2013年2月12日火曜日

足跡

雪の上に、見慣れぬ足跡が残されていた。


鹿だの兎だの、ここいらにいる小獣の足跡よりもずっと大きく、もちろん人間のものでもなく、私はそれを見て「象」を思ったのだった。


足跡は大きな割に浅い。象が雪の上を歩いたら、もっと深い足跡になりそうなものだ。


そんなことを考えながら、足跡を追って歩いた。


果たして、象が居たのだ。


象は、動物園でしか見たことがないが、アフリカゾウやインドゾウとは違うように思う。


銀色によく輝く、雪の積もった晴れた昼間に実によく似合う象である。


そして、人語を話した。


「見つかってしまった」


象は照れくさそうに鼻をよじらせた。


「足跡を見たものだから」


「雪の上を歩いてみたかったのだ」


そうして私はしばらく銀色の象と遊んだ。背中に乗ったり、鼻を撫でたりした。


「そろそろ帰らなくてはいけないな」


と、象と私は呟いた。私は家に、象は空の向こうの銀色の森へ帰った。