tag:blogger.com,1999:blog-36696337450447229362024-03-28T08:53:18.230+09:00懸恋-keren-超短編Unknownnoreply@blogger.comBlogger3333125tag:blogger.com,1999:blog-3669633745044722936.post-52453873770100479152024-03-11T21:53:00.000+09:002024-03-14T08:37:17.419+09:00古時計<p><span class="css-1qaijid r-bcqeeo r-qvutc0 r-1tl8opc" style="text-overflow: unset;">家にある五つの時計は、それぞれ好き勝手な時刻を示している。人と会う約束もないから困らない。時計たちと同じ勝手気ままなその日暮らしである。それでも年に一度だけ、誕生日の正午に五つの時計を一斉に合わせる。さぁチクタク、カチコチ、ビィビィ、ポッポー、リンリン、この老頭児を祝っておくれ。</span></p>Unknownnoreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-3669633745044722936.post-58584541088255110292024-02-23T13:34:00.000+09:002024-02-24T10:34:27.745+09:00金魚鉢(もしくは猫の日)<p>ね、この猫は金魚を狙っているわけではないんだよ。金魚には気の毒だけどね。ほら、こんなに逃げ回って。水草を触りたいわけでもないんだよ。ゆらゆら揺れてるけどね。水は触るの好きじゃないね、この猫は。撫でてごらんよ。金魚鉢の前で、じっとしている、ふわふわの、この猫を撫でてごらんよ、人間。</p>Unknownnoreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-3669633745044722936.post-42693380022877574222024-02-13T13:36:00.005+09:002024-02-13T13:40:45.400+09:00図書館<p> あなたは今日からこの図書館の雑用係として働き始める。長く働けば、司書見習い、司書助手、司書、と出世することも可能だ。<br /> この図書館はあるお方の邸宅だった建物で、ほとんど宮殿と言っていい、6階建ての大きな図書館だ。階段の踊り場は、初代館長の膨大なコレクションの展示に使われている。下階から、デスク、チェアー、ランプ、万年筆、便箋だ。展示物には触れないように。え? さっき万年筆を使ってしまった? インクが掠れて、罵詈雑言を書かされた? そうだろうそうだろう。万年筆には私から詫びを入れておく。<br /> トイレは6階だ。6階にしかない。だが、数え切れぬほどある個室は非常に広く、デスクとランプ、ソファも備え付けられている。自分の部屋として使っている職員も多いから、適当な空き部屋を見つけるといい。名札が掛かっていないトイレならどこを使ってもよろしい。ちなみにトイレは和式だ。あまり下を見ないこと。<br /> あなたは足音を立ててはいけない。だからこの図書館内では宙を泳いで移動するのが基本となる。水中と同じ要領だ。難しいことはない。空気を手足で掻き分けて飛べばいいのだ。もちろん、図書館を一歩出れば、空中に浮くことなんてできない。<br /> あなたは図書館を訪れる人を見ることはない。だが、本が動いたり、ページが捲られたりするのを見ることはあるだろう。本が独りで動いているように見えるが、ちゃんと人がいるから安心しなさい。当然あなたの姿も他の人からは見えない。<br /> あなたの主な仕事は、館内の掃除だ。書棚の埃を落とし、閲覧室のテーブルと椅子を拭き、廊下を磨く。6階のトイレの掃除と紙の補充も忘れずに。ああ、名札が掛かっているトイレの掃除は不要だ。それから初代館長のコレクションも。<br /> 一番大事なのは、本から落ちた文字の回収だ。何しろ古くて大きくて重たい本が多いから、毎日のように文字が落ちている。埃や塵と一緒に捨ててしまわぬように。一文字残らず箒と塵取りで壊れないように集めて、本に戻す。どうしてもどの本かわからない時は、専用の封筒に文字を入れて、5階の館長室のポストに入れておきなさい。文字が落ちていた場所もメモするように。私が本に戻しておこう。</p>Unknownnoreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-3669633745044722936.post-5436658373859637172024-02-08T11:25:00.000+09:002024-02-08T11:25:46.703+09:00洗濯機<p>誰も住んでいないように見える古いアパートの玄関前で、洗濯機が唸りながら揺れていた。数時間後、再びアパートの前を通ると、洗濯物はどこにも干されておらず、洗濯機は低く唸り揺れて続けている。私は家に一度戻り、使い古したハンカチを持ってきた。洗濯機に近寄ると、コンセントもホースも繋がっていない。