2003年8月23日土曜日

THERE IS NOTHING

小父さんがくれた本は分厚くて表紙は革でできていた。
ぼくはそれをパラパラとめくって、ちょっと考えた後に言った。
「日記帳?」
「へ?」
小父さんはすっとんきょうな声を出した。
「何も書いてないから……」
「え?」
小父さんには、その本の文字が読めるのに、ぼくには何も見えないのだった。
フクロウの提案で、本とそっくりな日記帳に書き写すことにした。
小父さんが本を読み、ぼくが書く。
三週間かけて完成した本は、小父さんには白紙のままに見えるらしい。
ためしにピーナツ売りに二人の本を見せた。
両方とも、読めた。