2014年5月31日土曜日

五月三十一日 渋茶を百杯

渋みが澱のように舌に溜まっていく。


なにも味がわからない。滑舌まで悪くなる。


舌が痺れる。


するとやかましい太鼓の音とともに鳥の羽根を頭に載せた裸の女が現れた。


異国の踊りに誘う。誘われても困る。


鳥の羽根が顔を撫でる。くすぐったくて不快だ。


裸の女はウインクして去っていく。


舌は痺れは収まった。



2014年5月30日金曜日

五月二十九日ここにいるよ

時間前に待ち合わせ場所に着いたら、相手はまだいない。


入り口のそばのベンチに座り、外を眺めていたが、なかなか現れない。


二十分ほど経って、電話が鳴った。


「どこにいる?」


「ここにいるよ」


目の前の空気が揺らぎ、陽炎のようだった揺らぎがだんだんとくっきりとして、ついに相手が姿を現した。


「ずっとここにいたのに」


「もっと早く電話すればよかったね」


笑いあった。



2014年5月27日火曜日

五月二十七日 屁の活用

「知らない獣の匂い」


こんなときだけ、ウサギは鋭い。今日買ってきた筆は馬の毛だ。


ウサギをからかって遊んでいたら、筆とウサギの尻尾が絡まってしまった。


「どうしたら取れる?」と聞くと、ウサギは盛大に放屁した。


スルリと筆が取れた。



2014年5月26日月曜日

五月二十六日 暴風

風が強い。しかし今日の風はただ強いだけではないらしい。


白いものが軒並み飛ばされている。白い花、白いシャツ、白いズボン、花嫁、そしてウサギ。


飛ばされていくウサギは真顔であった。


帰ってきたウサギはどこも怪我などしていなかったが、「哲学的な風だった」と呟いた。



2014年5月22日木曜日

五月二十一日 水音

様々な水音が聞こえる。蛇口から流れ出る水。川のせせらぎ。桶で絹を濯ぐ。雷雨。


どれもこれも水の音だ。


湯船に浸かりながら感慨に耽っていると、ウサギがザッパーンと勢いよく出てきた。


台無しだ。



2014年5月19日月曜日

五月十九日 対決

この間はカレー対決をした。今日は牛乳対豆乳だ。


勝ち負けはわかっていて、いつも豆乳の勝ち。私は子供の時からそれほど牛乳を好まない。


けれどもウサギは「たまには牛乳にしようぜ」と牛乳を勧めてくる。


すると牛乳もおいしそうな気がしてくるから、牛乳を飲む。


「やっぱり豆乳のほうが好きだ」とウサギに文句をいうとウサギはホルスタイン柄になって拗ねるのだ。


ホルスタイン柄になったウサギを風呂に入れるのは一苦労だというのに。



2014年5月13日火曜日

五月十三日 宇宙的花入れ

宇宙的な花入れは、半球体である。その花入れに入れた花は数光年先の星と交信したり、はしない。


生花おばさんは、宇宙的花入れには目もくれない。