超短編
真夜中の水族館で下手なバイオリンを弾いて、イルカに白い目で見られたい。(35字)
もう三日も警報機を鳴らしっぱなしの踏切に、耳栓をしっかり入れてから「あんたもさみしい身の上だねえ」と話しかけたい。(57字)
夜の黒電話が鳴り響き、世界が不眠症になったので、催眠作用のある雨を降らせたい。(39字)
「電話が欲しい」と夜が言うので、目立たぬよう黒電話を贈りたい。(31字)
夜中に蕎麦を打ち始める狐を「うるさいよ？」と一応、説得したい。(31字)
雨音を音階別に保管したい。(13字)
卓上の牧場に小さな羊を飼い、春になったら毛刈りをし、数十年掛けてセーターを編みたい。(42字)