2005年8月6日土曜日

パビムン理論

パビムンによる相対的絶対値がパビムン値である。
パビムン値に9.8736を乗算し、公式パビムンのxとする。
公式パビムンの解は、即ちパビムンである。

2005年8月4日木曜日

名曲パビムン

私が好きな曲は「パビムン」。
ジャズのスタンダードナンバーだ。
初めて買ったラジオのスイッチを入れた時に、流れてきたのが「パビムン」だった。
派手な曲ではない。静かなラッパの(後にコルネットと知る)フレーズが繰り返される。
初めて買ったレコードも「パビムン」だった。13才だった。
レコード屋の親父に「パビムンなんか聴くのか? 珍しい子だな」と言われた。
私はレコードを引ったくるように受け取り、家に帰った。
それからは「パビムン」が収録されているレコードは何でも集めた。
ほかの曲は無視して「パビムン」ばかり聴いた。
今聴いているのは、チョット・バカリーの「パビムン」だ。

2005年8月3日水曜日

双子のパビムン

兄はパビムン、弟はバピムン。
二人は双子。
たった今産まれたばかり。

2005年8月2日火曜日

魔女のパビムン

王様が魔女を呼び付けた。
若い魔女だが、評判になっていた。
噂を聞き付けた王様は、さっそく魔女を呼び
「世界一美しい馬が欲しい」と言った。
魔女は深くお辞儀した。
魔女は、まだ少女と言っていいほど若かった。
深く被った黒いフードから覗いた上目使いの視線に、王様はタジタジとなった。
魔女は、マントの懐から出した薬を細い指で壷に入れた。
王様は呪文を待った。まだこの幼い魔女の声を聞いていない。
そして魔女は叫んぶ。
「パビムン・パビムン・ラミラミラー!」

2005年8月1日月曜日

虫のパビムン

二足歩行の虫は「パビムン」と名付けられた。
20ミリほどで、直立して手を擦り合わせながら歩く。
胴体は緑色の筒状である。
触角は長く、卵はひとつしか産まない。
好物はグリーンティと判明した。
発見者のパビムン氏は「竹の小枝が歩いているようだった」と語った。

お利口さん

女は紅緋の着物を着ていた。唇も髪飾りも爪も、同じ色をしていた。
一目で「嫌だ」と思った。「こっちに来るな」と思った。
でも、女は近づいてきた。音もなく寄ってきて、私の頭を撫でる。
「お利口さんね」
声も紅緋色。
「お利口さんね……お利口さんね」
女は、そう言って私の頭を撫で続けた。
「お利口さんね」
私は全然いい子じゃないのに。お母さんにもお父さんにも「お利口さん」なんて言われたことがないもの。
私は心の中で呟いた。
「いいえ、お利口さんよ……とてもお利口さん」
女は言った。
撫でられている頭が温かくなってきた。
だんだん眠くなってくる。

【紅緋 C0M90Y85K0】

恋するパビムン

パビムンが家に帰ると、扉に顔が付いていた。
「パビムン、おかえりなさい」
顔は美しい女の顔で、声は鈴のように軽やかだった。
顔は玄関の扉だけではなかった。
便所の扉にも顔はあった。
「お腹の調子はどう? パビムン」
冷蔵庫の扉にもあった。
「お野菜もたくさん食べてね」
寝室の扉にもあった。
「おやすみなさい、パビムン。いい夢を」
まもなく、あらゆる扉に顔があるわけではないと気付いた。
パビムンが開け閉めする扉に現れる、のだ。

パビムンは、顔に恋をした。
扉の顔に話し掛け、キスをするようになった。
顔は、しっとりと応えた。
しかしすぐに不満になった。
顔と声では足りなくなった。
手や胸や腰に触れたいと思った。

パビムンは、扉の顔を持つ女を探す旅に出ることにした。