超短編
思いがけない夢を見たので、出てきた人に謝りたい。(24字)
空腹と夏空、どちらの空が是か、問答させたい。(22字)
ハーモニカ爺さんが奏でる素朴なメロディーを、カブトムシに聞かせたい。(34字)
あわてんぼうの夏空に、蝸牛と紫陽花の陳情を届けたい。(26字)
雨宿りをしてみたい茸のために、傘を誂えたい。(22字)
古いステンドグラスの青い硝子を取り出して、海で泳がせたい。(29字)
心臓の火傷が治った鳥に、新しい飛び方を教わりたい。(25字)
空を飛びたい黒猫のために、鴉の羽を集めて、嫌われたい。(27字)
別々の場所で、同じ献立の食事をしている二人の乾杯を取り持ちたい。(32字)
耳の中を掻いてもらうのに、蟻がいいか、天道虫が巧いか、アザミに相談したい。(37字)
忘れられた天文台に忍び込み、太古の望遠鏡を修理したい。(27字)
ネモフィラ畑で、花の好きな鯨を泳がせたい。(21字)
真珠を朝露と勘違いしている虫に、小さな水晶玉を贈りたい。(28字)
六腑が飛び出たすべての赤ん坊の頭を撫でたい。(22字)
気まぐれにタイムスリップする玄関ドアを付けた家に住みたい。(29字)
雨の日にファンファーレを吹いてくれる子熊のぬいぐるみを売っているお店を教えてあげたい。(43字)
焚書の灰でできた埋め立て島に世界一の図書館を建てたい。(27字)
「なめらかな雨と、すべらかな雨、どちらがお好みですか」と、てるてる坊主に問われたい。(42字)
筆記するそばから濃さも太さも色も変わる気まぐれな鉛筆で会えない人に手紙を書きたい。(41字)