蓋を開け、がらんどうの洗濯槽にハンカチを落とした。洗濯機の唸り声が僅かに高くなった。</p>Unknownnoreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-3669633745044722936.post-56462768677113014472024-01-22T14:03:00.002+09:002024-01-25T15:38:46.515+09:00#冬の星々140字小説コンテスト投稿作 「広」投稿作<p>カラフルなバスも、かっこいい文字が並んだ看板も、きれいな写真がいっぱいのチラシも、すべて「広告」というものだと知ってしまった子は、世界に心底がっかりした。今夜も、チラシで折った紙飛行機から夜の町に真っ白なペンキを撒いて、白くなった町にクレヨンで大きな鳥の絵を描く夢を見ている。</p>Unknownnoreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-3669633745044722936.post-41187964186534753742024-01-13T03:06:00.005+09:002024-03-14T10:03:42.417+09:00#冬の星々140字小説コンテスト投稿作 「広」投稿作<p><span class="css-1qaijid r-bcqeeo r-qvutc0 r-1tl8opc" style="text-overflow: unset;">子供の頃に住んでいた町には広場があった。小さな時計台があり、フィドル弾きが鳩や猫を相手に演奏していた。古い郵便ポストがポツンと淋しそうにしていたから、よく手紙を出した。書ける文字は少しだけ。切手も貼っていない。その手紙が60年を経て届いた。孫が喜び、返事を書くんだと張り切っている。</span></p><p><span face="meiryo, メイリオ, "ヒラギノ角ゴ Pro W3", "MS Pゴシック", sans-serif" style="background-color: white; color: #444444; font-family: meiryo, メイリオ, "ヒラギノ角ゴ Pro W3", "MS Pゴシック", sans-serif; font-size: 15.4px;">+++++++++++</span><br style="background-color: white; color: #444444; font-family: meiryo, メイリオ, "ヒラギノ角ゴ Pro W3", "MS Pゴシック", sans-serif; font-size: 15.4px;" /><span face="meiryo, メイリオ, "ヒラギノ角ゴ Pro W3", "MS Pゴシック", sans-serif" style="background-color: white; color: #444444; font-family: meiryo, メイリオ, "ヒラギノ角ゴ Pro W3", "MS Pゴシック", sans-serif; font-size: 15.4px;">予選通過 </span></p>Unknownnoreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-3669633745044722936.post-45666268188554439222024-01-08T04:04:00.000+09:002024-01-14T12:03:12.435+09:00#冬の星々140字小説コンテスト投稿作 「広」投稿作<p><span class="css-1qaijid r-bcqeeo r-qvutc0 r-1tl8opc" style="text-overflow: unset;">往来で文字通り大風呂敷を広げている人がいる。警官に注意されても気にする様子はない。口上を述べるが異国の言葉なのか、聞き取れない。最後に風呂敷に飛び込み、吸い込まれた。大風呂敷は軽やかに宙に舞い、電線に絡み付き停電が起きた。大風呂敷に消えた人を案ずる者が一人でもいればよいのだが。</span></p>Unknownnoreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-3669633745044722936.post-69734434946378826262024-01-04T01:05:00.000+09:002024-01-04T15:39:02.380+09:00果実戯談 パイナップル<p><span class="css-1qaijid r-bcqeeo r-qvutc0 r-1tl8opc" style="text-overflow: unset;">パイナップルの飛行性能を人類はやっと活かせるようになった。若者は自由に乗りこなし、老人もパイナップルを抱きしめて飛び回り始めた。抱かれたパイナップルは照れくさいのかトゲトゲしくぶっきら棒な飛びっぷりになるが、その分おいしくなることを酸いも甘いも噛み分けた老人たちはよく心得ている。