2013年2月3日日曜日

行方

 「私はどこへ行くのか」
 少女は遠くなる地球を眺めながら宇宙に訊ねる。答えは返ってこないと知りながら。
 どこかの星に辿り着くかもしれない。延々とと宇宙を漂うかもしれない。「すべては宇宙の御心次第」と、決まり文句のように大人たちは言った。
 少女は、宇宙に捧げられる生贄としてカプセルに乗っている。
 人々は宇宙を崇めた。いつからか宇宙に生贄を捧げる習わしが始まった。少女には不思議なことだった。宇宙を崇めたり、宇宙に祈ったりすることが、滑稽に思えた。三十年に一度の生贄を選ぶ年が来ると、少女は真っ先に手を挙げたのだった。
 幾光年経っただろう。夥しい数の星に衝突した。が、生贄を受け取る星は、なかなか現れない。
 ふと、遠くに微かな光を見つけ、少女は呟いた。
 「行かなくては」
 その言葉を聞き、カプセルは軌道を変えた。まだ一度も使われたことのない宮殿に向かって。


 


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SFファン交流会出張編投稿作