2005年6月30日木曜日

懐中電灯【かいちゅうでんとう】

懐中を照らし、懐具合を見るもの。
暖かい懐を、より明るく照らす。
非常時用の明かりとして持つ人も多い。
近頃はハンドルを回して発電するレトロなタイプが人気である。

A torch investigates a someone's financial condition.

2005年6月28日火曜日

蛇【へび】

爬虫類ヘビ亜目の生物。
腹はアコーデオンに、皮は三線に、口は水道に、目は傘に用いられ、捨てるところがない。

The bellows is made from snake's belly.

2005年6月27日月曜日

ビスケット【biscuit 】

ポケットを叩いて製造する菓子。
購入の際には、どのポケットで作られたかを確かめられたい。
エプロンポケット製が最高級である。
ジーンズ尻ポケット製は、おすすめしない。

Biscuit made from an apron pocket is highest-class.

2005年6月25日土曜日

道草【みちくさ】

道端に生えている草や菜。
果実を含めることもある。
誰でも摘んで食べてよい。
定番の道草は、春菊・菫・葱・蓬・人参など。
その土地ならではの道草を食うのは、旅の楽しみのひとつである。

Every loitering on the way is eaten.

2005年6月24日金曜日

傘【かさ】

コウモリが、日を避けるために使うもの。
特に洒落ているのは、ヘビの目玉をあしらったもので、カラカラと音がする。

A bat uses an umbrella for a shade.

2005年6月23日木曜日

電子レンジ【でんしれんじ】

火だるまの冬眠のために開発された特殊な箱。
かつてはオーブンが使われていたが、近年はより性能が良い電子式が主流である。
電子式の特徴は「廻る・電気は大切にね」
食品の加熱に使われることもある。
←→冷蔵庫

A flameman sleeps in a microwave oven in winter.

2005年6月22日水曜日

テープ【Tape 】

合成樹脂製で磁性及び粘着性がある細長い帯状のもの。
主な用途は、梱包、録音・録画、港で投げる、一位の人が切る、など。

2005年6月20日月曜日

きんかん【キンカン】

金色の輪を持つ果実。
砂糖漬けを湯に溶かして飲むと虫さされ・肩凝りによいと言われるが、効果は定かでない。
美味であるので効果に拘わらず飲むとよい。

The kumquat is fruits with a golden circle.

2005年6月19日日曜日

天国は、そこにある。

「だってそうだろ?花は雨が降らなきゃ咲かないんだぜ」
子供は大きな針を握りしめて、外へ出た。
一つ目のオバケちゃん。
足枷のランナー。
どこにでも花はあった。
要塞の中に花、階段の中に花、僧侶の戯れ事に花。
オバケちゃんは見ている。銃口を。
ランナーは走る。兵士を従えて。
コカコーラを飲むマフィア、爆弾を抱えて飛び回る天使、荷物を運ぶミイラ。
子供の握り締めていた針は、いつの間にか花になっていた。
一輪の花を傍らに置いて寝転がり、牢屋の天井を見る。
ここはなんて酷いところだろう。雨も降らない。雲の上だから。星も見えない。星の外だから。
「あぁ、見てごらん。飛行機が墜落するよ」

☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「天国で見る夢」佐々木マキ 1967 をモチーフに

2005年6月18日土曜日

電卓【でんたく】

「電子式卓上計算機」の略。
数ある計算方式の中で、電子式を採用した卓上計算機。
電子式計算の特徴は「速い・電気は大切にね」
卓上で以外で使用すると、計算を誤る。

You make a mistake in the calculation when the calculator is used excluding the table.

2005年6月17日金曜日

かりんとう【カリントウ】

空高くそびえるカリンの塔で、仙人が製造している菓子。
黒い砂糖が塗してあり、食べる際に「かりんかりん」としゃべる。
この菓子を食べても、怪我や病は治癒しない。

Even if it eats this Crunchy sweetmeat, neither an injury nor illness is recovered.