</span></p>Unknownnoreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-3669633745044722936.post-61944459513026276802023-12-05T19:42:00.000+09:002023-12-07T09:33:36.857+09:00果実戯談 マンゴスチン<p>初めてマンゴスチンを食べた日、大切な物をマンゴスチンの殻に仕舞うと長持ちすると先生は言った。一番仲の良い人形に今日からここがあなたのベッドだと話すと、少量の魔法で殻を大きくし、器用に身体を畳みマンゴスチンの殻の中で眠るようになった。首の向きも脚の角度も私には真似できない美しさ。</p>Unknownnoreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-3669633745044722936.post-88615890935604078242023-12-01T08:07:00.001+09:002023-12-07T09:32:32.878+09:00果実戯談 レモン<p>目覚まし時計が鳴る10分前、部屋は爽やかな香りで満たされ、薄っすらと覚醒を始める。そろそろ目を開けてやろうかと思う頃、頬にひんやりとしたものがぐりぐりと押し付けられる。唇に落ちてきた酸っぱい雫を舐め完全に目覚める。鳴り始めるアラーム。おはようレモン、今日も起こしてくれてありがとう。</p>Unknownnoreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-3669633745044722936.post-69766872339000902192023-11-18T13:34:00.004+09:002023-11-18T13:34:58.057+09:00果実戯談 スイカ<p>私が歩いた跡にはスイカの種が落ちる。種はどこに落ちてもその場で育ち、とても小さなスイカの実になって私の元へ転がって帰ってくる。私はスイカの実を拾い上げると「よく帰ったね」と撫で、ポイと口に放り込む。季節に関係なく甘い。そしてまた私はスイカの種を落としながら歩むのだ、命尽きるまで。</p>Unknownnoreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-3669633745044722936.post-65715630016020811472023-11-02T15:05:00.000+09:002023-11-05T09:59:25.905+09:00果実談義 メロン<p> 「道に迷ってしまって」ご老人に話しかけられた。年季の入ったメロンの上を不安そうに指が彷徨っている。「私のメロンと比べて見ましょう」幸いご老人の目的地はすぐわかった。私は申し出てご老人とメロンを交換した。古いメロンを指で辿ると昔の町並みの香りが鼻腔を擽る。さて時間散歩と洒落込もう。</p>Unknownnoreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-3669633745044722936.post-37073274564823352482023-10-31T11:45:00.000+09:002023-11-05T10:00:21.122+09:00果実談義 桃<p>季節外れの桃を買った。八百屋の親父さん曰く「ペット用? 観賞用? だかの桃らしいんだが俺もよくわからん」重さも触り心地も桃そのもの。よい香り。やさしく撫でると微かに身震いする。寿命はわからない。食べる桃ならとうに腐っているはずだ。甘い香りが強くなってきた。気のせいだと思いたい。</p>Unknownnoreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-3669633745044722936.post-53922924439278166292023-10-17T18:22:00.000+09:002023-11-05T10:01:50.729+09:00果実談義 柿<p>新しいパソコンを買ったらマウスが柿だった。ヘタが掌に障るかと思ったがそうでもない。矢印はするする動き回り、軽快にクリック。実に快適だ。だがレシピやカフェ情報など食べ物を検索する時だけは暴走する。近頃は柿の好みもわかってきたし、何より柿の選んだカフェは間違いがないので、任せている。</p>Unknownnoreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-3669633745044722936.post-71234544993455747192023-10-04T17:04:00.006+09:002023-10-06T10:56:00.739+09:00#イメージの色見本 ④秋<p><span class="css-901oao css-16my406 r-1tl8opc r-bcqeeo