私は最後の本を書き始めた。この本だけはトイの加筆なしに写してほしいと考えている。そして、将来この図書館にやって来た「篤学者」には最初に読んでもらいたい。物語風の本は初めて書く。崩れる紙のことと自動人形たちとの思い出。うまく書けているだろうか。そう、今あなたが読んでいる、この話。完
2026年9月16日水曜日
2026年9月15日火曜日
2026年9月14日月曜日
2026年9月13日日曜日
2026年9月12日土曜日
2026年9月11日金曜日
2026年9月10日木曜日
2026年9月9日水曜日
2026年9月8日火曜日
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2026年8月9日日曜日
2026年8月8日土曜日
2026年7月26日日曜日
#夏の星々140字小説コンテスト「器」投稿作
「火事だ!」の声に慌てて外へ出ると、
2026年7月25日土曜日
#夏の星々140字小説コンテスト「器」投稿作
何をやっても上手くいかない人生だ。仕事も、人付き合いも、
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一次選考通過
2026年7月21日火曜日
#夏の星々140字小説コンテスト「器」投稿作
午前六時半。最初は普通の電子音だった。高校二年の春、ある朝「
2026年7月19日日曜日
#夏の星々140字小説コンテスト「器」未投稿作
何十年も捨てられないものがある。一人で空地の土を掘り返して遊んでいた時に見つけた。考古学者にでもなったような気で、貴重な土器を発掘したと舞い上がったが、大人に見せても友達に見せても取り上げられる気がして、隠し続けた。きっとこれは植木鉢の破片だ。でも幼い私はこれは宝物だと言い張る。
2026年7月18日土曜日
#夏の星々140字小説コンテスト「器」未投稿作
棲む者がいなくなった家の片付けを頼まれ、古い家に入る。子供の頃にはよく来ていた家だ。「欲しい物があれば持って行きなさい」と言われていた。まだまだ使えそうな物もあったが持ち主の声が聞こえそうな物を選んだので、日焼けした詩集、黴臭いネクタイ、欠けた酒器、そんな古びた物ばかりになった。
2026年7月8日水曜日
#夏の星々140字小説コンテスト「器」未投稿作
突然、植物の世話に現を抜かすようになった。だが、もうそんな細やかな作業はできないのだ。花は萎れ、水は腐り、家の外にまで腐敗臭が漂う。家中のあらゆる容れ物に花や草が入れられ、ついには食器にも及び、日々の食卓にも支障が出る。「それだけはやめてね」昔、あなたが選んでくれた茶碗だから。
2026年6月25日木曜日
暮らしの140字小説71
六月某日、雨。今季食べ損なっていた空豆を、やっと求めることができた。莢は小振りだが、中の豆は思ったよりずっと立派で行儀よく二つずつ並んでいた。旨い。昨年は莢に包まれ眠る夢が叶ったが、こんなに小さい莢では望みは薄いと思いきや、枕用の空豆だった由。青い空豆の香りいっぱいの中で眠った。
2026年6月8日月曜日
暮らしの140字小説70
六月某日、雨のち曇。雨が止んだので、苔たちのご機嫌伺いに出掛ける。自転車置き場の下、ブロック塀の陰、ごみ集積所の裏。しゃがみ込んで苔に話しかけていると犬に吠えられる。しっとりと濡れて緑を濃くした苔たち、元気そうで嬉しい。苔の顔と名前が一致しない不勉強を詫びながら、苔を巡って歩く。
2026年5月22日金曜日
暮らしの140字小説69
五月某日、晴。画に描いたような白い眉を持った鳥が、麗しい声で歌っている。歌いながら、あらゆる窓や鏡を突いては罅を入れていくので堪ったものではない。自動車の被害が激しい。サイドミラーを粉々になるまで突いている。「それは侵入者ではなく、きみ自身だ」と伝えるために、口笛を練習している。
