2002年8月14日水曜日

一粒の宇宙

コーヒー豆を一粒づつ挽くとか
みかんを一粒づつ食べるとか
米を一粒づつ磨ぐとか
塩を一粒づつかけるとか
そういうことを想像するのと、宇宙の果ては似てると思わない?

2002年8月13日火曜日

ありえるのならば、それは

眠くて眠くてどうしようもなかった。
朝、ブラックコーヒーを飲んだよなぁ、とトロトロの頭で考える。
俺はカフェインに弱く、コーヒーの効果は絶大なのだ。
朝、コーヒーを飲んで眠くなるなんて、死んでもありえない……。

2002年8月12日月曜日

満月と珈琲と人形のカンケイ

窓から見える満月を眺めていたら玄関のチャイムが鳴った。
こんな夜中に何だ?と注意深くドアを開けると三つ編みの女の子がたっていた。
「さあ、祭りにでかけましょう」
家の前の道は行列だった。仮装しているのかピエロやロボットもいる。
「何の祭りですか?」
女の子に聞くと
「あなたも人形になるのです。コーヒーを飲んでいたでしょう。だから祭りに参加して人形になるのです」

2002年8月11日日曜日

足音

コーヒーを飲みながら、階段を下りていたら、なかなか階段が終わらないことに気づいた。
考え事をしながら降りていたのでいつもより六段多く降りてから、ようやく気づいたのだ。
我が家の階段は十四段。
一階の床は二段下にある。
飛び降りる。まだ二段先。
「最初からやり直すんだ」二階まで昇ってみる。
見下ろして数える。確かに十四段。焦り始める。
数えながら降りる。1、2、3、4……14。
また一階の床は二段下。冷たい汗が背中を流れる。
・・・・・・覚悟を決めて、ひたすら降りることにしよう。

2002年8月8日木曜日

追い駆けっこ

コーヒー豆がなくなったので、瓶を洗ってから新しい豆を入れることにした。
ところが、いくら洗っても匂いがとれなかった。
匂いと言ってもコーヒーの香りだし、また豆を入れるのだから、と思いつつ、なぜか手が止まらなかった。
僕は瓶の中に鼻をつっこみ、蛇口を全開にして、洗剤塗れになって、汗をかいていた。
気付いた時、僕はコーヒー豆に追いかけられて息があがっていた。

2002年8月5日月曜日

ビターチョコレートフレーバー

フレーバーコーヒーという物を妻が買ってきた。
袋にはコーヒー園の農夫と貴族の女の絵が付いている。
「めずらしいでしょ?色々な香りがあってねとりあえずチョコを買ってみたの」
さっそく二人で飲んでみることにした。
それは本当にチョコレートの香りがするが、ほのかに匂いがするだけで普通のコーヒーだった。
「匂いと味がバラバラなのって不思議だね…」
そう言って笑い合った。
「匂いを付けるなんてまやかしだ。無意味な贅沢なんだよ。コーヒーはもとからいい香りがするんだ、これ以上の贅沢はねぇ」
農夫が言った。

2002年8月3日土曜日

砂の城

砂浜で遊んだのは何年振りだろうか。
予想外に上手く出来上がった城をニヤニヤと眺めながら一服していた。
突然、茶色い液体に城は流された。
「果無さが美しいの?美しさは果無いの?」
大きな魔法瓶を片手で軽々と持ち上げながら少女は言い、最後の一滴とともに消えた。
残されたのはコーヒーの染みと魔法瓶。