蝸牛男は「ギャー」と叫びそうになって既の所で息を呑んだ。
「まあまあ、そんなに驚くでない、蝸牛男。蟻地獄のじいさんがそろそろ奇人一行を連れてくるから、待っていなさい」
白髪の茸頭をふんわりさせると、キラキラと胞子が飛び出した。思わず後退る蝸牛男。
「いんや、これは胞子じゃないよ、蝸牛男。キラキララメパウダーだ。だいぶ規格外だけれども、やっぱり人間だし」とウインクする。
そういえば、蝸牛男はすっかりたまげてしまって声が出ていないのだが、茸仙人は蝸牛男の思うことに答えている。
「だってほら、仙人だし」
「おーい、蝸牛男!!」と鯨怪人の声が聞こえてきた。
2014年2月25日火曜日
2014年2月18日火曜日
奇行師と飛行師19
蟻地獄男爵の孫であるところの茸仙人へ逢いに、一行は歩いて行くことになった。
鯨怪人に乗っても、飛行師に乗っても、瘤姫に乗っても、木々の多すぎるこの森をうまく進むことができなかったからだ。
自然と蝸牛男は殿となり、奇行師の励ましの声も届かなくなり、ついにはひとりぼっちになった。
ノロノロと進む蝸牛男は、好都合だと思った。ぬめり気のある自分と、胞子をふりまくであろう茸仙人は仲良くなれそうにない、そう感じていたのだ。
「蝸牛男よ。まあ、そう言わずに。本物の蝸牛は本物の茸が好物だから、なんだったら食べてもよいぞ」
蝸牛男の前に茸頭の老人がウインクしながら現れた。
鯨怪人に乗っても、飛行師に乗っても、瘤姫に乗っても、木々の多すぎるこの森をうまく進むことができなかったからだ。
自然と蝸牛男は殿となり、奇行師の励ましの声も届かなくなり、ついにはひとりぼっちになった。
ノロノロと進む蝸牛男は、好都合だと思った。ぬめり気のある自分と、胞子をふりまくであろう茸仙人は仲良くなれそうにない、そう感じていたのだ。
「蝸牛男よ。まあ、そう言わずに。本物の蝸牛は本物の茸が好物だから、なんだったら食べてもよいぞ」
蝸牛男の前に茸頭の老人がウインクしながら現れた。
2014年2月10日月曜日
奇行師と飛行師18
「して、その尋ね人というのは?」蟻地獄男爵が奇行師に問う。
「ひゃっふヘイ! その名は、茸仙人!」興奮した奇行師は赤いハイヒールに頬擦りした。
「きのこせんにん?」蝸牛男には、なんだか嫌な予感しかしない。
「おいしいのかしら、茸仙人は」そういえば飛行師はなめこが大好物であった。
蟻地獄男爵は、ウィンクした。「茸仙人は、孫だ」
駱駝の瘤姫は、蟻地獄男爵の年齢を思って気が遠くなった。
鯨怪人は、そろそろ海が恋しい。
「ひゃっふヘイ! その名は、茸仙人!」興奮した奇行師は赤いハイヒールに頬擦りした。
「きのこせんにん?」蝸牛男には、なんだか嫌な予感しかしない。
「おいしいのかしら、茸仙人は」そういえば飛行師はなめこが大好物であった。
蟻地獄男爵は、ウィンクした。「茸仙人は、孫だ」
駱駝の瘤姫は、蟻地獄男爵の年齢を思って気が遠くなった。
鯨怪人は、そろそろ海が恋しい。
2014年2月4日火曜日
奇行師と飛行師17
「ここにいらっしゃるのが、蟻地獄男爵」と瘤姫が地面を指した。
湿った森の一部に乾いた土、サラサラとすり鉢状の穴、中からひょっこりと髭を生やした人が顔を出し、ウィンクしている。
「瘤姫、久しぶりですな」
一行は、蟻地獄男爵のウィンクに心が踊った。
「なんと、奇人のキャラバン隊。このじいさんも入れてくれるのか?!」
蟻地獄男爵は、一人ひとりと手を取り、握手し、そしてウィンクをした。
奇行師がお礼に赤いハイヒールを頭に乗せて逆立ちをしてみせると、蟻地獄男爵は笑い転げ、自分の掘った蟻地獄に滑り落ちそうになったので、飛行師が慌てて救助した。
「時に、男爵。我々は実は人を探しているのです」
と、奇行師は言った。
「奇人集めをしているとは思っていたけれど、探している人がいるなんて聞いてないよ」と蝸牛男は思ったが、黙っていることにした。
湿った森の一部に乾いた土、サラサラとすり鉢状の穴、中からひょっこりと髭を生やした人が顔を出し、ウィンクしている。
「瘤姫、久しぶりですな」
一行は、蟻地獄男爵のウィンクに心が踊った。
「なんと、奇人のキャラバン隊。このじいさんも入れてくれるのか?!」
蟻地獄男爵は、一人ひとりと手を取り、握手し、そしてウィンクをした。
