2003年2月28日金曜日

ニンニクがニヤニヤしながら言うには
「肉まんってニンゲンに似てるよなー」
ニンジンはニンゲンを憎んでいましたので
「肉まんはニラレバ炒めだよ」
と言い返しました。
「ニンゲンって美味いのかな。二の腕の煮付けとか。でもニンゲンって臭いそうでやだな」
とニワトリが言うと皆頷きました。
「でもニンゲンって偽物が多いからな」
「偽物は売っても二束三文らしいわよ」
と言ってるのはニシキヘビの夫婦です。
「ニンゲンの中ではニンジャがよく売れる。ニホンジンは駄目だ」
ニンニクはにたにたしています。ニヒルなつもり?

2003年2月27日木曜日

南極の流れ星はナーバスだった。
よっぽど泣き叫んでやろうかと思ったが情けないのでやめた。
仲間があれこれ宥め慰め、何故ナーバスになったのかと聞いたが答えなかった。
何しろナメクジになぶられたのだ。言えるわけがない。
事実、流れ星は艶めかしい。なんとも悩ましげに歩いた。
そして少々ナルシストだった。
泣きっ面に蜂なことにナマズとの内通がバレてしまったのだ。
それで流れ星の自尊心はすっかり萎えてしまった。

南無三!なよなよになった流れ星を狙っている成金が一人いるようだよ…。
艶めく女も難儀だねぇ。

2003年2月26日水曜日

ドクロは戸を開けると同時に言った。
「逃げるぞ。投獄される」
ドクロが率いるトカゲ盗賊団の逃避行は当然のことながら困難を極めた。
一向はあえて東進したが既に世界中に通せん坊が待ち受けていた。
十重二重に取り囲まれていたのだ。
だましだまし通り抜けては来たが、特に年端もいかぬ少年トカゲにとっては塗炭の苦しみであった。
どのみち捕らえられるなら、早く独居房にでも入って眠りたいとさえ思った。
実際、まもなく一行は取り押さえられた。
頭領ドクロは途方にくれた。
トカゲ盗賊団は事実無根の豆腐屋なのだ。
とんちんかん

2003年2月25日火曜日

手風琴弾き天狗は、大層照れ屋で天井裏の部屋で独り手風琴を弾く。
本当は淋しい天狗は出窓からいつも外を眺めていた。
ある日窓から身を乗り出しすぎて天狗は転落した。
だが、そこは天狗、自前の翼で難を逃れた。
その顛末を目撃していたのがDJデンデンムシ。
素敵な手風琴の音色の出所が判って天にも昇る気持ちだった。
これが天狗の転機となったのだ。
DJは電波に手風琴の音色を乗せた。
電光石火で広まり天才と呼ばれた天狗。
でもやっぱり天狗は照れてばかりで世間に顔を出す事はなかったとさ。
これで伝説の天狗のお話はおしまい。

2003年2月24日月曜日

ツバメはツグミに頼まれ銀行へお遣いに出た。
ところが月夜カラスに掴まって、ついつい釣りに行ってしまった。
このカラスは艶種の絶えない男だった。
若いツバメは知らなかった。ただのカラスだと思っていたのだ。

カラスは、ツバメが通帳を持っていることに気付きこう言った。
「どうだ?このまま津々浦々巡ってみないか?」
遠い港町まで行き、夜になると旅館に
芸者を呼びツバメを遊ばせた。
翌朝、カラスはすさまじい面構えで言った。
「オマエが呼んだ女は俺の妻だ。」

こうして月夜カラスは美人局を成功させたのだった。

2003年2月23日日曜日

沈没船を調査した知識人は言った。
「緻密な調査の結果、小さな蝶のマークが見つかった。
沈没船は地底人の物であると確定した。また地下都市の地図を入手した。
提灯工場があるかもしれない。」
あるものは「誅殺だ!チョイチョイのチョイだ!」と言い
またあるものは「まずは忠告だ」と言い
別のものは沈思黙考のフリをした。
そのころ地底人は着々と珍獣にチョコレートを与えていた。
ちょこ才な奴らも縮緬雑魚の徴用をはじめていた。
まったくちゃんちゃらおかしな茶番ですこと。

2003年2月21日金曜日

退屈していたタヌキはたすきを掛けて旅に出た。
田畑を突っ切り竜巻に遭い飛んできたタンスにぶつかりたんこぶができタトゥーを入れた。
海に入り鯛の食べ放題に満足しタツノオトシゴとダチになって玉手箱をもらった。
太陽が恋しくなったので滝を登りタニシを助け台風と戦い宝を奪い立ち小便して黄昏た。
たまには煙草を吸い溜め息をつき痰も吐いた。
絶え入ったタヌキの玉屋の前にて黙って訊ねる。
「タヌキ?垂れ目は退治できた?」

