2004年11月22日月曜日

迷子になった影

日が暮れてしばらくした時、中学生の女の子がやってきた。
お巡りさんは信じてくれないかもしれないけど、と前置きして話始めた。
「お散歩の帰り道の赤ちゃん、お母さんにおんぶされて気持ち良さそうに寝ていました。
私は学校の帰り道で、二人の少し後を歩いていたんです。
あかく眩しい太陽がちょうど目の前に見えていました。
二人の影は私の方に長く長く伸びていました。
私はそれをなんとなく眺めながら歩いていました。
突然、赤ちゃんの影が、するりとお母さんの背中を降りたんです。
私は視線を上げて前の二人を見ました。さっきと変わらず、赤ちゃんはお母さんの背中におぶさっています。
影だけが、お母さんの背中から離れてしまったんです。
お母さんの影は慌てていました。でもちょうどそこで角を曲がってしまいました。
私は赤ちゃん影に付いて行きました。
でも、すぐに暗くなって来てしまって、赤ちゃんの影は見えなくなってしまいました。
お巡りさん。赤ちゃんの影、捜して下さい。」

私は中学生の話をメモを取りながら聞いた。
「教えてくれて、ありがとう。赤ちゃんの影は必ず見つかるよ。実はおじさんの息子の影も小さい時によく迷子になったんだ」
そう言うと、彼女はとてもびっくりした後、ケタケタと笑った。
見つかったら連絡するよ、と言うと手を振って交番を去っていった。