2002年11月17日日曜日

AN INCIDENT IN THE CONCERT

いくら照明が落ちていると言っても、突然訪れた闇に観客は少なからず動揺し会場内は騒然となった。
しかし、ピアノは何の躊躇いもなく調べを奏で続けている。
むしろ先刻までより生き生きと。
それに気付いた一部の観客がステージの方を見つめる。
やがてほかの大勢も闇に慣れるにつれて落ち着きを取り戻す。
いつのまにか月明かりを頼りに全員がピアニストを黙って見つめていた。

「あのピアニストは猫なんだって」
「まっくらな中で、確かにしっぽが揺れるのを見たんだとさ!」
小さな町のうわさ話。