巨大な金平糖だと思いながら、星を食べてみたことがなかった。
見た目が金平糖なら、味も金平糖に違いない。どれから味見しようか。
机の上の星たちが、ふるっと震えたような気がしたが、容赦はしない。
右から二番目の星にかじりついたが、駄目だった。全く歯が立たない。舐めても味はしなかった。
試しに茹でてみた。
変わらない。
今度は冷凍した。
変わらない。
「どうしたら星を食べることができるんだろう?」
お月さまにそうぼやいたら、食べていたかき氷を差し出された。
「食べて見れば?」
星は、削ると食べられるそうだ。
味は、金平糖というより、タマゴボーロだ。
2010年10月27日水曜日
箒星を獲りに行った話
お月さまに「箒星を獲りに行ってほしい」と、地図と日時の書かれたメモを渡された。
一体全体、箒星はどうやって獲ればいいんだろうか。きっとそれはとてつもなく速い。虫取り網なんか振り回しても、捕まえることはできやしないに決まっている。
机の上の星たちが、「塵取り!」と笑った。
ブリキの塵取りと、ラムネの空き瓶を持って、いざ、箒星を獲りに、丘へ!
夜空に高く掲げた塵取りが、月に照らされ、なんだか眩しい。
一体全体、箒星はどうやって獲ればいいんだろうか。きっとそれはとてつもなく速い。虫取り網なんか振り回しても、捕まえることはできやしないに決まっている。
机の上の星たちが、「塵取り!」と笑った。
ブリキの塵取りと、ラムネの空き瓶を持って、いざ、箒星を獲りに、丘へ!
夜空に高く掲げた塵取りが、月に照らされ、なんだか眩しい。
2010年10月25日月曜日
2010年10月22日金曜日
雨を射ち止めた話
毎晩毎晩、ひどい雨が降っていた。昼間は天気予報どおりの天気なのに、夜になると決まって雨が降るのだった。
お月さまはびしょ濡れで、屋内に入ってもびしょ濡れだから、お月さまだと気づかれてしまう。ポケットに入ろうと、ブランケットを被ろうと、とにかくびしょ濡れなのだった。
「雨がやまないと、おちおち遊びに来られない」
なんだ、お月さまは地上に用事があるわけではないのか、遊びに来ているだけなんだな。と、妙なことに感心するが、ともかくこう雨ばかりでは敵わない。
「雨に恨まれるようなことでもしましたか?」
聞くと、お月さまは以前、雨雲にぶつかってコブを作ったことがあるという。恨むならこっちのほうだと、ひとりで怒り始めた。
「雨雲め、バーン!!」
お月さまは手でピストルの真似をした。
それを見て、引き出しに小さな鉄砲があることを思い出した。水鉄砲だ。
そこに、古いローズウォーター(誰のものだろう?)を入れて、夜空に向かって射ってみた。
「バーン」
雨粒たちは恍惚となり、やがて雨は止んだ。
瓢箪堂のお題倉庫を、ちょっと追加しました。
お月さまはびしょ濡れで、屋内に入ってもびしょ濡れだから、お月さまだと気づかれてしまう。ポケットに入ろうと、ブランケットを被ろうと、とにかくびしょ濡れなのだった。
「雨がやまないと、おちおち遊びに来られない」
なんだ、お月さまは地上に用事があるわけではないのか、遊びに来ているだけなんだな。と、妙なことに感心するが、ともかくこう雨ばかりでは敵わない。
「雨に恨まれるようなことでもしましたか?」
聞くと、お月さまは以前、雨雲にぶつかってコブを作ったことがあるという。恨むならこっちのほうだと、ひとりで怒り始めた。
「雨雲め、バーン!!」
お月さまは手でピストルの真似をした。
それを見て、引き出しに小さな鉄砲があることを思い出した。水鉄砲だ。
そこに、古いローズウォーター(誰のものだろう?)を入れて、夜空に向かって射ってみた。
「バーン」
雨粒たちは恍惚となり、やがて雨は止んだ。
瓢箪堂のお題倉庫を、ちょっと追加しました。
2010年10月18日月曜日
ポケットの中の月
お月さまが「明日の晩は、ポケットに入れてくれ」などというのだ。
明日は新月だから。
お月さまはそういうけれど、それならば街に来なければよいのに。
「理由を聞きましょう」
と言うと、お月さまはもじもじし始めた。
「逢いたい……いや、見たいものがあるのだ。どうしても、明日の晩でなければ」
次の晩、どういう仕業かわからないが、巧い事ズボンのポケットに収まったお月さまはモゾモゾと動くからくすぐったい。
「ちゃんと行きますから、おとなしくしていて下さい」
そう言いながら着いたのは、月下美人の花畑だった。いくつもの白く大きな芳しい花が、月のない夜に輝いている。
ポケットの中のお月さまも身を乗り出して輝く。外に出て大丈夫なのだろうか。思わずズボンのポケットを押さえる。月光が漏れないように。
深呼吸したら、あまりの芳香に気を失ったから、その後、お月さまがどうしたのか、わからない。
明日は新月だから。
お月さまはそういうけれど、それならば街に来なければよいのに。
「理由を聞きましょう」
と言うと、お月さまはもじもじし始めた。
「逢いたい……いや、見たいものがあるのだ。どうしても、明日の晩でなければ」
次の晩、どういう仕業かわからないが、巧い事ズボンのポケットに収まったお月さまはモゾモゾと動くからくすぐったい。
「ちゃんと行きますから、おとなしくしていて下さい」
そう言いながら着いたのは、月下美人の花畑だった。いくつもの白く大きな芳しい花が、月のない夜に輝いている。
ポケットの中のお月さまも身を乗り出して輝く。外に出て大丈夫なのだろうか。思わずズボンのポケットを押さえる。月光が漏れないように。
深呼吸したら、あまりの芳香に気を失ったから、その後、お月さまがどうしたのか、わからない。
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