2003年2月19日水曜日

「そなたは空飛ぶ僧侶でございますか」
「そのとおり。某、空飛ぶ僧。これは側近のゾウである」
「某は蕎麦職人のゾンビでございます」
「そんな!あのゾンビが目の前に!」
「僧侶が蕎麦好きと聞いて倉庫からあるだけの蕎麦粉を持って参りました」
「某はともかくこのゾウは底無しに食べるぞ」
「もちろんそのつもりで。これで倉庫の掃除ができます」
「礼にそなたを供養してやろう。供え物は何がよいかね?」
「有難うございます。それでは空豆を」
僧侶は即座に念仏、
それゆえ蕎麦を食べ損ねた。

2003年2月17日月曜日

朝十時、先陣を切るのは宣伝鳥
「石鹸買うなら清潔堂。洗剤使うなら清潔堂」
せびられても目を合わせてはいけない。石鹸千個は買わされる。
蝉は専業主婦派遣専門。生活のだらしない家の門柱に張り付いて宣伝する。
「潤いある生活をしましょう。一家に一台専業主婦。専業主婦なら節約機能付きの当社の専業主婦をご用命ください」
せちがらい世の中を説教するのは仙人。
「あなたがたは洗脳されている。賎民などこの世にはいない。雪辱を果たすため今こそ戦士よ、立ち上がれ」
これぞ寂寥の極み。戦跡に響く宣伝機械の声。

2003年2月16日日曜日

垂涎の的だったその翠玉は手に吸い付くような感触だった。
もう一度、灯りに透かしてから
俺は翠玉を口の中に放りこんで水筒のお茶と一緒に飲み込んだ。
次に翠玉のお姿を拝めるのは推定数時間後。スキップでもしたいくらいすこぶるいい気分だ。
だが油断は禁物だ。スローステップ、忍び足。
ところが、ここでスケべ根性が顔を出した。
水晶玉も戴こう。
筋書きは変わるが、まあいいだろう。スリルもある。素敵じゃないか。
その途端スプリンクラーが作動した。
足がすくんだ。
水を吸ったステテコがずり落ちる。
素裸につき遂行不能。

2003年2月14日金曜日

しっとりと品をつけたシッポがしなだれ
シニカルな死体がシッポをしゃぶる。
シッポ至極幸せ。

死体、シッポを邪険にすれば、シッポしおしおと泣く。
朱唇が死体に吸い付けば、シッポ嫉妬す。
シッポが姿容、端麗につき、情痴に溺れる者後を立たず。
シッポしらばくれる。死体は知らん顔なれば、真意はかりがたし。
死体とシッポ、しっぽり濡れた霜月十三夜。

2003年2月13日木曜日

さあ、サーカスの始まりですぞ。
サイケデリックなサーチライトに照らされてサイかサイクリングして入ってきました。
さてさてお次ぎはなんですかな?
才芸秀でたサルの登場。逆だちで玉乗りとはさすがですな。
さぞかしたくさん稽古をしたことでしょうよ。
颯爽と現れたるはサテンの衣裳のサラブレッド。
燦燦とさくらの花も咲き乱れておりますぞ。
サイボーグと噂のピエロが三人。一人は三白眼で逆とんぼ
一人はサックス吹き、もう一人はサイドステップ踊ってますぞ。

興奮覚めやらぬサーカス小屋、今夜の酒が楽しみですな。

2003年2月12日水曜日

コイが鯉濃をすすっていたらコケティッシュなコアラが言った。
「あら、共食い」
コイは高熱を出した。後悔した。
コアラは公園で恋に落ちた。狡猾そうなコウモリに。
コアラは腰を振り恋の歌を歌いながら身を焦がした。
コウモリは困っていた。高価な蝙傘をどのように売り付けるか。
公衆電話で傲然なゴリラと交渉をはじめた。
ゴリラは興奮していた。高利貸しで高額な金を手に入れたのだ。
小踊りするゴリラを見てコオロギは恐がった。
小癪なコオロギは蒟蒻を拵えコスモスを摘んでコックピットに向う。
婚約者のコイに会いに行くため。

2003年2月11日火曜日

ケシゴムとケムシが境内でけんかしていた。
ケシゴムはけばけばしい警戒色になり、ケムシは毛穴から煙を吹き出させている。
数日前から続くけんかは激化しており
ケシゴムは顔にケムシは足にひどい怪我をしていた。
けんかの原因は一人の傾城だった。実は既に彼女は源五郎に請け出されていた。
けれどもケシゴムもケムシもそれを知らない。
このけんかは、もはや形骸化しており、寺を荒らした二人には検非違使による刑罰しか待っていないのだ。
それでも激戦は続く。
いったいいつケリがつくのか、この狷介なケシゴムと外道ケムシの懸想決闘。

2003年2月9日日曜日

薬売りのクラゲが苦しんでいるクジラに出会いました。
「クジラ、具合が悪いのなら薬をやろうか?」
「頼むよクラゲ、果物が腐ってたんだ」
クラゲは葛湯をやりました。
しばらくしてくちびるを腫らしたクマが来ました。
「クラゲ、薬をくれ、雲助に食わされた。糞味噌だ」
クラゲがクローバーのクリームを塗ってやるとクマのくちびるはすぐによくなりました。
クラゲは良い気分。
くるりくるりと空中回転を繰り返して、狂ってしまったグズなクラゲ。