2005年6月15日水曜日

望遠鏡【ぼうえんきょう】

遠くへ行きたいと望む人が覗くもの。
「遠く」は地球外を指すことが多い。

A telescope is the entrance in another world.

2005年6月14日火曜日

スイッチ【Switch 】

決断を迫るもの。
多くの場合、指一本によって行使される。

A switch presses for decision.

豆まき【まめまき】

東の某島では、春の報せが訪れる直前、悪魔払いと家内安全を願う古代から続く風習がある。
オニと呼ばれる悪魔を懲らしめるため、オニの卵である豆を屋内外に撒き、また食することにより、恙無い一年を約束するという。
オニの卵を撒いてはオニが殖えるのではないか、という我々の疑問に、島民は一切答えない。

Beans which are a demon's eggs.

月【つき】

かつて月はチーズで出来ていた。
ミイラ取りに行くネズミの大切な食糧となっていたが
真ん丸だった月には無数の齧り跡がついた。
これをクレーターと呼ぶ。

The moon made with the cheese.

冷蔵庫 【れいぞうこ】

雪だるまの夏眠のために開発された特殊な箱。
現在では雪だるまの夏眠だけでなく、食品の保管にも使用されている。

A snowman sleeps in a refrigerator in summer.

ルーシーの伝説【Lucy】

カウンセラールーシーはマシュマロパイが大好物、黄色いセロハンチューリップの花畑で踊る。
ある朝、ルーシーは次の言葉を遺しオレンジの空へ飛び立った。
「あたしの助言は必ずあたる。100%の保証付き」
この偉大なるルーシーの伝説はジェームズ・マクドナルドによって歌い継がれている。

James McDonald sings a legend of this great Lucy.

赤鉛筆【あかえんぴつ】

郵便配達人が消防士にトマトの収穫時期を教えるために使ったのがその起源である。

A postman tells a fireman the harvest time of a tomato.

2005年6月13日月曜日

洗濯機 【せんたくき】

回転によって命を洗浄する箱型機器。
主に天使が使用する機器であるが、衣類の洗浄用にこれを流用する。
水を入れた機器を持ち上げ、回す作業は大変な重労働であり、社会問題となっている。

The washing machine which an angel uses for selection of a life.

2005年6月12日日曜日

羊羹 【ようかん】

ヒツジの影を冷やし固めた菓子。
人生に一度は食べないとヒツジの毛に襲われるので注意が必要。
豹屋のものが絶品である。ヒツジの影をヒョウが販売しているいわくは謎である。


sweet jelly made from a shadow of a sheep.

2005年6月11日土曜日

推薦の言葉

デラックス百科事典は、森羅万象の真実を端的に且つ短絡に示すものである。
広く人々の営みを助け、人生の指針となるであろう。
よってここに推薦する。
推薦者、阿礼

2005年6月10日金曜日

A MOONSHINE

月明かりに照らされて、黒猫は、緑に輝いた。
彼に尻尾はない。それは少女が持っている。
〔キナリ、そろそろ尻尾を返してくれ〕
と少女に言った。
少女は、手にした尻尾と黒猫を見比べた。
「返してって、コレくっつくの?元通りに?」
〔今晩ならば〕
黒猫は断言する。
「尻尾が元にもどったら、ヌバタマはどこかに行ってしまうんでしょう?」
〔そのようには、ならない。ただ…こうして喋ることは出来なくなる〕
少女は安堵の表情を浮かべた。
「わかった」
月明かりに照らされて、黒猫の尻尾は少女の手を離れた。
黒猫は、少女の前を気取って歩く。
尻尾があることのほかは、昨日の晩とまるで同じ。

