2023年1月20日金曜日

白虎(幼四獣とビー玉)

南風か初飛行に疲れた 朱雀が着地したのは丸くなって眠る仔白虎の背。ふわふわで、ら夏の熱気が去って、幼い白虎はぐっすり眠っている。夢の中で白虎は雲だった。秋空を気持ちよく飛んでいる。目を覚ましてしばらくしても、まだ浮遊している感覚がある。朱雀が白虎にしがみついた。食い込む爪に痛みを覚えた白虎は生まれて初めて咆哮した。北極星を揺らすほどの大音響で。(104字/137字)

北へ

朱雀(幼四獣とビー玉)

巣立ちの時、朱雀はまだ翼が重い。羽ばたきを繰り返すが、飛び立てそうにない。父母はとうに姿を見せなくなった。空腹と退屈に倦んだとき、東から光るビー玉が転がってきて、雛朱雀の足元で止まった。暫し弄んでいたが、今度は西の方へ転がり始める。夕日が自分の羽と同じ色だと知った朱雀は、もぞもぞ青い者共がやってきた。あれは好物の「竹の実」に違いない。追って飛ぶ。飛んだ。(106字/140字)

西へ

青龍(幼四獣とビー玉)

卵から孵ったばかりの 青龍たち。互いの長い舌が絡まるのが面白くて仕方がない。しかし、先刻から、蛇が一匹、紛れ込んでいる。気付いた幼青龍たちは逃げようとするが 、小さくやわらかな爪は大きな珠を掴めず、それ故に飛翔できない。幼い青龍たちが珠の代わりになる物を探して右往左往していると、きらきら光り転がるビー玉を見つけた。ビー玉を追いかけて 南へ向かう。(171字)

南へ

2022年12月29日木曜日

#12月の星々 「調」投稿作

冬の山小屋は耳が喜ぶ。薪ストーブの、粗朶が燃え始める音、鋳鉄が伸びる音、薪が崩れる音。 夜、星々が歌っている。凍てつく寒さの中、硬質に輝く微かな音を捉えると耳は鋭敏になり、その調べを慎重に探る。が、旋律が聞こえ始めた途端、寒いのか恥ずかしいのか、耳は真っ赤になってしまうのだ。(137字)

2022年12月15日木曜日

#12月の星々 「調」投稿作

辞書が旅に出た。空になった定位置に書き置きがあった。難解な言葉が並んでいるのは流石だが筆記には不慣れとみえ、解読するのに苦労した。つまりは「語彙調査旅行」らしい。 辞書は元の定位置に収まらないほど厚くなって帰ってきた。新たに収録された言葉と出会うため、今度は私が辞書に潜る旅へ。(138字)

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予選通過

2022年12月14日水曜日

#12月の星々 「調」投稿作

このところチューニングが決まらない。よれよれのbフラット。楽器を温める。リードを替える。焦る。「それ、声変りじゃないか?」隣のテナーサックスからポンポンと肩を叩かれ「フぇ?」と掠れた声が出た。やっと始まった変声期と楽器の調子外れに関係があるとは思えないが、なぜだか気が楽になった。(140字)

2022年12月8日木曜日

#12月の星々 「調」投稿作

秋の間に色とりどりの落ち葉を呼んでおいた。星の形に切ってくれとせがむのもある。どんぐりと松ぼっくりも来た。もみの木がお待ちかねだ。落ち葉達を飛ばしてやると思い思いにぶら下がる。不思議と色調が揃う。松ぼっくり達はツリーの頂点を目指してのんびり競争中。二十四日までに決着がつくかしら。(140字)