていない時代の話だ。
どんなに猟犬を増やしても、どんなに立派な衣装に着替えても、狐が全く見つからない。
犬たちもずいぶん苛苛している。
というのも、ある狐がニッポンに留学して、犬に化けることを覚えてしまったからなのだ。
教える方も習う方もずいぶん優秀な狐で、犬の鼻をも化かすことができるという術を身につけ、帰国後に英国中の狐に広めてしまったそうである。
「狐に化かされた」という言葉は、まだ輸入されていない時代の話だ。
2012年2月12日日曜日
雁の大將
長い道のりを歩いて、雁の群れを迎える。
赤い空に点点とした群れを見上げる。次第に輪郭がはっきりしてくる。
大將を筆頭にめいめい場所を見つけて降り立った。
「よく来たね」と人が言う。
「互いに、遠路遥々」と雁が鳴く。
家離り 旅にしあれば 秋風の 寒き夕に 雁鳴きわたる
万葉集 巻7-1161
赤い空に点点とした群れを見上げる。次第に輪郭がはっきりしてくる。
大將を筆頭にめいめい場所を見つけて降り立った。
「よく来たね」と人が言う。
「互いに、遠路遥々」と雁が鳴く。
家離り 旅にしあれば 秋風の 寒き夕に 雁鳴きわたる
万葉集 巻7-1161
2012年2月3日金曜日
みんな溺れ死ぬ狐猿
もれなく溺死するという動物がいるそうだ。狐猿という。
彼らは、雲から生まれる。雲は、夥しい数の狐猿を生み落とす。ココアの滝が、年に一度だけ現れるのとほぼ同時に。
雲からボタボタと生まれた狐猿は、ほろ苦く甘い香りを頼りに大地を埋め尽くしての大移動をし、そのままココアの滝へ雪崩込む。
ココアは、熱い。
だから本当は溺死ではなくて、火傷死かもしれない。
彼らは、雲から生まれる。雲は、夥しい数の狐猿を生み落とす。ココアの滝が、年に一度だけ現れるのとほぼ同時に。
雲からボタボタと生まれた狐猿は、ほろ苦く甘い香りを頼りに大地を埋め尽くしての大移動をし、そのままココアの滝へ雪崩込む。
ココアは、熱い。
だから本当は溺死ではなくて、火傷死かもしれない。
2012年2月1日水曜日
2012年1月28日土曜日
家を建てる獸
海狸の建築技術が、世間に認められるようになって、海狸は他人の家まで建てるようになった。
海狸の建てる家は、良い香りがすると評判である。海狸の家に棲む夫婦は、仲が良い。
よい香りのする家は、いつもよいムードが漂うらしい。
子供の多い夫婦が増え、「夫婦円満の家」「子宝の家」として売り出されるようになった。
しかし、当の海狸は他人の家を建てるのに忙しくて、子供が少なくなった。
なんだか変だと思いながら、今日も海狸はカストリウム香る家を建てる。
海狸の建てる家は、良い香りがすると評判である。海狸の家に棲む夫婦は、仲が良い。
よい香りのする家は、いつもよいムードが漂うらしい。
子供の多い夫婦が増え、「夫婦円満の家」「子宝の家」として売り出されるようになった。
しかし、当の海狸は他人の家を建てるのに忙しくて、子供が少なくなった。
なんだか変だと思いながら、今日も海狸はカストリウム香る家を建てる。
2012年1月21日土曜日
鳥の本能
渡鳥が間違いなく目的地に辿り着くには、星や風との情報交換が欠かせない。
生憎、雲とは情報交換ができないのだが、鳥に雲と会話する能力がないためなのか、雲が無口だからなのかは、まだわかっていない。
生憎、雲とは情報交換ができないのだが、鳥に雲と会話する能力がないためなのか、雲が無口だからなのかは、まだわかっていない。
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