×はじめてのともだち・ハスキーへ×

2005年6月9日木曜日

どうして彼は喫煙家になったか

「あれ? ピベラ・デュオガ・ハソ・ヘリンスセカ・ド・ピエリ・フィン・ノピメソナ・ミルイ・ド・ラセ・ロモデェアセ・スペルイーナ・ケルセプン・ケルセプニューナ・ド・リ・シンテュミ・タルヌヂッタ・レウセ・ウ・ベリンセカ・プキサが煙草吸ってる」
少女に言われて長い名の絵かきは苦笑した。
「キナリの前で煙草を吸うのは、はじめてだったね」
「いつから吸ってるの?」
「キナリが生まれるより前だよ……でも毎日吸うわけじゃないんだ」
「なんで?」
絵かきは、ちょっと憂いた顔をした。
「うまく絵が描けた時、お星さんやお月さんに、見てもらいたくて…煙に託すんだ。託すってわかる?」
少女は絵かきの吐いた紫煙を目で追った。
「煙なら、空まで届けてくれるかなと思って……いや、思いたいんだ」
終いは独り言のようになりながら絵かきは夜空を見上げた。
その煙は、しっかりと月に届いている。おかげで月は喫煙家になったのだから。

2005年6月8日水曜日

はたしてビールびんの中に箒星がはいっていたか?

「よいな、すばやく振り向いて捕まえるのだ」
「わかってる」
月と少女は箒星を捕まえるために港へ来ていた。
二人は夜の波音の透き間から聞こえる箒星の音が近付いてくるのを待った。
「シュッシュッ」という音が段々と大きくなる。
「それ! 箒星さんみーつけ……た?」
少女が勢いよく振り向くと、そこにあったのはビールびんであった。
「ナンナル、箒星はどこ?」
月は、ためつすがめつビールびんを眺めた。
「この中に入っているのかもしれない」
少女の部屋に戻ってきた二人は、びんの栓を抜き、グラスに注いだ。
ビールは大袈裟に泡立ち、その泡は瞬く間に消えてしまった。
月が一口飲む。
「全く気が抜けてるよ。箒星の奴、とんだ飲ん兵衛だ!」

2005年6月7日火曜日

星と無頼漢

「あ、流星がケンカしてる」
「放っておけ」
月は心底興味がないという口ぶりで言ったが、少女は放っておくことが出来なかった。
少女は取っ組み合いをしている流星の近くまで行き、しばらくその様子を眺めた。
流星の相手は、いかにも無頼漢というような、身体が大きく毛深い男である。
流星が殴り、無頼漢が殴る。無頼漢が蹴り、流星が蹴る。いつまで経っても終わりそうにない。
「ねぇ、何してるの?」
声を掛けてはじめて流星は少女の存在に気付いた。流星は赤面して瞬く間に去ってしまった。
残された無頼漢は、所在なさげに街燈を蹴り、スネをぶつけて涙目になった。
「チビ、お前が止めるからだ」
無頼漢が少女を睨む。
「止められて止まるくらいなら、たいしたケンカじゃないでしょ」
「なんだと!」
無頼漢は少女に襲い掛かった。少女がスルリと股の間を抜けると無頼漢は街燈に顔面をぶつけた。
「恰好悪い」
少女の冷たい視線を浴びて、無頼漢は背中を丸めて逃げていった。
「痛かったね」
少女は街燈を撫でる。
「怖かったね」
街燈は少女を暖かい明かりで包んだ。

お月様を食べた話

「さてと」
月は、向かいに座らせた少年に向かって言った。
「訳を聞かせてもらおうではないか」
ふて腐れている少年は、少女よりずっと年長である。
道ですれ違った少年たちの一人が「月を食べた」と話ているのを聞き、彼を強引に連れて来た。
少女は二人の顔を見比べながら息を飲んだ。
「だから、『お月様』を食べたんだって言ってるんだよ!」
「いつ? どこで? どうやって?」
少女は叫んだ。
「ストップ! ナンナル、質問が下手!」
月は不意をつかれて、黙る。
「お兄ちゃん、『お月様』はおいしかった?」
「うまかった」
「んじゃ、ナンナルの勘違いだよ。お兄ちゃん、ごめんね」
少年はポケットから菓子の入った包みを出して、去っていった。

少年が置いていった『お月様』という名の新発売の菓子を食べながら月は言った。
「なぜおいしいかどうか、聞いたんだ?」
「ナンナルは、まずいから」
少女は誰よりも月の味を知っている。