2003年2月8日土曜日

消えた記憶を取り戻す旅に出た生真面目なキクラゲは傷を負って、義賊のキリンが経営する喫茶店に寄宿していた。
キクラゲは気弱になっていた。
「奇跡でも起きなければ私の記憶は戻らない」
「キクラゲ、きっときみの記憶は戻る。希望を持とう」
キツツキが切手のない手紙を運んできた。
「キクラゲ、吉報だ。おまえはキャラメルを食べて倒れたという情報だよ」
そこへ客の吸血鬼がやってきて牙を剥いて言った。
「キャラメルの解毒剤はキクラゲで作ったキャンディーだ」
あぁ、気の毒なキクラゲ、己を切り刻む。

2003年2月7日金曜日

買い込んだカレーライスとカービン銃だけを頼りに
海賊カタツムリが開拓した海王星に下級階級の怪獣が移り住んだ。
怪獣のカバンに隠れていたカエルが異常繁殖した。
苛酷な環境に負けた怪獣に代わってカエルが活躍。
カエルは生き残った怪獣たちを飼い馴らして家畜にした。
やがてカエル同士の合戦が起き、カブキ者のカエルが割拠し、それなりの平穏が訪れた。
だが蚊取線香が不足し風邪が大流行した。
怪獣は蚊帳作りに精を出したが追い付かず、我慢強いカエルも風邪のため影が消えはじめた。
カバが鳴くから火星に帰ろ。

2003年2月5日水曜日

おてんばなオコジョは尾をフリフリ、丘から飛び降りた。
落ちるオコジョをおしゃれなオバケが追いかけた。
「おーいオコジョ、置いてけぼりにしないでよぉ」
「老いぼれオットセイに聞いたんだ。この下にオアシスがあるって」
遅れてオアシスに降りたオバケは驚いた。
オアシスはおチビなオニのオンパレード!
恐ろしい顔のオニたちが輪になって踊っていた。
オコジョもオバケもはじめは怯えていたが、そのうちおずおずと踊りの輪に入って大騒ぎ。
踊りがお開きになるとおこわとおしることオレンジをお土産に貰って帰った。
おめでたい。

2003年2月4日火曜日

エンピツは英断を下した。あの煙突に謁見するのである。
エンピツは出発に合わせて鋭角に削りあげた円錐の頭を輝かせ、遠路を行く。
途中、園児に襟首つかまれて縁談を持ち込まれてもへこたれなかった。
獲物がなければエスカルゴを餌にしてエンゲル係数は下げなかった。
そして、ついに煙突に謁見することが許された。
煙突は言った。
「この世は永遠の絵空事」
エンピツはこの言葉を枝に彫った。
「エレジーだ」とエンピツは思った。
さらにエンピツは栄位を授かった。
エポックメイキングなエンピツは英雄になったのだった。

2003年2月3日月曜日

自惚れウサギは嘘つきでウシを騙す。
「ウミウシを見たら歌えばいい。『ウグイスにはウイスキーがうってつけ』
うかうかしてるとウミウシが羽化してウジムシになっちまうよ」
ウシはうーむと唸った。
ウシはウサギの嘘を打ち崩したかったが、うってつけのうんちくを持ち合わせていなかった。
仕方なくウシはうやうやしく言った。
「その胡散臭い噂話はうろんな奴からの受け売りでしょう?」
そこにウミウシがやって来たので、ウサギは狼狽えた。
ウシとウミウシは仲麗しく憂さ晴らし。嘘つきは疎まれ右往左往。

2003年2月2日日曜日

田舎育ちのイナゴ曰く
「いつかインドへ行ってみたい」
「いっそのこと今すぐ行けば?」
いい加減なことを言うはイナ背なイモムシ。
「いいね」
言うが早いかイナゴは一足飛びで異国に行ってしまった。
あれから幾年月、イナゴは未だ帰らず、イモムシは慰霊碑を建てた。
「一本気のイナゴよ、きみは何処に眠るのか。イナゴよ、きみは勇ましかった」
いみじくも一部始終眺めていたのが威風堂々のイヌ。
イヌはいじらしいイモムシを見つめて溜め息ついた。
イナゴは一尺先の石の上で稲荷寿司を食べていると、いずくんぞ教えん。

2003年2月1日土曜日

ある暑い朝のことでした。
アリンコがあじさいの葉の上を行脚していると、アヒルに会いました。
「あけましておめでとう、アリンコ」
アヒルは愛想よく挨拶しましたのにアリンコは「あぁ」と言ったきりでした。
アヒルはあっけらかんと、歩いていきました。
雨が降ってきましたよ。
アリンコはあわてて帰ると行灯を点け、あんころ餅とアスパラガスの和物を味わい、アイロンを掛けました。
そして雨傘を持って愛するアメンボと逢引きしに出掛けます。
案外アリンコは甘えん坊なのでした。