2010年10月22日金曜日

雨を射ち止めた話

毎晩毎晩、ひどい雨が降っていた。昼間は天気予報どおりの天気なのに、夜になると決まって雨が降るのだった。
お月さまはびしょ濡れで、屋内に入ってもびしょ濡れだから、お月さまだと気づかれてしまう。ポケットに入ろうと、ブランケットを被ろうと、とにかくびしょ濡れなのだった。
「雨がやまないと、おちおち遊びに来られない」
なんだ、お月さまは地上に用事があるわけではないのか、遊びに来ているだけなんだな。と、妙なことに感心するが、ともかくこう雨ばかりでは敵わない。
「雨に恨まれるようなことでもしましたか?」
聞くと、お月さまは以前、雨雲にぶつかってコブを作ったことがあるという。恨むならこっちのほうだと、ひとりで怒り始めた。
「雨雲め、バーン!!」
お月さまは手でピストルの真似をした。
それを見て、引き出しに小さな鉄砲があることを思い出した。水鉄砲だ。
そこに、古いローズウォーター(誰のものだろう?)を入れて、夜空に向かって射ってみた。
「バーン」
雨粒たちは恍惚となり、やがて雨は止んだ。

瓢箪堂のお題倉庫を、ちょっと追加しました。