2003年8月6日水曜日

赤鉛筆の由来

寂しい道化師は、両手にのるくらいの木箱をもって来た。
「たからばこ」
「見てもいいの?」
道化師は大きくうなずく。
箱の中はすてきなものでいっぱいだった。
ビー玉やビンの王冠、セミの脱け殻や新聞の切り抜き
外国の切手に、まつぼっくり、石ころ
ガラスのかけらとボタン、壊れた真空管。
道化師はよろこぶぼくを嬉しそうに見ていた。
その中に小指の先ほどにちびた赤鉛筆を見付けた。
「これはなに?」
おしゃべりが苦手な道化師は身振りを交えて語る。
まるですばらしい芝居を見ているようだった。
それは小さくて悲しい恋物語。