2025年10月21日火曜日

暮らしの140字小説42

十月某日、曇。新聞社内の喫茶店にて茶を飲む。客は少なく店内は昏いが茶はうまい。漣のように輪転印刷機の音が響く。インクの匂いが濃くなり、喫茶店の外を行き交う革靴が増えてきた。革靴はどれも草臥れている。喫茶店の隣は靴修理の店だが、シャッターは閉じていた。もう誰も靴を磨きはしないのだ。