2004年11月24日水曜日

朝が来るまで

「朱い影はいらんかね。朱い影はいらんかね。朱い影はいらんかね。」
日が暮れてまもない午後五時半。
「朱い影はいらんかね。朱い影はいらんかね。朱い影はいらんかね。朱い影はいらんかね。」
さっきまでの夕焼けの色をそのまま影にして引きずって歩くお婆さん。
「朱い影はいらんかね。朱い影はいらんかね。朱い影はいらんかね。朱い影はいらんかね。朱い影はいらんかね。朱い影はいらんかね。」

2004年11月22日月曜日

迷子になった影

日が暮れてしばらくした時、中学生の女の子がやってきた。
お巡りさんは信じてくれないかもしれないけど、と前置きして話始めた。
「お散歩の帰り道の赤ちゃん、お母さんにおんぶされて気持ち良さそうに寝ていました。
私は学校の帰り道で、二人の少し後を歩いていたんです。
あかく眩しい太陽がちょうど目の前に見えていました。
二人の影は私の方に長く長く伸びていました。
私はそれをなんとなく眺めながら歩いていました。
突然、赤ちゃんの影が、するりとお母さんの背中を降りたんです。
私は視線を上げて前の二人を見ました。さっきと変わらず、赤ちゃんはお母さんの背中におぶさっています。
影だけが、お母さんの背中から離れてしまったんです。
お母さんの影は慌てていました。でもちょうどそこで角を曲がってしまいました。
私は赤ちゃん影に付いて行きました。
でも、すぐに暗くなって来てしまって、赤ちゃんの影は見えなくなってしまいました。
お巡りさん。赤ちゃんの影、捜して下さい。」

私は中学生の話をメモを取りながら聞いた。
「教えてくれて、ありがとう。赤ちゃんの影は必ず見つかるよ。実はおじさんの息子の影も小さい時によく迷子になったんだ」
そう言うと、彼女はとてもびっくりした後、ケタケタと笑った。
見つかったら連絡するよ、と言うと手を振って交番を去っていった。

2004年11月20日土曜日

WhiteChristmas

暖炉の炎の揺らめきに合わせて、影は歌を唄う。
それはあなたには聞こえないけど、月にはしっかり届く。
だからクリスマスには月から影へのプレゼント。
一晩だけ白い夢を見られるのさ。

2004年11月19日金曜日

送る

「苦しい」と言って影はマフラーを取ってしまった。
影がマフラーを取っても僕のマフラーは僕の首に巻かれたままだけど、影マフラーは北風に乗って飛んでいった。
マフラーが影マフラーに付いて行きたいがるのを、僕は必死で抑えた。だって僕はマフラーをひとつしか持っていないから。
次の日、マフラーは凍ったように冷たかった。
僕はマフラーをもってビルの屋上に上がった。
影マフラーと一緒になれることを願いながら、マフラーを投げた。

2004年11月18日木曜日

TWILIGHT DANCE

影は長く伸びた自分が愉快らしく、僕にいろんな格好をさせます。道端でくねくねと踊っているのは、そんなワケがあるのです。

2004年11月17日水曜日

長い長いお話

長い下り坂を歩いていました。
目の前の西日がまぶしくて後ろを向いたら、のっぽの影が輝いていました。

2004年11月15日月曜日

枯葉

積もった落ち葉の中を掻き分けて歩く。
「焼き芋な気持ち」
と影は言った。