奇行師がお礼に赤いハイヒールを頭に乗せて逆立ちをしてみせると、蟻地獄男爵は笑い転げ、自分の掘った蟻地獄に滑り落ちそうになったので、飛行師が慌てて救助した。
「時に、男爵。我々は実は人を探しているのです」
と、奇行師は言った。
「奇人集めをしているとは思っていたけれど、探している人がいるなんて聞いてないよ」と蝸牛男は思ったが、黙っていることにした。
2014年1月26日日曜日
奇行師と飛行師16
「森は遠いのかい?」
と鯨怪人が尋ねると、駱駝の瘤姫はウインクした。「近道があるのよ」
砂埃がひどく前が見えない。息も吸えない。
歩みの遅い蝸牛男はついていくのに精一杯である。粘液に砂がついて、不快極まりない。
もうこれまでだ、と蝸牛男が思った時、瘤姫の声が聞こえた。「着いた!」
さっきまでの砂漠とは打って変わった景色が広がっていた。広葉樹、木々を揺らす風。
「どうやってここまで来たのか、さっぱりわからない」
蝸牛男がつぶやくと、瘤姫は蝸牛男についた砂粒を鼻息で吹き飛ばしながら言った。
「あら、わからなかった? 砂漠を潜って来たのよ? 昔、蟻地獄男爵に教えてもらったの」
「誰だその、男爵っていうのは!」
鯨怪人が嫉妬で潮を吹く。
と鯨怪人が尋ねると、駱駝の瘤姫はウインクした。「近道があるのよ」
砂埃がひどく前が見えない。息も吸えない。
歩みの遅い蝸牛男はついていくのに精一杯である。粘液に砂がついて、不快極まりない。
もうこれまでだ、と蝸牛男が思った時、瘤姫の声が聞こえた。「着いた!」
さっきまでの砂漠とは打って変わった景色が広がっていた。広葉樹、木々を揺らす風。
「どうやってここまで来たのか、さっぱりわからない」
蝸牛男がつぶやくと、瘤姫は蝸牛男についた砂粒を鼻息で吹き飛ばしながら言った。
「あら、わからなかった? 砂漠を潜って来たのよ? 昔、蟻地獄男爵に教えてもらったの」
「誰だその、男爵っていうのは!」
鯨怪人が嫉妬で潮を吹く。
2014年1月13日月曜日
奇行師と飛行師15
奇行師の言葉を固唾を呑んで待つ一行。
「ここからは、徒歩で行く!」
しかし、これは大いなる間違いだったのだ。砂漠に慣れた瘤姫、図体の大きい鯨怪人、飛行可能な飛行師、所詮は人間の奇行師、結局は蝸牛の蝸牛男が、足並みを揃えて歩けるわけがないのだった。
「奇行師さーん、どこを目指せばいいのー?」と先頭の瘤姫が振り向いて奇行師に問う。
奇行師はありったけの大声とパントマイムで答えた。
「森へ!」
「ここからは、徒歩で行く!」
しかし、これは大いなる間違いだったのだ。砂漠に慣れた瘤姫、図体の大きい鯨怪人、飛行可能な飛行師、所詮は人間の奇行師、結局は蝸牛の蝸牛男が、足並みを揃えて歩けるわけがないのだった。
「奇行師さーん、どこを目指せばいいのー?」と先頭の瘤姫が振り向いて奇行師に問う。
奇行師はありったけの大声とパントマイムで答えた。
「森へ!」
2014年1月5日日曜日
声がする
押入れに埃だらけの瓶を見つけて、自分の部屋に置いた。
「これ、ちょうだい」と言ったとき、母は少し苦い顔をした。
「おじいちゃんのウイスキーの瓶。そんなものどこで見つけたの?」
私は祖父が大好きだったが、母はそうではなかったようだと、このとき気がついた。
祖父は、よく本を読む人だった。老眼鏡を掛け、胡座をかいて難しい本を読んでいた。私がせがむと、祖父は読んでいる本をボソボソと抑揚のない声で読み上げ た。小説などではなく、何かの専門書のような本が多かったと思う。もちろん内容はわからなかったが、祖父の声は不思議と心地よかった。
今にして思えば、母にとってはそれも気に食わなかったことの一つだったのだろう、「おじいちゃんの邪魔をしちゃダメよ」とよく叱られた。
祖父の瓶を傍らに置いて、本を読む。最近は探偵小説が好きだ。おじいちゃんに聞かせるつもりで声に出してみる。探偵小説は祖父の好みではないかもしれない と心配しながら読み続けていたら、不意に自分の声と祖父の声が入れ替わった。祖父の声で、ボソボソと読む。心地よく物語が染み渡る。
「ご飯よ」と、呼びに来た母の顔色が悪い。
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玉川重機イラスト超短編投稿作 「イラスト3」
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