2002年11月3日日曜日

SOMETHING BLACK

「夜はなぜ妙な気分になるのでしょう」
『スターダスト』のマスターがぽつりと言った。今夜は客が少ない。
こんな時は異国の顔を持つマスターとゆっくり話ができる。
「妙な気分というと?」
「人恋しくなったり、心静かになったり、泣きたくなったり」
「夜の種には気分の成分が入っているのです」
そう言ったのは風変わりな、やはり常連の男だった。
パイプを取出し手で擦ると黒い粒がコトンと現れた。
「それが夜の種、ですか?」
「さよう」
黒い粒を両手でぱちん!と潰した。
「孤独の種」