さらさらと雨が降る晩、空には満月が煌々と輝いていた。
「夜の天気雨か」
と呟くと、いっそう月は明るくなり、雨は止んでしまった。
2005年11月29日火曜日
雨を飲む
ぼくが雨を飲んでいるとほとんどの人が変な顔をする。もっともだ。ぼくはぐちゃぐちゃにぬかるんだ地面に
寝転がり、大口を開けて雨を飲んでいるのだから。
たまに声を掛けて来る人もいるが、それは「具合悪いですか?救急車呼びましょうか」という台詞に限られて
いる。
でも、この娘は違った。雨を飲むぼくの傍らにしゃがむと静かな、でもよく通る声で言った。
「おいしい?」
ぼくが雨を飲んでいることに気付いた初めての人だった。
「わたしも隣で飲んでいい?」と言うのでぼくは驚いて起き上がった。
「やめなよ。服が汚れるし、風邪ひくかもしれない」 娘は、ぼくの忠告にお構いなしで、大の字に寝転んだ。
娘の顔が、足が、服が段々と濡れていく様に、何故か見惚れてしまう。
「どうしたの?一緒に飲もうよ、雨」
ぼくはもっときみを見ていたいんだとは言えずに、仕方なく寝転んだ。
「雨って同じ味のことがないんだ」
だから雨を飲むのは止められない、とぼくが言うと娘はそうだね、と返した。
娘は、いままでコップに雨を溜めて飲んでいたのだと語った。
「一度身体で雨を受け止めてみたかったの。コップで飲むのは、ずるいような気がしてた」
娘が手を伸ばしてきた。ぼくはその小さな濡れた手を握りしめた。もうお腹が一杯だけど、雨はまだ止んでほ
しくない。
きららメール小説大賞投稿作
寝転がり、大口を開けて雨を飲んでいるのだから。
たまに声を掛けて来る人もいるが、それは「具合悪いですか?救急車呼びましょうか」という台詞に限られて
いる。
でも、この娘は違った。雨を飲むぼくの傍らにしゃがむと静かな、でもよく通る声で言った。
「おいしい?」
ぼくが雨を飲んでいることに気付いた初めての人だった。
「わたしも隣で飲んでいい?」と言うのでぼくは驚いて起き上がった。
「やめなよ。服が汚れるし、風邪ひくかもしれない」 娘は、ぼくの忠告にお構いなしで、大の字に寝転んだ。
娘の顔が、足が、服が段々と濡れていく様に、何故か見惚れてしまう。
「どうしたの?一緒に飲もうよ、雨」
ぼくはもっときみを見ていたいんだとは言えずに、仕方なく寝転んだ。
「雨って同じ味のことがないんだ」
だから雨を飲むのは止められない、とぼくが言うと娘はそうだね、と返した。
娘は、いままでコップに雨を溜めて飲んでいたのだと語った。
「一度身体で雨を受け止めてみたかったの。コップで飲むのは、ずるいような気がしてた」
娘が手を伸ばしてきた。ぼくはその小さな濡れた手を握りしめた。もうお腹が一杯だけど、雨はまだ止んでほ
しくない。
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