r-qvutc0"></span></p><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgYpwgAriUoX3ddy5J8tA9tJdpCqd98zxNvaJFxxPGUiGD9flTexJo424TjcaoGLbamH_z8vHWoZplRLFTbJwnAEEM3tN6iXGfCnO5_T4Et8pJvtgLxJGshtscV69Dzqiu9aZBvryFkORuOudEIxuVpdhwKV9sFjFZEHUyRSkfk8ShP0ce6opTQVpMgKbHG/s2048/F7lKqWmbAAAZXPC.jpg" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="2048" data-original-width="2048" height="320" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgYpwgAriUoX3ddy5J8tA9tJdpCqd98zxNvaJFxxPGUiGD9flTexJo424TjcaoGLbamH_z8vHWoZplRLFTbJwnAEEM3tN6iXGfCnO5_T4Et8pJvtgLxJGshtscV69Dzqiu9aZBvryFkORuOudEIxuVpdhwKV9sFjFZEHUyRSkfk8ShP0ce6opTQVpMgKbHG/s320/F7lKqWmbAAAZXPC.jpg" width="320" /></a></div><p><span class="css-901oao css-16my406 r-1tl8opc r-bcqeeo r-qvutc0"> </span></p><p><span class="css-901oao css-16my406 r-1tl8opc r-bcqeeo r-qvutc0">冷たい風が首筋を駆け抜ける。踏切はなかなか開かない。天高く警報音が鳴り響いている。空を見上げれば雲のふりをした鰯が泳いでいる。今年は雪が積もる前に故郷に帰ろうか。そんな事を考えていたらやっと電車が見えてきた。いや、電車のふりをした龍だ。 </span><br /> </p><p></p>Unknownnoreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-3669633745044722936.post-67066635499804526842023-10-01T18:11:00.002+09:002023-11-05T10:02:08.417+09:00果実戯談 キウイ<p><span class="css-901oao css-16my406 r-1tl8opc r-bcqeeo r-qvutc0">誰が読むともしれない手紙を書く。悩み事や愚痴を書き連ねることもあるし、空想の話をすることもある。便箋を畳み、封筒に入れる。しっかりと封をし、切手を貼り、宛名は書かない。半分に切ったキウイをスタンプして、郵便ポストに投函する。私にも、キウイが捺された知らない人からの手紙が時々届く。</span></p>Unknownnoreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-3669633745044722936.post-1466026420902604422023-09-20T21:04:00.001+09:002023-09-21T12:40:24.802+09:00#イメージの色見本 ③故郷<span class="css-901oao css-16my406 r-1tl8opc r-bcqeeo r-qvutc0"><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhONp0VHigXAVFgGIpMzo-rJL80x0YxfSxmjRbjqz2cggBD--LEJUWzg3ZkSB6pQRpTJ1eI0Co6agVU9h_DOG7WYaqK_T3RL6_VGaNnJ9594MYj-0wLgFzY2bBG0U6in1Dwv8FTCYDPaeN5J97pl1kgULzzilpM6G3vezKY-hpWGZ0e8XrTn8vHtdNUpP4g/s2048/F6d7SzmbEAA5kpC.jpg" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="2048" data-original-width="2048" height="320" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhONp0VHigXAVFgGIpMzo-rJL80x0YxfSxmjRbjqz2cggBD--LEJUWzg3ZkSB6pQRpTJ1eI0Co6agVU9h_DOG7WYaqK_T3RL6_VGaNnJ9594MYj-0wLgFzY2bBG0U6in1Dwv8FTCYDPaeN5J97pl1kgULzzilpM6G3vezKY-hpWGZ0e8XrTn8vHtdNUpP4g/s320/F6d7SzmbEAA5kpC.jpg" width="320" /></a></div><br />急坂の途中の林でザリガニを釣ってはいけないよと大人は言う。沼に落ちた子は帰ってこない。「どんぐり拾いは?」と問えば「それはどんぐりに訊いてみな」と言われた。