2017年7月23日日曜日

細く、冷たく、赤い

気が付くと、夜道を誰かと手をつないで歩いている。真夜中の住宅街。周囲に歩く人の気配はない。
初めて手をつないだのは、酔っ払った帰り道だった。左手に夜食用のカップ麺と水の入ったレジ袋。空いた右手を、ふいにきゅっと握られた。少しひんやりした細い手の感触。人恋しさもあって、握り返して、そのまま歩いた。隣は見なかったし、手も見なかった。そんなことは、どうでもよかった。

それから、夜11時を過ぎるころに歩くと、必ず手をつなぐようになった。回数を重ねるうちに、少し冷静になってきたようで、その手の存在が気になってきた。隣に人がいるわけではないことは、とっくにわかっていた。
ぐっと握って、手を目の前まで持ってくる。
細くて白い女の手。長く伸ばした爪は鋭く整えられ、夜道でもわかるほどに艶やかな真っ赤なネイルに彩られていた。