帰ってくると家の塀に不自然なくらい真ん丸い穴が空いていた。
こどもなら通れそうな大きさである。
「これはどうしたもんかな。とにかく直してもらわなけりゃ」
しゃがみこんで穴をしげしげと観察していたら、後からぐいぐいと押し込まれた。
いくらなんでも大人の私が通れるはずもない。
身体はちぎれそうなのに容赦なく押され気が遠くなりかけた。
ようやく押し出され顔を上げると知らない月が見えた。
「ご苦労さまでした。今夜は私の後ろ姿をお目にかけようと思いまして」
2002年11月6日水曜日
2002年11月5日火曜日
2002年11月4日月曜日
黒猫のしっぽを切った話
ふと気配を感じて窓に目をやると黒猫が網戸にへばりついていた。
「わたしのしっぽを切って欲しいのです」
しっぽを切る……?
「……えー。しっぽ切るって、ほらトカゲじゃないんだし痛いでしょう?それにぼくが切らなくても、ねぇ?」
「はさみを持って来て下さい」
震える手ではさみを探し出す。
猫が舐めるとはさみは倍の大きさになった。
「これはこのためのはさみなのです。
さぁ、時間がないのです。急いで!……早く!」
目をつむりエイ!とはさみを閉じた。
豆腐なような感触。目をあけるとしっぽは消えていたが、四十年振りの星空が現われた。
「わたしのしっぽを切って欲しいのです」
しっぽを切る……?
「……えー。しっぽ切るって、ほらトカゲじゃないんだし痛いでしょう?それにぼくが切らなくても、ねぇ?」
「はさみを持って来て下さい」
震える手ではさみを探し出す。
猫が舐めるとはさみは倍の大きさになった。
「これはこのためのはさみなのです。
さぁ、時間がないのです。急いで!……早く!」
目をつむりエイ!とはさみを閉じた。
豆腐なような感触。目をあけるとしっぽは消えていたが、四十年振りの星空が現われた。
2002年11月3日日曜日
SOMETHING BLACK
「夜はなぜ妙な気分になるのでしょう」
『スターダスト』のマスターがぽつりと言った。今夜は客が少ない。
こんな時は異国の顔を持つマスターとゆっくり話ができる。
「妙な気分というと?」
「人恋しくなったり、心静かになったり、泣きたくなったり」
「夜の種には気分の成分が入っているのです」
そう言ったのは風変わりな、やはり常連の男だった。
パイプを取出し手で擦ると黒い粒がコトンと現れた。
「それが夜の種、ですか?」
「さよう」
黒い粒を両手でぱちん!と潰した。
「孤独の種」
『スターダスト』のマスターがぽつりと言った。今夜は客が少ない。
こんな時は異国の顔を持つマスターとゆっくり話ができる。
「妙な気分というと?」
「人恋しくなったり、心静かになったり、泣きたくなったり」
「夜の種には気分の成分が入っているのです」
そう言ったのは風変わりな、やはり常連の男だった。
パイプを取出し手で擦ると黒い粒がコトンと現れた。
「それが夜の種、ですか?」
「さよう」
黒い粒を両手でぱちん!と潰した。
「孤独の種」
2002年11月2日土曜日
IT'S NOTHING ELSE
「まばたきをするたびにさ、なにかひとつ消えてるんだよ」
「でも、みんなまばたきは毎日何回もしてるじゃないか」
「それでも世の中にはいろんなものがある、て言いたいんだろう?ふふふ ないものまで見えてるのさ。実に都合良くできている」
次の一瞬間、世界の美しかったこと!
「でも、みんなまばたきは毎日何回もしてるじゃないか」
「それでも世の中にはいろんなものがある、て言いたいんだろう?ふふふ ないものまで見えてるのさ。実に都合良くできている」
次の一瞬間、世界の美しかったこと!
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