2007年8月20日月曜日

八月十九日 美しい骨

火葬にされたばあちゃんは、標本の骸骨より完璧な骸骨で、湯気が出ているのにも構わず起き上がって踊りはじめた。

2007年8月18日土曜日

八月十七日 図書館への道

夏の緑が繁る遊歩道を通り抜け、林の突き当たりに図書館はある。
遊歩道は事切れた蝉と干からびた蚓で埋め尽くされていて、それを踏まないように慎重に歩かなければならない。
時折吹く風は、木々を大袈裟に揺らす。涼しいのを通り越して、寒い。
それは蝉のせいでも蚓のせいでもなく、図書館がコレクションしている怪談話のせいだと思う。

2007年8月16日木曜日

氷輪

プルシアンブルーの空に、氷の球体が浮かんでいる。
砂漠の灼熱をせせら笑うように、キリリと凍った月。
触れそうにくっきりと見えるのに、氷の珠は掴めない。いくら腕を伸ばしても、掌には熱風がしがみつくだけ。
「一滴くらい溶けてくれてもいいものを」
と、相棒の駱駝に語りかける。
「泣かせてみればいいだろう?甘く囁いて」
駱駝は首を捻って月を見やってから、ニヤリと黄色い歯を剥き出した。

2007年8月15日水曜日

八月十五日 緑のせいで馬鹿

自分の中に緑色の文字が少ないことに気付く。
緑色が少ないのは、なんだかよくないと思う。光合成が出来ないもの。
緑色の文字をを探すために、ゆっくりと文字を追うから、ルリユールがちっとも頭に入らない。

八月十四日(2) 夏の化学反応

いつもの香水が、マンゴーのように極甘に香って、鼻が仰け反る。
汗に反応したのか、暑さのせいか、とにかく見事な真夏仕様。
ずいぶん子供ぽかったけどね。

2007年8月14日火曜日

八月十四日 早朝悋気

午前4時45分。蝉が一斉にに鳴き始める。
私は蒸した布団の上で、唐突に生まれた嫉妬に戸惑っていた。嫉妬する理由については、まだ考えたくない。

2007年8月13日月曜日

八月十三日 たっぷり野菜

リゾットにはたくさんの野菜やきのこが入っていた。ウサギは興味津々で、器を覗き込み、どんな種類の野菜が入っているのか、数えようとする。
一匙づつ、口に運ぼうとするのを押し留め、「人参、トマト、マッシュルーム、さつまいも、枝豆……」とやるものだから
熱々のリゾットはすっかり冷め、食べおわるのに一時間も掛かってしまった。