2002年6月8日土曜日

辻強盗

辻の真ん中を通りかかったら前後左右から男がでてきた。
「おい」
「アレを出せ」
「さもないと」
「撃つぞ」

「出してやってもいいが、アレはふたつしか持ってないよ」

「しまった!」
「どうやって分けようか」
「アレは分けられん」
「だいたい、あんたら何者だ」
四人が揉めている声を背に家路を急いだ。

2002年6月7日金曜日

THE GIANT-BIRD

怪我をしているスズメを拾った。
よく朝、スズメはハトくらいになっていた。
スズメに見えたそいつは、よく見ればスズメとは似ても似つかない、変な鳥だった。
彼は、石を食べるので、庭の石っころがなくなって助かった。
さらに数日後、ダチョウもびっくりなくらいでかくなっていた。
「ギョエー」
と一声鳴いたあと、線路沿いに食事しながら、どこかへいってしまった。

2002年6月6日木曜日

停電の原因

日が暮れて、半刻たった時、突然町が暗くなった。
「電燈が消えたぞ」
と誰かが言うまで、何が起きたのかわからなかった。
電燈の様子を見ようと近づいた男は「わっ」と言ってよろけた。
電燈という電燈に、びっしりと蝙蝠が張り付いていた。
剥がそうと大勢が知恵をしぼったが、一時間後、結局諦めたその時に、一斉に彼らは帰っていった。

2002年6月5日水曜日

A MOONSHINE

「そんな無茶な話あるかい?一体誰が言いだしたんだろう。お月様を溶かしたサイダーを飲むと、自転車で空を飛べる、なんて。できるはずがないし、どうしてそんな話を信じるんだ?大体、お月様をどうやって取ってくるのさ。サイダーに溶かしちまったら、月はなくなるじゃないか。なんで、俺に頼むんだよ?え?」

「……だって、オマエが今、自転車で宙に浮いているから」

2002年6月4日火曜日

どうして彼は喫煙家になったか?

彼がタバコを吸うのを見て、誰もが驚愕した。
彼の視界に灰皿が入っているだけで周囲の人は怯えた。
大体、彼がそこまでタバコを嫌っている訳を誰一人知らなかった。
その彼が、タバコを手に、紫煙を、吐いている。

一人の男が、なるべくさりげなく、なるべく明るく尋ねた。
「やあ、珍しいじゃないか。どういう心境の変化なんだ?」
「月と仲良くなりたかったんだ」

2002年6月3日月曜日

はたしてビールびんの中に箒星がはいっていたか?

「古い物置にあったんだ。ビンといっしょにメモがあった。」
<この壜に箒星を封じたり。開封厳禁。火気厳禁。水気厳禁>
友人の持ってきた古びたビンは曇っていて中を透かしてみることはできなかった。
「なぜ、この中にホーキ星が入っているんだ?」
「どうやって入れたんだ?」
「本当に入っているのか?」

散々二人で悩んだ末、まず水で絞った布で埃だらけのびんを拭いてみることにした。
「しまった!水気厳禁ってこういうことだったのか!」
ビンはショワショワと解けながら、飛んでいった。

2002年6月1日土曜日

星と無頼漢

ある無頼漢はよく星に願いをかけていた。
星に語りかけているのを見た者もいる。
彼の仲間はそれを馬鹿にしていたが、その結末を知ると無頼漢どもはこぞって星に願いをかけるようになった。
町の人々はその姿にたいそう気味悪がったけれど。