2025年5月8日木曜日

暮らしの140字小説11

五月某日、雨。読書専用の椅子で一日中、本を読む。時々、うたた寝をする。椅子というのは、座れば尻や背に貼り付いて見えなくなる。謂わば吾と椅子の一体化が起こる。離れて見る椅子は即ち己の後ろ姿である。というのは言い過ぎだろうか。一度見たことがあるのだ。後ろに伸びた影が椅子の形だった人。(140字)