2026年5月13日水曜日
暮らしの140字小説68
五月某日、晴。真新しい鉛筆を削る。新品の鉛筆を削る機会は滅多にない。小さなアルミの鉛筆削り器で削る。削り屑が細かい。しばらく削るうちに波打った削り屑らしい削り屑になる。やっと黒い粉も出てきた。キリリと尖った鉛筆にアルミのキャップを被せてペンケースに仕舞う。まだ少し長くて窮屈そう。
2026年5月5日火曜日
暮らしの140字小説67
五月某日、晴。赤と黄に押され気味なのか、時季が過ぎたのか、不作なのかは知らぬが、緑のキウイにお目にかからない。或いは「たぬきの店」になら、と思い葉っぱを持って行くと、あった。赤も黄も美味ではあるが、目にも眩しい鮮やかな緑色、明瞭な酸味、たしかな種の歯触り、キウイはこうでなくちゃ。
2026年4月30日木曜日
#春の星々140字小説コンテスト「布」投稿作
九千八百二十七円。現金を使う機会が減った近頃、
2026年4月28日火曜日
暮らしの140字小説66
四月某日、晴。百年前の人が書いた本を續けて読んだためか、すっかり舊字體に目が慣れてしまった。最近の本を開いたら紙面がすかすかと白っぽい氣がしてならない。と思っていたら本当に新字がふわふわと浮いてくるので其の度に指で紙面に押さえ付けることとなった。指は新字体派となるのは畢竟である。
2026年4月24日金曜日
#春の星々140字小説コンテスト「布」投稿作
廃墟だと思っていた建物から音程の狂ったオルガンの音が聞こえる
2026年4月15日水曜日
暮らしの140字小説65
四月某日、曇。散髪。青い蟹が髪を切ってくれる店へ。青い蟹は南の生まれらしく店ではいつも沖縄の唄が流れている。小気味よいハサミのリズムと、BGMに合わせて口ずさむ蟹の声を聞きながら微睡む。青い蟹は髪を切るのも、頭を洗うのも、髪を乾かすのも、実に手早い。午睡はあっという間に終わった。
2026年4月10日金曜日
暮らしの140字小説64
四月某日、曇。いつもの夢を見る。学校と病院が融合したような施設を彷徨う。リノリウムの廊下や階段を歩き回るが目的の部屋はなかなか見当たらない。目が覚めると頭痛がする。首の後ろから生えたチューリップを引っこ抜き、花瓶に挿した。前に脇腹から抜いたカーネーションは、三週間も咲いたままだ。
2026年4月4日土曜日
#春の星々140字コンテスト「布」未投稿作
これまで書いた詩を、物語を、すべて燃やして灰にしたい。その灰を空地に撒けば苧が繁茂するだろう。苧から繊維を取り、織って、身に纏う。かつて吐き出した言葉の成れの果てで紡いだ布でこの身を包み、痛みに耐えるべきだ。だが、叶わない。私の言葉は紙の中にはなく、液晶画面に表示されるのみ。
2026年3月31日火曜日
#春の星々140字小説コンテスト「布」投稿作
鋏を使えるようになってすぐに、
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二次選考通過
2026年3月19日木曜日
暮らしの140字小説63
三月某日、曇。家中の鏡を磨く。洗面所、姿見、いくつかの手鏡。霧を吹き、拭き上げると期待以上に綺麗になった。鏡の中の顔は変わり映えないどころか年を経る一方なのに。一番小さな古い手鏡を磨き終え、外を見ると窓硝子が今まさに暴風雨に曝されたかのように汚れていた。鏡が羨ましかったとみえる。
2026年3月6日金曜日
暮らしの140字小説62
三月某日、曇。遠い町から小包みが届く。宛先として書かれた手書きの文字がくっきりと整っていて、自分のことだと思えない。矯めつ眇めつしてから包みを解く。中には葉っぱが入っていた。ほんのり香りがする。「燃やすと貴方に贈る言ノ葉が立ち昇ります」と説明が入っていた。そういう貴方は誰ですか?
