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2014年2月25日火曜日

地下鉄の鼠について

地下道を走るのは鼠と電車くらいなものだ。一度一杯やってみたいね。
地下暮らし二十年の男が鼠に話しかける。
「鼠、地下鉄に乗るなら切符が必要だ」
鼠は答 える。
「乗るんじゃない、囓るんだ。よい肴になる」
その日、世界中の地下鉄が走行不能に陥った。
地下世界に闇と静けさと鼠の歯があらんことを。
飯田橋駅で鼠を見た話。裏テーマ「酒持ってこーい」

2013年7月14日日曜日

無題

水の者である彼女はプールに入るとすっかり水と同化してしまって、僕には見えない。


戸惑う僕を面白がって「鬼ごっこしよ」と、はしゃいでいる。時折水面か ら顔を出す。息継ぎをして、悪戯っぽい顔で僕に合図する。


いつになく美しい彼女を早く抱きしめたくて必死の平泳ぎで追いかける。



#twnvday 7月14日ついのべの日 お題「水」


2013年6月16日日曜日

無題

秒針がサボっているのに遭遇して、見ちゃってゴメンと腕時計に謝りたくなる。



2013年6月14日金曜日

無題

傘立ての中で忘れ去られた蛇の目傘の蛇の目は、すっかり干からびて涙も枯れた。


五才の人が、家中の傘をひっぱり出して道に広げたもんだから、久しぶりに蛇 の目は目を見開くことができた。


積乱雲が見える。そして夕立。


雨が降ってよかったねと、五才の人が蛇の目に潜りながら言う。



#twnvday 6月14日ついのべの日 お題「ぐるぐる」 サブ企画「雨が降ってよかった」


2013年6月13日木曜日

無題

母が作る雑巾の刺し子はいつも渦巻き模様で、だから私は掃除が苦手だった。四隅が拭けないのだ。


それならばと、大人になった私は丸い窓の付いた丸い家を建て、丸いテーブルで紅茶を飲む。掃除はもう、苦手じゃない。



#twnvday 6月14日ついのべの日 お題「ぐるぐる」


無題

旋風にひょいと杖を引っ掛けてどこかへ飛んでいってしまったおじいさん。初恋の人は、メリー・ポピンズだそうだ。



#twnvday 6月14日ついのべの日 お題「ぐるぐる」


2013年5月14日火曜日

無題

垣根を潜って出てきた私を、隣家のおばあちゃんは「おや、大きな猫さんだこと」と笑って迎えてくれた。


私はチョコレート、おばあちゃんはお団子を用意して茶飲み話に花が咲く。


今は私がおばあちゃん。垣根から顔を覗かせる隣のおちびさんにおいでおいですると、目が輝いた。



5月14日ついのべの日 お題


無題

おじいさんの傘は、半分青くて、半分赤い。几帳面なおじいさんはきちんと青い方を右側にして傘を差す。


雨雲はそれが気になって、ついついおじいさんを追いかけてしまうから、おじいさんはいつも半分雨で、半分晴れ。



5月14日ついのべの日 お題


2013年5月4日土曜日

無題

庭の落ち葉を積み上げて積み上げて、生涯を掛け腐葉土山を作り続けた男の死後、頂上に向日葵が生える。



2013年4月14日日曜日

無題

ターミナル駅の真ん中で、父とはぐれた。


大きな手を離したのは、ほんの一瞬だったのに。


「お父さん」と呟くとスーツ姿の男の人が一斉に立ち止まってこちらを見た。


背の高い父の顔をよく思い出せないので、全員と握手することにした。



4月14日ついのべの日 お題


無題

その古書店に並んだ本に題の付いた本は一冊もなかった。


「食べちゃうんですよ、紙魚が、タイトルだけ綺麗に」店主は笑った。


目についた鮮やかな赤い本を買って帰り、家で飼っている紙魚に食わせようと与えたら、無題の本は不味いらしい。すぐに吐き出してしまった。



4月14日ついのべの日 お題



2013年3月21日木曜日

無題

忌々しい今際をいまいち把握できないまま、居間で今までうたた寝をしていた。 



3月21日ついのべの日 お題


2013年3月14日木曜日

無題

「箒星と彗星の見分け方を教えてやろう」
「ドシンとぶつかってくるのが彗星だ。バシュッと掠めていくのが箒星だ」
わかったようなわからぬような。と、 思っていたら、ものすごい速さで走ってきた人にぶつかった。
クルッと回転したけれどもどこも痛くなかったので、たぶん箒星の人。


3月14日ついのべの日 お題

無題

宇宙塵芥を掃き集めたはよいが、塵取星が見つからないので、途方に暮れている。



3月14日ついのべの日 お題


2013年2月14日木曜日

無題

娘は樹木と結婚するという。


子供の頃から仲良くしていた樹だから異存はない(こともないが)。


許しを出すと、娘は樹木を切り倒し、小さな家を建て、子供を生んだ。


雨風から守ってくれる夫が居て幸せだと娘は言う。


孫はすくすく育っている。どんぐりが大好きな男の子だ。



2月14日ついのべの日 お題



無題

「ちちんぷいぷい」とおまじないをかけたら、照れくさそうに笑った。こないだ私が転んだとき、そうしてくれたから。


道は続く。小石を時々見落とすのは、仕方がない。


あんまり転ぶと痛いから、ゆっくり歩こうと呟いた。


そうしましょう、と繋いだ手をきゅっと握り直す。



2月14日ついのべの日 お題


2013年1月14日月曜日

無題

「署名、捺印をお願いします」。ぎこちなく名前を書き、判を押す。私は今「大人」になった。昨夜、大人認定のための書類が送られてきた。認定には様々な条 件があるらしいが、それも大人だけが知る事柄だ。私はずいぶん遠回りして、三度目の歳男を迎えた。真新しい印鑑の朱肉を拭う。



1月14日ついのべの日 お題


2012年12月14日金曜日

無題

真っ白な紙で作った紙飛行機と少年の日々は、永遠に帰ってこない。そう思っていたけれど、飛行機は数年の時を経て、僕の元に帰ってきた。


白かった紙飛行機は、潰れ、汚れ、とても飛べそうにない。しかし、切手という勲章をつけて戻ってきたのだ。


「前略、お元気ですか……」



12月14日ついのべの日 お題






2012年11月20日火曜日

怪談短歌

降りしきる雨が痛いと泣く街灯に傘を差し出す白髪の影 


 


米櫃を開けると米が一斉にこちらを睨む どこだ礫斎



『Mei(冥)』のツイッター怪談短歌コンテストに投稿したもの


2012年11月14日水曜日

無題

ネオンの揺らめく町に憧れて歩き始めた少年は、いつの間にか杖をついていた。


いくつもの町を通り過ぎた。居心地のよい町もあったが、「ここではない」とま た歩き始めた。


憧れの町は目の前にあるように見えて、遠い。彼にしか見えない蜃気楼の町だと、本当は薄々気がついている。



11月14日ついのべの日 お題