図書館の椅子に腰掛けようとしたら、足元に落ち葉が落ちていた。赤く色付いた葉。
今しがた立ち去った人を目で追いかけると、そうと知らなければ気がつかないほど控えめに、
はらり……はらり……と、落ち葉をひとひらずつ落としながら歩いていた。
姿勢のよい、白髪交じりのご婦人であった。
図書館の椅子に腰掛けようとしたら、足元に落ち葉が落ちていた。赤く色付いた葉。
今しがた立ち去った人を目で追いかけると、そうと知らなければ気がつかないほど控えめに、
はらり……はらり……と、落ち葉をひとひらずつ落としながら歩いていた。
姿勢のよい、白髪交じりのご婦人であった。
道端にしゃがみこんでカップラーメンを作る若い女が二人。
それを道の向かいから眺める杖を持った老婆は、植え込みの段に座って休憩中。
両者の間を、十八人の一歳児がよちよちと闊歩していった。
川沿いの道をズンズン歩いた。景色もろくすっぽ見ずに、歩いた。
なぜそんなに脇目もふらずに歩くのだ、と小走りのウサギに問われたが、自分でもわからない。
でも、川沿いの道でなければならいのだ、今日は。
脇目はふらなかったが、鼻は秋の川の匂いを敏感に嗅ぎ分けていたから。
歩いて歩いて、お腹が空いた。焼き鳥屋で乾杯。
長く続いた雨が止み、突然晴れた。
ウサギは長靴で飛び出して行く。
「もう雨は止んだのに、長靴?」
「もう雨は止んだから、長靴」
自転車でわざわざ水溜りを狙って走る小僧を、長靴を履いたウサギが大喜びで追いかける。