2003年6月17日火曜日

星?花火?

星?花火?
「花火をやるぞ」
「やった!」
小父さんはマッチでロウソクに火をつけるとまず煙草を取り出した。
今日のはバニラの香りだ。
それからやっと花火を一本くれた。
ぼくはわくわくしながら花火をロウソクに近付けた。

シュー
音をたてながら火花が舞う。
すごくきれいだ。次々火をつけていく。
あれ?

「ねえ、これ花火?」
「何を言う、少年。花火でなければ、なんだというのだ」
「星でしょ?だって火花が全部空へ飛んでいくよ」
いつのまにか空は星だらけになっていた。

2003年6月16日月曜日

TOUR DE CHAT-NOIR

「こないだ箒星獲りにいったところに行きたい」
「あぁ、黒猫の塔か」
「黒猫の塔って言うの?」
「そうだ。あの塔はとっても、古い。そしてあぶない」
「でもこの前は登ったよ?」
「それは箒星を獲らなくてはならなかったからだ」
問答の末、なんとか塔へ連れていって貰った。

小父さんをベベに残し塔の中に足を踏み入れると冷たい風が背中をくすぐった。
「いらっしゃい」
「あ!黒猫さん!この前は会わなかったのに」
「お月さんがいたからね」
「……仲悪いの?」
「そうじゃない。これはお月さんには内緒だよ……」

黒猫とおしゃべりして車に戻り小父さんに言った。
「また来たい!」
「やれやれ」

2003年6月15日日曜日

AN INCIDENT IN THE CONCERT

コンサートに行くからと小父さんは服をくれた。
「これ着るの?」
「そうだ」
「はずかしいよ」
しばらく抵抗してみたが結局着て出掛けた。
きまり悪いままホールに着いた。

静かに幕が上がる。
初めて見る楽器だらけで、ぼくは夢中になった。
あの楽器はどの音だろう?どうやって音をだすんだろう?
気付くと横にいるはずの小父さんが、いない。
ぼくは不安になった。でも立ち上がるわけにはいかない。
とうとう全ての演奏が終わった。他の観客は帰り、広いホールにぼくはひとりぼっちになった。
そしてアンコールが始まった。

2003年6月13日金曜日

星を食べた話

小父さんを呼ぼうとしたら星の入った瓶を倒してしまった。
瓶の栓がはずれ、砂のように細かい星が机の上に散らばった。
窓を開けひとつだけ放り投げる。
「ラングレヌス!」

小父さんが来るには時間がかかるだろう。今日は曇っているから。
さて、散らばった星をどうしようか?
しばらく机の前で腕組みしながら星を眺めていると、ある衝動にかられて指を伸ばした。
「…・・・おいし」
机の上の星を舐め、瓶に残っていた星も平らげたところで、ようやく小父さんがやってきた。
「星を拾いに行こう」
「まだたくさんあるだろ?」
「食べちゃった!」

2003年6月12日木曜日

箒星を獲りに行った話

ぼくはワクワクしていた。
「明日は箒星を獲りに行くぞ。弁当を用意しておけ」
と小父さんに言われて、サンドウィッチを作り
ジュースも用意してバスケットに詰め、迎えを待った。
夕暮間近になって現れた小父さんは、ちょっと厳しい顔で、ぼくは緊張した。
ぼくたちはベベに乗り走った。
「あれに登るぞ」
小父さんが指差す先には夜空に刺さる程高い塔があった。

実際は塔に昇るのはそれほど大変ではなかったし、箒星もたくさん獲れた。
塔の上で食べるサンドウィッチもおいしかった。
でも小父さんは高いのはイヤだとずっと震えていた。

2003年6月11日水曜日

月光密造者

「この瓶に彼の吸い殻を入れてきてほしい」
突然話し掛けてきた男は、フラフラしていた。
渡されたのは、瓶というよりランプのような代物だった。
その晩、ハニーシガレットを喫む小父さんは機嫌がよく、ぼくたちは寂しい道化師に会いにいった。
パントマイムを見終わり拍手を送る時、小父さんの口から煙草が落ちた。
ぼくはすばやく瓶を真鍮の枠から外し、吸い殻を入れた。ジュッと音がした。

翌日、男に瓶を渡すと喜んだ。
「これで酒が旨くなるのさ、月はエライ目にあうがな」
その晩会った小父さんは、まっ赤だった。
もちろん、月も。

2003年6月10日火曜日

雨を射ち止めた話

十分でいいから、止んでおくれ!
かれこれ小一時間雨宿りしていた。
土砂降りの雨は道に川を作っている。
ぼくはパンを買いにきて小さな女の子と友達になった。
迷子の女の子は、お呼ばれの帰りで、ピンクのワンピースにきれいな包みを抱えていた。
パンも女の子も濡らすわけにいかない。
女の子はぼくの手を握り締めてしくしく泣いていた。
「坊主、これをやろう」
振り向くと白いマントの人が、ピストルを差し出していた。
思わず受け取るとその人は消えた。
銃口を空に向け引き金を引いた。衝撃が走った。
女の子は、けたけた笑った。