2003年8月14日木曜日

はたしてビールびんの中に箒星がはいっていたか

ピーナツ売りがビールびんをぶら下げてやってきた。
「ビールが入っていないのだよ」
ピーナツ売りは自分と、ピーナツを買うお客のためにビールをケースで買う。
その中にからっぽのびんがあったというのだ。
「よく見てごらん。中で何か飛び回っている」
「ほんとうだ。虫……ではないね。」
ぼくには見当がついていた。これはたぶん箒星だ。
「よし、ちょっと早いけど小父さんを呼ぼう」
ピーナツ売りも真剣な顔で頷いた。
「ラングレヌス」
なぜだか、とても低い声になった。

「やぁ。ピーナツ売りも来ていたのか、お。ビールだ」
小父さんは、ぼくとピーナツ売りが怒鳴り散らして止めるのも聞かずびんを開けてしまった。
ヒュン と音がしたような気がしたけど、はたしてビールびんの中に箒星がはいっていたかどうかは、わからないままだ。