「どんぐり拾っていいですか? イテ」つむじに命中するどんぐり。今年も許可が出た。</span>Unknownnoreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-3669633745044722936.post-43563612418457151092023-09-15T20:35:00.000+09:002023-09-18T12:39:02.208+09:00#イメージの色見本 ②音<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjfB6GSdIOYDhP8uxhq82Udu70FwaWXdmAU5dx6DBKu4z7c13dKVX-1dLT3pFaMIEANEn_rk-lKA7bjke5jfvqG4BVJN1dqM2GOuezLnyxwJi0aMPwNTuQNCTneAPADhVcPL8fQBNhtpXBEHu_g_aK7GxTELxYVaZlUR0lwTeRlDmVTFt5flMonC_pL7BvD/s2048/F6EEonhaUAAuqkF.jpg" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="2048" data-original-width="2048" height="320" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjfB6GSdIOYDhP8uxhq82Udu70FwaWXdmAU5dx6DBKu4z7c13dKVX-1dLT3pFaMIEANEn_rk-lKA7bjke5jfvqG4BVJN1dqM2GOuezLnyxwJi0aMPwNTuQNCTneAPADhVcPL8fQBNhtpXBEHu_g_aK7GxTELxYVaZlUR0lwTeRlDmVTFt5flMonC_pL7BvD/s320/F6EEonhaUAAuqkF.jpg" width="320" /></a></div><br /><p><span class="css-901oao css-16my406 r-1tl8opc r-bcqeeo r-qvutc0">今夜、美術室で眠ることになった楽器たち。音楽室と違う様子に大興奮、絵具で遊び始めた。「この色は私の音とそっくり!」とファゴット。「なんて美しい色だろう」とホルン。「これは僕の色だよ」とトランペット。「こんな色で歌いたい!」とフルート。</span></p>Unknownnoreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-3669633745044722936.post-63186331194738074152023-09-13T09:08:00.000+09:002023-09-18T12:40:06.700+09:00果実戯談 サクランボ<p> <span class="css-901oao css-16my406 r-1tl8opc r-bcqeeo r-qvutc0">鍵屋に「鍵ちょーだい」と言えば「やってもいいが、そのサクランボと交換だ」という。鍵が手に落ちた瞬間、サクランボになる。違う、鍵が欲しいのに。約束だからサクランボを鍵屋の手に落とす。何度やっても鍵屋の手には鍵。時々、青い嘴がサクランボの瞬間だけ攫っていく。鍵は、いつ手に入るだろう。</span></p>Unknownnoreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-3669633745044722936.post-22969160807667964692023-09-07T20:15:00.000+09:002023-09-18T12:41:47.587+09:00#イメージの色見本 ①風<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEh9hgRROHU9LwJ_9v_dTD5w-aUr3VBrL4X3T5gfMf68_N0jRB5Suk9PccSTkM_Ct1H5RMx89XBW9U8NstZE_mCJ4QeQg6WRCzYoojqD_3CUfEkXD5zdC9gYJhoEucvhw78AOI0YdOu-WJP2tiUE1oA77l-SjXpk4SKZ6b1NiJLkT77-4FQY5xg_5cTykNs6/s2048/F5azbxKbUAATq4-.jpg" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="2048" data-original-width="2048" height="320" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEh9hgRROHU9LwJ_9v_dTD5w-aUr3VBrL4X3T5gfMf68_N0jRB5Suk9PccSTkM_Ct1H5RMx89XBW9U8NstZE_mCJ4QeQg6WRCzYoojqD_3CUfEkXD5zdC9gYJhoEucvhw78AOI0YdOu-WJP2tiUE1oA77l-SjXpk4SKZ6b1NiJLkT77-4FQY5xg_5cTykNs6/s320/F5azbxKbUAATq4-.jpg" width="320" /></a></div><br /><p><span class="css-901oao css-16my406 r-1tl8opc r-bcqeeo r-qvutc0">煙突を見上げる。