娘は樹木と結婚するという。
子供の頃から仲良くしていた樹だから異存はない(こともないが)。
許しを出すと、娘は樹木を切り倒し、小さな家を建て、子供を生んだ。
雨風から守ってくれる夫が居て幸せだと娘は言う。
孫はすくすく育っている。どんぐりが大好きな男の子だ。
#twnvday 2月14日ついのべの日 お題「夫婦」
難しいなーと思いながらも、二つ書けました。
「私はどこへ行くのか」
少女は遠くなる地球を眺めながら宇宙に訊ねる。答えは返ってこないと知りながら。
どこかの星に辿り着くかもしれない。延々とと宇宙を漂うかもしれない。「すべては宇宙の御心次第」と、決まり文句のように大人たちは言った。
少女は、宇宙に捧げられる生贄としてカプセルに乗っている。
人々は宇宙を崇めた。いつからか宇宙に生贄を捧げる習わしが始まった。少女には不思議なことだった。宇宙を崇めたり、宇宙に祈ったりすることが、滑稽に思えた。三十年に一度の生贄を選ぶ年が来ると、少女は真っ先に手を挙げたのだった。
幾光年経っただろう。夥しい数の星に衝突した。が、生贄を受け取る星は、なかなか現れない。
ふと、遠くに微かな光を見つけ、少女は呟いた。
「行かなくては」
その言葉を聞き、カプセルは軌道を変えた。まだ一度も使われたことのない宮殿に向かって。
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SFファン交流会出張編投稿作
老人の鼾が聞こえる。一日中、規則正しく。
起こしてはいけない。と、私は物音を立てないように暮らす。
いつかそれが途切れるのではないか。と、私は耳を澄ます。
この部屋に暮らし始めて、もう七年になるだろうか。
老人の鼾が聞こえる。