12月のことばかり考えている。
四個、12月についての考え事がある。
二つは楽しいことで、ひとつはおじいさんのことで、もうひとつは、去年の12月についてだ。
ここまで書いて、どういうわけか、ケーキのこととご馳走のことを全く考えていなかったことに気が付いた。
12月についての考え事が六個になった。
六個のことをあれやこれやとメクルメク考えるのは、サイコロみたいだ、と思う。
サイコロといえば、来年はどっちに転がるのだろう。
2009年10月29日木曜日
2009年10月26日月曜日
僕たちの世界
紙飛行機に乗って、僕たちの世界を探そうよ。
と、彼は言う。わたしたちはいつだってどこだって二人ぼっちだった。透明な鳥籠の中の番いの小鳥のように扱われた。皆、親切にしてくれるけれど、それだけだった。
わたしたちは鳥籠から逃げ出さなければならない。それはもう、揺るぎないことなのだ。
「紙飛行機でいいの?」
「紙飛行機がいいのさ」
「今日は雨が降っているよ?」
「大丈夫、雨粒なんかじゃ壊れないよ」
「風が強すぎない?」
「風で飛ぶわけじゃないんだ」
彼はわたしの額にキスをした。不安が吸い取られていくのがわかる。
彼が折ったちょっと不恰好な紙飛行機を手のひらに載せて、私たちは飛び立った。遠くへ
(286字)
と、彼は言う。わたしたちはいつだってどこだって二人ぼっちだった。透明な鳥籠の中の番いの小鳥のように扱われた。皆、親切にしてくれるけれど、それだけだった。
わたしたちは鳥籠から逃げ出さなければならない。それはもう、揺るぎないことなのだ。
「紙飛行機でいいの?」
「紙飛行機がいいのさ」
「今日は雨が降っているよ?」
「大丈夫、雨粒なんかじゃ壊れないよ」
「風が強すぎない?」
「風で飛ぶわけじゃないんだ」
彼はわたしの額にキスをした。不安が吸い取られていくのがわかる。
彼が折ったちょっと不恰好な紙飛行機を手のひらに載せて、私たちは飛び立った。遠くへ
(286字)
2009年10月24日土曜日
泣きっ面に蜂
躁鬱なドーバーのじいさん、相当な素封家になり、浮かれて草原を駆け回る。
どでかい蜂にチクリと刺されて、じいさんは我に返った。
手元のお金は借りた金。騙されたんだ、破産したんだ、糠喜びだ、なんてこった。
蜂に刺された鼻と膝を真っ赤に腫らして、うろたえたじいさんはドサクサに紛れドーバーに後戻り。
There was an Old Person of Dover,
Who rushed through a field of blue Clover;
But some very large bees,
Stung his nose and his knees,
So he very soon went back to Dover.
エドワード・リア『ナンセンスの絵本』
2009年10月21日水曜日
2009年10月19日月曜日
2009年10月18日日曜日
冷たい紅
きみが珍しくルージュを引いていることは、すぐにわかった。大時代のモデルみたいな、真っ赤でくっきりした唇だから。
どうしたの? と聞く前にキスしてしまうことにした。
冷たかった。温めようとして唇をはむ。舐める。熱い吐息を掛ける。それでもいつまでも冷たかった。
ようやくきみがきみでないと知る。
途端に自分の唇が冷えて行くのを感じる。これから恋人に会いに行かなくてはならない。
(181字)
+創作家さんに10個のお題+
変なのが書けた(ニヤリ)。たぶん一種の吸血鬼譚
どうしたの? と聞く前にキスしてしまうことにした。
冷たかった。温めようとして唇をはむ。舐める。熱い吐息を掛ける。それでもいつまでも冷たかった。
ようやくきみがきみでないと知る。
途端に自分の唇が冷えて行くのを感じる。これから恋人に会いに行かなくてはならない。
(181字)
+創作家さんに10個のお題+
変なのが書けた(ニヤリ)。たぶん一種の吸血鬼譚
2009年10月13日火曜日
きつね味
森の中にぽつんとアイスクリームスタンドがあった。私と恋人は歩き疲れていたので、アイスクリームはとても魅力的だ。
「バニラアイスを下さい」と言うと、赤いキャップの若者はちょっと困った顔をして
「きつね味しかないのです」
と言った。
きつね味? 私と恋人は顔を見合せたけれど、私たちはとても疲れていたから、どうしても甘い物が食べたかった。
「きつね味ってどんな味なのかしら」
「きつね味のアイスクリームだから、きつねの味です」
「おいしいの?」
「そりゃあ、もう、とっても!」
「それじゃ、きつね味を二つ下さい」
赤いキャップの若者はとても嬉しそうな顔で、コーンからはみ出しそうなくらいにきつね色のアイスクリームを盛りつけた。
きつね味のアイスクリームがきつねの味かどうかはよくわからない。だって、きつねを食べたことがないんだもの。
その後も森を歩き続けたのだけれど、きつねを見掛ける度に恋人が「ちょっと味見してみる?」と言うので、段々その気になってきた。きつね味のアイスクリームは、そりゃあ、もう、とってもおいしかったから、きっと生のきつねはもっとおいしいと思うのだ。
(470字)
「バニラアイスを下さい」と言うと、赤いキャップの若者はちょっと困った顔をして
「きつね味しかないのです」
と言った。
きつね味? 私と恋人は顔を見合せたけれど、私たちはとても疲れていたから、どうしても甘い物が食べたかった。
「きつね味ってどんな味なのかしら」
「きつね味のアイスクリームだから、きつねの味です」
「おいしいの?」
「そりゃあ、もう、とっても!」
「それじゃ、きつね味を二つ下さい」
赤いキャップの若者はとても嬉しそうな顔で、コーンからはみ出しそうなくらいにきつね色のアイスクリームを盛りつけた。
きつね味のアイスクリームがきつねの味かどうかはよくわからない。だって、きつねを食べたことがないんだもの。
その後も森を歩き続けたのだけれど、きつねを見掛ける度に恋人が「ちょっと味見してみる?」と言うので、段々その気になってきた。きつね味のアイスクリームは、そりゃあ、もう、とってもおいしかったから、きっと生のきつねはもっとおいしいと思うのだ。
(470字)
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