今日の煙の色は一段と身体に悪そうだ。工場の中は歯車だらけ。殆ど手動だから有害な煙なんて出ていない。大昔の工場地帯に憧れてわざわざ色を着けた煙を出しているのだ。山の風と海の風が交互に着色煙をひゅうっと吹き飛ばして、おしまい。</span></p>Unknownnoreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-3669633745044722936.post-42831747100634613302023-09-06T13:47:00.000+09:002023-09-18T12:42:40.762+09:00果実戯談 巨峰<p> <span class="css-901oao css-16my406 r-1tl8opc r-bcqeeo r-qvutc0">「ちゃんと計算したか?」と問われる。「はい、新鮮な巨峰で」と答える。確かめ算のたびに、どこからともなく小石が降る。ときどき綺麗な石が降ると「あ、水晶!」「アメジストかな?」計算は中断。はじめからやり直し。巨峰が疲れてくる。綺麗な石が降らないかわりに計算ミスが増え、今日も残業。</span></p>Unknownnoreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-3669633745044722936.post-79470782055367367782023-09-04T18:39:00.000+09:002023-09-18T12:43:21.665+09:00果実戯談 みかん<p><span class="css-901oao css-16my406 r-1tl8opc r-bcqeeo r-qvutc0">時間は、みかんに任せるとよい。数ある柑橘の中でも、みかんをおすすめする。午前の仕事をやっと終えた私はレストランへ向う。西の空は茜色だが、あくまでランチだ。ウエイターは私の手の中のみかんをチラリと見て「ご昼食ですね」と言った。自分の望むタイミングで行動したいなら、みかんに限る。</span></p>Unknownnoreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-3669633745044722936.post-90053581073378158062023-09-03T18:35:00.000+09:002023-09-18T12:44:09.970+09:00果実戯談 梨<p><span class="css-901oao css-16my406 r-1tl8opc r-bcqeeo r-qvutc0">よく回る梨だ。「きっと音楽が聴けるよ」と八百屋がいう。レコードに梨を乗せた。ヘタをレコードの溝に当てると音が鳴った。梨が加速する。音楽も早回しになり、煙が出てきた。音楽はすべて煙になり、レコードはツルツルに、梨は皮が剥けた。私は梨を食べ、煙を吸い込んだ。溜め息は大好きなあの歌に。</span></p>Unknownnoreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-3669633745044722936.post-71871978935716778922023-09-01T17:54:00.000+09:002023-09-18T12:44:51.574+09:00果実戯談 苺<p> <span class="css-901oao css-16my406 r-1tl8opc r-bcqeeo r-qvutc0">父の描いた水墨画は天気が変わる。雨の日、風の日、雪の降る日。私は父の絵が大好きだ。「よっこらせ」父がうれしそうに苺を買ってきた。「これは重くなるぞと思ったら、帰り道からどんどん重たくなった」と自慢する。ずっしりと重く、甘酸っぱい香りがする。父はこの重い苺を文鎮にして水墨画を描く。</span></p>Unknownnoreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-3669633745044722936.post-43117832713912578742023-08-31T17:50:00.000+09:002023-09-18T12:45:47.194+09:00果実戯談 イチジク<p> <span class="css-901oao css-16my406 r-1tl8opc r-bcqeeo r-qvutc0">「もしもし」よいイチジクが手に入ったので、いとこに電話をした。「久しぶり。元気?」いとこの声もプチプチしている。「そっちもイチジク?」「そう!」互いに祖母の声に似てきたと笑い合う。季節問わず通信できるかもと、乾燥イチジクを試したこともあったがメール三文字、高確率で文字化け繧、繝√</span></p>Unknownnoreply@blogger.com