2009年12月5日土曜日

地球をみじん切り

ラジオから流れるDJの声に雑音が混ざる。DJは、まもなく僕のリクエストしたナンバーを流すと言っているのだ。数日前に葉書に書いた僕のコメントが、途切れ途切れに読まれている。
チューニングのつまみをそっと、ほんの少しだけ左右に動かしてみる。曲が始まるまでに、周波数よ、合え。

ポンっと音がして、無音になった。
とうとう壊れちゃった、僕のおんぼろラジオ。何もこんな時に壊れなくてもいいのに。
「あーあ」と大きな声で、悪態をついた。
すると、「壊れたんじゃないさ」と、ラジオとは思えぬほどの明瞭な声で、DJが言った。
「リクエスト、ありがとう、ラジオネーム「地球をみじん切り」。キミが地球をみじん切りにしたから、たった今から宇宙よりお届けしている」
窓の外を見ると、闇でもなく光でもなく、ただDJの声で充たされていた。