2005年10月19日水曜日

操り人間と発条ネコその6

操り人間の安田は歩き続ける。
安田が行く処、すべからく未踏の地であるべし、である。
安田が夜の街で眠っている発条ネコを見つけた。
「よく見掛けるけれども、一度も動いているのを見たことがないネコ」である。
安田は「コイツはいつでも緊急事態だな。」と呟きながらキンキュウジタイのヘソについている発条のネジを巻く。
力を入れ過ぎて膝が萎え、その場に崩れ落ちて気を失った。

2005年10月17日月曜日

操り人間と発条ネコその5

安田が歩いていると、ごぼうが「コンニチハ、安田さん」と言った。
「こんにちは」と最高の笑顔で返してから
「はてな、ごぼうの知り合いはいたかしらん」
と考えていたら、転んだ。
背中の上に頭を乗せたまま、ごぼうの知り合いについて考えているうちに眠ってしまった。
キンキュウジタイは安田の22メートル後にいる。

2005年10月16日日曜日

操り人間と発条ネコその4

操り人間安田は真夜中の道端で転んで身悶えていた。
悶えれば悶えるほど手足は絡まるが、こんな田舎道、真夜中に通り掛かる人はいない。
安田は諦めて、右手が左足に絡み左足が頭に絡み右足が右手に絡み右手が左手に絡んだまま眠ることにした。
発条ネコのキンキュウジタイは安田の一部始終を見ていた。
難儀な人間であることよ、とキンキュウジタイは考えた。
キンキュウジタイは尻尾を巧みに使い安田の手足を解いて、その場を去った。

2005年10月15日土曜日

操り人間と発条ネコその3

キンキュウジタイが歩いているとしばしば時限爆弾騒動が起きる。
キンキュウジタイは、騒ぎの周囲でうろつき回って慌てている人間どもを見物した。
しかし、次第に発条が切れてきて眠くなる……。
何者かによって発条が巻かれたキンキュウジタイが目覚めると時限爆弾騒ぎはすっかり収まっていた。

2005年10月14日金曜日

操り人間と発条ネコその2

安田はしばしば自分の手足についた糸が絡まって、甚だしい格好になる。
たった今、安田は段差に躓いた。
安田は周囲の人に助けを求める。
はじめはひとりか二人だったのが次第に人数が増え、知恵の輪に興じるがごとく色めきと苛立ちで安田に取付く。
安田は身体を玩ばれながら、詫びの言葉を繰り返す。
「まことにお手数をおかけまして……」
その表現は正しい。

2005年10月13日木曜日

操り人間と発条ネコその1

操り人間の名前を安田という。
操り人間とは、何か。
操り人形ならご存知であろう。マリオネットである。
操り人形の人間版が操り人間。至極明解。

発条ネコの名前をキンキュウジタイという。
発条ネコとは、何か。
発条仕掛けで動くネコである。スプリングキャットといえば、お解りか。至極単純。

2005年10月12日水曜日

金色のまどろみ

ココア湖のほとりできみと、ほお擦りしあった。
きみの頬っぺたはマシュマロみたい。
きみが照れた。ぼくも照れた。
マシュマロがココアに飛び込んだ。
温かいココアの中でマシュマロがとろける。

【金色】