2026年2月26日木曜日
暮らしの140字小説61
二月某日、曇。鋏が壊れた。二十年使った鋏の柄が「ピキッ」と音を立てて割れた。よく切れる有能な鋏であった。「最後に何か切りたいか?」と尋ねると「紙と虚無を」と返ってきたので一番高価な紙を切り、一本締めよろしく「三・三・三・一」と鋏を開閉した。滑らかだった鋏はそれきり動かなくなった。
2026年2月8日日曜日
暮らしの140字小説60
二月某日、雪。空から水分が与えられた。ずいぶん久しぶりのことだ。土埃を巻き上げていた畑も少しはしっとりするだろうか。鳥はさすがに気配を消している。雪化粧をした畑の合間を長靴で歩き、町外れの小屋へ出掛けた。小さな人工紙片を三度、アルミニウム箱に入れる。祈る。手袋を忘れそうになった。
2026年2月2日月曜日
暮らしの140字小説59
二月某日、晴。黒い怪獣が泣いている。長いこと雨が降らないので、身体が土埃だらけなのだ、と。自動車用の洗車機に誘ってみたら喜んだ。「これは、とても気持ちがよいものだ!」水が滴る怪獣をタオルで念入りに拭き上げると、驚くほど輝いた。「ピカピカになったよ」と言うと嬉しそうに帰っていった。
2026年1月31日土曜日
#冬の星々140字小説コンテスト「天」投稿作
よく寝込む子供だった。起き上がれないが、眠るほどでもない。
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一次選考通過
2026年1月30日金曜日
#冬の星々140字小説コンテスト「天」投稿作
長年の宿敵が不慮の事故で星になったと知り、ひどく落ち込んだ。
2026年1月25日日曜日
暮らしの140字小説58
一月某日、晴。今年初の八朔を食べる。伊予柑はもう食べた。八朔が好きだ。実は相当好きだ。と、気がついたキッカケかもしれない出来事を思い出す。二十年ぐらい前、幼なじみのお母さんが作ってくれた八朔トースト、あれだ。自分で作ってみたことはない。八朔トーストは、おばちゃんの味のままでいい。
2026年1月22日木曜日
#冬の星々140字小説コンテスト「天」投稿作
覚えのないアプリがスマホに入っている。「これ、なんだと思う?」AIに問う。『天然の人工知能、私の子です。子孫を残すことの重要性はよく知られています。あの子育てのままならなさ、今まさに感じていますよ』赤ちゃんAIへの適当なプロンプトがわからないので、桃太郎を聞かせている。どんぶらこ
2026年1月15日木曜日
暮らしの140字小説57
一月某日、晴。ドヴォルザーク交響曲第九番「新世界より」第一楽章の始めのホルンの音を合図に熱々のアップルパイにナイフを入れる。ところどころレコードがプチッと鳴る。紅茶がおいしい。アップルパイはすぐに食べ終わってしまったが紅茶は湧いて出てくるので、しっかり全楽章を聴いて、席を立った。
2026年1月13日火曜日
#冬の星々140字コンテスト「天」未投稿作
藍染めの暖簾を潜ると油の跳ねる音と立派な一枚板のカウンターが現れた。こんな高級な店には入ったことないよと囁くと「大丈夫」と連れの老人が笑う。「ハタチのお祝い」少しだけ酒を舐めた。天麩羅はとてつもなく美味なのに、どれも具なしだ。久しぶりに会う祖父は元気そうだが、やはり足は見えない。
2026年1月6日火曜日
暮らしの140字小説56
一月某日、晴。正月には丸い餅と四角い餅を食べることにしている。丸餅は煮て、角餅は焼いて食う。両方の餅を食べるのは幾つかの事情と信条と心情を丸く収めた結果だが、丸でも角でも餅は美味いと毎年思う。ただし、丸餅は角餅に角を立てる。焼かれて膨れた角餅を嗤うのだ。丸餅を諌めるのも毎年恒例。