2005年6月5日日曜日

土星が三つ出来た話

少女が問う。
「動物になるなら何がいい?キナリは、サル」
「キリン」
とコルネット吹き。
「ゾウ」
と絵かき。

「恐竜になるなら何がいい?ぼくは、プラキオサウルスがいい」
とコルネット吹きが問う。
「やっぱりティラノサウルス。キナリは?」
「ステゴサウルス」

「じゃあさ、太陽系の惑星になるなら何がいい?」
三人は同時に言う。
「土星」「土星」「土星」
「みんな土星だ!土星が三つになったら、楽しいかもしれないよ、あの輪っかが三つ並ぶんだから」
絵かきがそう言った瞬間、土星は試しに分身の術を使ってみたが、余りにも難儀だったのですぐに元通りになった。

2005年6月4日土曜日

赤鉛筆の由来

「赤鉛筆が欲しい」
と言うので、月は少女を連れて文具店に向かった。
文具店の店主は鈎鼻に眼鏡を引っ掛けた老人で、店の隅の椅子に腰掛けうたた寝をしている。
少女は瓶に入った赤鉛筆を一本つまみあげ、店主に声を掛けた。
「これ下さい」
店主は寝たまま応じる。
「赤鉛筆か。赤鉛筆の由来は、ご存知かな?」
赤鉛筆の由来、それを少女が知っているはずがない。
月は少女が助けを求めるだろうと思った。
「郵便配達人が消防士にトマトの収穫時期を教えるために使ったのがはじまり」
少女は淀みなく答える。
「出典は?」
「デラックス百科事典」
「よろしい」
少女は硬貨を店主の手に握らせ、店を出た。
「どこで覚えたんだ?赤鉛筆の由来を」
月は尋ねずにはいられない。
「このあいだ、阿礼って人が道歩きながら喋ってた」
「アレイ? 変わった名前だな」
「ナンナル、ほどじゃないよ」

2005年6月3日金曜日

お月様が三角になった話

「お月様は丸いよね」
と長い名の絵かきは言った。
「四角だったり……」
そう言いながら四角い月の絵を描く。
「三角だったり」
そう言いながら三角の月を描く。
「いいと思うんだ。ねぇ? ナンナル」
「こういうことか?」
絵かきの注文に応えた月の声は、怒っても笑ってもいなかった。
つまりは「その程度のこと」なのである。

2005年6月2日木曜日

月夜のプロージット

「乾杯」
緑色の瓶をぶつけ合う。
少女と月は、公園のベンチに腰掛けて、アップルタイザーを飲んでいた。
満月がジャングルジムを照らす。
少女は月を見上げていた。隣の男に出会う前と変わらない眼差しで。
月は少女を見ていた。この子はいつまでこうして月を眺めてくれるだろうか、と。
「ねぇ、ナンナル」
「なんだ?」
空になった瓶を見せて笑う。
「もう一本飲もう」
「お腹壊すぞ」
だって月がきれいだから、と呟いた声を、月は聞かなかったことにする。

2005年6月1日水曜日

黒い箱

広場に巨大な黒い箱が現れたのは、ほんの五分前のことである。
広場は騒然となり、人々はみな逃げていった。
黒い箱は完全な立方体で、表面は滑らかである。
「これ、何かな?爆弾?」
「さあ。私にもわからない」
「こわいものだよ、きっと。食べられるかもしれない」
「こわいなら、逃げればいい」
しかし、月と少女は逃げることはせず、箱の周りを歩いた。
三十六週しても箱は何も変化しなかった。
夜より深い黒い箱である。周囲を歩く少女が見上げると、迫りくる闇の壁のごとき様相だ。
「これ、何かな?」
「さあ」
「恐いものじゃないのかな」
「わからない」
十八回目の問答をした時、箱はズズズと音を立て縮み始めた。
見る見るうちに小さくなって、サイコロくらいになった。
「小さくなっちゃった」
少女は、黒い箱を踏み潰した。