2025年8月4日月曜日

印鈕の龍

遺品となったばかりの軟玉の印には龍の印鈕がある。精緻だがどこか頼りない龍。故人は書画をよくし、この印を使っているのも見た覚えがあるが、手にしてみると印面には何も彫られていない。書いたばかりの書に押せば、じわりと私の名が現れ、印鈕の龍はぐるり捻転し、雷が鳴り雨が降った。塩辛い雨だ。(140字)