2005年6月7日火曜日

星と無頼漢

「あ、流星がケンカしてる」
「放っておけ」
月は心底興味がないという口ぶりで言ったが、少女は放っておくことが出来なかった。
少女は取っ組み合いをしている流星の近くまで行き、しばらくその様子を眺めた。
流星の相手は、いかにも無頼漢というような、身体が大きく毛深い男である。
流星が殴り、無頼漢が殴る。無頼漢が蹴り、流星が蹴る。いつまで経っても終わりそうにない。
「ねぇ、何してるの?」
声を掛けてはじめて流星は少女の存在に気付いた。流星は赤面して瞬く間に去ってしまった。
残された無頼漢は、所在なさげに街燈を蹴り、スネをぶつけて涙目になった。
「チビ、お前が止めるからだ」
無頼漢が少女を睨む。
「止められて止まるくらいなら、たいしたケンカじゃないでしょ」
「なんだと!」
無頼漢は少女に襲い掛かった。少女がスルリと股の間を抜けると無頼漢は街燈に顔面をぶつけた。
「恰好悪い」
少女の冷たい視線を浴びて、無頼漢は背中を丸めて逃げていった。
「痛かったね」
少女は街燈を撫でる。
「怖かったね」
街燈は少女を暖かい明かりで包んだ。