2003年8月19日火曜日

辻強盗

‘辻強盗出没! チョコレートの管理は厳重に’
町の至るところに貼り紙が出ている。
ピーナツ売りがいつも出店を広げるビルの壁にも貼ってある。
それがちょうどピーナツ売りの頭の上にくるので
まるで彼が強盗みたいでちょっと笑った。

「笑い事じゃないぞ、少年。これはひょっとすると……」
「ひょっとすると?」
「私かもしれない」
予想もしなかった答えに驚くぼくに構わず小父さんは続けた。
「月が流れる雲に隠れる間、私の記憶は途切れる。
盗まれた物がお菓子ばかりというのも、私ならありうる!」
小父さんなぜか嬉しそう。

2003年8月18日月曜日

THE GIANT-BIRD

初めてその巨大な鳥が夜空に出現したのは三日前だった。
それ以来、人々は夜の外出をしなくなった。
ぼくとピーナツ売りは頭を抱えていた。
その巨大な鳥は寂しい道化師の新しい友達なのだ。
どのようにして鳥と道化師が出会ったのかはわからない。
町の人が恐がっているからには、どうにかしなければいけないけれど
二人を引き離すことはできない。

小父さんに相談すると笑って答えた。
「地上から見えなければいいんだろう?
月影が出ない飛び方を教えてやろう」

町の騒ぎはぴたりと止んだ。
巨大な鳥は今夜も町の上空を飛んでいる。

2003年8月17日日曜日

停電の原因

街燈が遊びに来た。
部屋に入れないので廃ビルの屋上へ行くことにした。
めずらしいお客さんだからおいでよ、と言ったら
寂しい道化師もやってきた。
ピーナツ売りは街燈がピーナツを食べられるかどうか悩みながらもいつもの倍、持ってきた。
屋上で、ぼくたちはオニゴッコをして、しりとりをした。
その後、満月を後に道化師と街燈は踊った。
小父さんは自分の姿とダンスに大満足みたいだ。

屋上から静かすぎる町を見下ろして
これ以上停電を長引かせるわけにはいかない、と
ピーナツ売りは言った。
嫌がる街燈を帰すのは大騒動だった。

2003年8月16日土曜日

どうして彼は喫煙家になったか

「それ、何の香り?」
「ん?キャラメルだな」
小父さんの煙草はピーナツ売りの特製だ。
タバコの葉は入ってないから本当は煙草じゃないんだけど。

次の日ぼくは、ピーナツ売りのところに手品を習いに行った。
「小父さんはなんであんな煙草吸うのかな」
「お月さんは、甘党なのさ。
こっちにいるときは香りだけでも始終味わっていたいんだよ」
「ふーん。でも、それなら食べればいいのに」
ピーナツ売りは笑って言った。
「そのうち煙草の作り方も教えてやらなきゃならんな。
背があと10センチ伸びたら教えてやる。手品より難しいぞ」

A MOONSHINE

よく晴れた満月の晩、白い傘を差して歩く御婦人を時々見かけた。
ハテナと思ってはいたんだ。
それから、満月の夜に傘を差す人はだんだん増えていった。
はじめは女の人ばかりだったのに、男の人にも傘を差す人が出てきた。
ぼくはマネキンに聞いてみることにした。
「アレね、月傘っていうらしいわ。ずいぶん流行ってるわよ。月夜に傘差して歩くのがオシャレなんですって。あとね、月明かりは体に毒だって言う人もいるわ。」
なんてこった!小父さんが知ったらショゲちゃうよ。
‘月光はカラダにいい’ってうわさを流さなくちゃ。

2003年8月14日木曜日

はたしてビールびんの中に箒星がはいっていたか

ピーナツ売りがビールびんをぶら下げてやってきた。
「ビールが入っていないのだよ」
ピーナツ売りは自分と、ピーナツを買うお客のためにビールをケースで買う。
その中にからっぽのびんがあったというのだ。
「よく見てごらん。中で何か飛び回っている」
「ほんとうだ。虫……ではないね。」
ぼくには見当がついていた。これはたぶん箒星だ。
「よし、ちょっと早いけど小父さんを呼ぼう」
ピーナツ売りも真剣な顔で頷いた。
「ラングレヌス」
なぜだか、とても低い声になった。

「やぁ。ピーナツ売りも来ていたのか、お。ビールだ」
小父さんは、ぼくとピーナツ売りが怒鳴り散らして止めるのも聞かずびんを開けてしまった。
ヒュン と音がしたような気がしたけど、はたしてビールびんの中に箒星がはいっていたかどうかは、わからないままだ。

2003年8月13日水曜日

星と無頼漢

激しくドアを叩く者があった。
「助けてくれ」
飛び込んできたのは流星だった。
「無頼漢に追われている」
と流星は言った。
「無頼漢は、そっちだろう」
そう言うと流星は泣きついてきた。
ぼくは流星を部屋に残し表へ出た。
怖そうな人など見当たらない。
「……だれもいないじゃないか」
ぼくはわざと声に出して言った。
無頼漢と聞いて本当は少し怖かったのだ。
「ニャ」
「やぁ、見かけない顔だね」
木陰から出てきたネコを抱いて部屋へ戻ると流星は叫びながら出ていった。
「おやおや、無頼漢はおまえだったのか?」
ネコはぼくが作ったミルク粥を六皿も平らげた。