2014年4月9日水曜日

スープの話のこと

豆本(よりちょっと大きい)が出来ました。

『スープ・ファンタジー』 有賀薫 スープと写真、 五十嵐彪太 文


有賀薫さんが作る毎朝のスープ、それに私が超短編を書きました。
2013年6月頃から企画を開始し、7月から8月に書けてスープの話を書き溜めました。
本に採用したのはそのうちの半分ほどなので、採用しなかったものをここに残そうと思います。
記事の日付は執筆した日付になりますので、ブログトップには表示されません。
カテゴリー「スープの話」から御覧ください。



2014年4月8日火曜日

四月八日 図書館までの道のり

となり町の図書館へは、電車で三駅、徒歩十五分。


初めて行くのに、地図を持っていない。


けれど、心配はいらなかった。駅を降りてからの道のりは、鶏が案内してくれた。


鶏は、帰りも待っていてくれた。行きとは違うルートで、桜の綺麗な道を通る。散りゆく桜は好きだ。


「お腹が空いたなあ」と呟いたら、鶏塩ラーメンの美味しいお店を教えてくれた。



2014年4月6日日曜日

四月四日 針葉樹

雨と追いかけっこしながら、針葉樹の葉を集めた。


樅、松、櫟、杉、檜。


葉の形と漢字の形を見比べる。


雨に追いつかれたので、走って帰った。葉を握りしめて。



一昨日のこと。


2014年4月1日火曜日

四月朔日 四月馬鹿

ウサギがメモ用紙に何か書き付けては、グチャグチャと丸めて投げ捨てている。


「ウサギってのは本来ニャーと鳴くのだ」


「ウサギってのは本来月で繁殖するのだ」


「ウサギってのは本来一羽二羽と数えない」


なかなか上手い嘘が思いつかずにイライラしているウサギを置いて、隣町まで散歩に出かけた。


桜が満開だから、大根を買った。



2014年3月30日日曜日

三月三十日 旅立たない傘

折りたたみ傘が旅に出たいと騒ぐ。風が強いせいだろうか。新しい傘に嫉妬しているのかもしれない。


私は必死に傘を持つ。でも、心のどこかで、傘のしたいようにすればよいじゃないか、と思っている。


そんな瞬間にいっそう強い風が吹き、傘はおちょこになってしまう。


それでも私にはこの傘が必要なのだ。電車に乗る度、屋内に入る度、私は折り畳み傘を丁寧に畳み、カバーを着ける。


畳まれた傘は少し泣く。



2014年3月27日木曜日

三月二十七日 白いものたち

白い花が一面に散らばっている。雨に濡れた辛夷の花。


花を落としてしまった辛夷の樹は、茫然自失で雨に打たれている。


「気持ちがわかるなあ」


樹を見上げながらウサギは言う。


「ウサギの花はどこに咲くのだ?」


からかってみたものの、白い花びらの中で佇むウサギと辛夷は確かによく似た気配で、しばし見惚れる。



2014年3月26日水曜日

三月二十六日 紫

幾万もある紫のうち、今日やってきたのは二色だった。
丁重に迎え入れ、それぞれに水を出す。
二つの紫は、少しずつ水を飲み、その度に紙の上で寝てしまう。
またちょっと目覚めて水を飲み、新しい紙の上で寝る。
そうして出来た紫のグラデーションが二色。濃いの薄いの、薄いの薄いの、儚いの。
並べてやわやわと撫でた。