2009年12月16日水曜日

微亜熱帯

葉だけ椰子の木になった松の木の盆栽を眺めながら、嘴だけターコイズブルーになった雀に米粒をやる。

2009年12月14日月曜日

故郷へ

泳ぎは苦手だから、海には行きたくないんだ。
なんて言っていたのは、嘘だったのね。
と、金魚鉢を眺めながら呟く。
恋人は、私の部屋の金魚鉢で泳ぐのが、いたく気に入ってしまった。
「こっちへおいでよ。気持ちがいいよ」
そんなことを言われても、私の躰は金魚サイズにはならない。
私は、海で泳ぎたいの。

金魚鉢を抱えて、電車に乗った。故郷を目指して。
脚に残った鱗が疼く。

文フリが終わってちょっと気が抜けてます(笑)。
若干滞ってます。もっとテキパキ動けるとよいのだが。

へんぐえの架空ストア委託準備は、商品ページ作成まで終了。
あとは、モノを架空ストアに届け、公開するだけ。なんだけども、本を個包装するための袋の手持ちがないのでストップ中。たぶん火曜日に買いに行きます。
そして、金曜日までのどこかで架空ストアに行きたい(願望)。気力がなければ、送る。ちゃんとこの通り動けば、週末までに発売開始できると思う。
関係各位、遅くなって申し訳ありませぬ、しばしお待ちを。

金曜日に、心臓の選評書きたい。

早く週末にならないかなー……(まだ月曜だ)

2009年12月12日土曜日

還れない

石灰水の中で溺れて瀕死の様相を呈している小さな葉がいる。
青すぎる水の中で、少しずつ、身体に澱のようなものが纏わりつき、身動きが取れなくなる。
樹木を茂らせる一構成員だった葉は、葉脈活き活きと力強く、日差しを一杯に浴びて、空を眺め、風にそよぎながら暮らしていた。
樹木を離れなければならなくなったときも、別段悲しくはなかった、苦しくもなかった。風に飛ばされ、しばらく旅をした後、どこかで土に還るはずだった。
けれど、思いがけないところに葉は迷い込む。どうしてこんなところにやってきたのだ、鍾乳洞。
そこの池は、今まで浴びたどんな雨とも、異なっていた。重く、まとわりつく。
葉は、土に還ることはもうできない。石灰の中に囚われた葉は、何億年も

2009年12月10日木曜日

うわの空

夢と現つの隙間に落っこちてしまった。
現つはぐいぐいと押し寄せてくるし、夢はふにふにと頬っぺたを触ってくる。
無理やり見上げると、細い空が見える。一筋の青は綺麗だなと思う。
身動きが取れないけれど、まぁそれでもいいや。

2009年12月5日土曜日

地球をみじん切り

ラジオから流れるDJの声に雑音が混ざる。DJは、まもなく僕のリクエストしたナンバーを流すと言っているのだ。数日前に葉書に書いた僕のコメントが、途切れ途切れに読まれている。
チューニングのつまみをそっと、ほんの少しだけ左右に動かしてみる。曲が始まるまでに、周波数よ、合え。

ポンっと音がして、無音になった。
とうとう壊れちゃった、僕のおんぼろラジオ。何もこんな時に壊れなくてもいいのに。
「あーあ」と大きな声で、悪態をついた。
すると、「壊れたんじゃないさ」と、ラジオとは思えぬほどの明瞭な声で、DJが言った。
「リクエスト、ありがとう、ラジオネーム「地球をみじん切り」。キミが地球をみじん切りにしたから、たった今から宇宙よりお届けしている」
窓の外を見ると、闇でもなく光でもなく、ただDJの声で充たされていた。

2009年12月2日水曜日

十二月二日連綿と続くもの

もうすぐ百歳になるという、少女の曾祖父の長命を敬いつつ、二人の亡き祖父と幾らも年が変わらないことに思いが至る。
眠り薬を飲むことを、許してください、今夜は。

2009年12月1日火曜日

鳴らない

ここに、クラリネットが二台ある。
きみは、昔、ブラスバンドをやっていたから、クラリネットをドレミファソくらいまでなら、吹くことができるはずだ。
さあ、吹いてごらん。
おや、鳴らないって? そりゃあ、そうさ。
ひとつはマウスピースにキツツキが穴を開けたから音が出ない。
もうひとつは、山の枯葉に14年間埋もれて腐ってしまったから音が出ない。
だけれど、キツツキのほうは「スー」と鳴らないし、腐っちまったほうは「フー」と鳴らないだろう。
どっちが好きかい?
どっちも嫌い? 鳴らない楽器は楽器じゃないって?
さぁて、それはどうかな。同じ鳴らないクラリネットでも、腐ったやつがよいと思うよ。悠久の時の流れを感じるからね。
大袈裟だって? 私はいつだって大袈裟だ。