2019年2月7日木曜日

スポットライトを浴びながら

招かれた舞台に立つ。
美しい人と、楽団員と、観客の、ガラスが割れるような大きな拍手が身体に突き刺さる。
思わず、手に視線をやる。血は流れていない。

「さようなら。どうぞ、お元気で」
接吻しそうな近さで、美しい人が挽き肉を捏ねるような声で囁く。
忽ち、あの甘く官能的な感覚が蘇った。からかわれているのではないだろかという疑念がよぎるが、それどころではない。膝から崩れ落ちそうになるのを堪えて「ありがとう」と呟き返すのが精一杯だった。

「こちらに御座します、消えず見えずインクの旅券を持つ旅のお方を然るべき儀式で送る者はおらぬか!」
美しい人に促されて、シンバル奏者が楽器を携えてやってきた。
「よろしいですか」と問われて、「はい」と答える。
照明が暗くなり、すぐに目が眩んだ。スポットライトが当てられたようだ。観客の視線がこちらに集中しているのがわかる。
丸く薄い銅板が、背と腹を勢いよく挟む。雷鳴が響いた。