2025年10月14日火曜日

暮らしの140字小説40

十月某日、晴。金木犀の香りで目が覚めた。窓を開けたまま寝ていたのだ。この日は一日中、どこに行っても、家の中でも金木犀の香りがした。しかし金木犀の木を見掛けることはなかった。出逢わぬほうがよいのかもしぬ。いつか聞いたことがある。あの小さな橙色の花が振り積もる処は隠世と通じていると。