主水くんは時間に精確な性格でションヴォリ氏がたとえひもじさのあまりに死んでしまっても時間にならないと食事を出さない。
その主水くんが頼りにしている懐中時計は彼のおじいさんが町で余所様から無断で拝借した由緒正しき品である。
主水くんは毎日寝る前にねじを巻き、正午の鐘の音に針を合わせる。
正午の鐘の音を聞くとき主水くんの時計は必ず11時54分18秒である。
ようやく主水くんの懐中時計が3時を指しションヴォリ氏お待ちかねのおやつが出てきた。
おやつはレーズン27粒とアーモンド6粒とココア一杯である。
「では、博士。水汲みに行ってまいります」
2003年10月31日金曜日
2003年10月30日木曜日
主水くんのこと
ションヴォリ氏の助手を自認する主水くんだが、やっていることといえば水汲みと食事の支度くらいのものだ。
「ほれ、モンドくん」
「はい。博士」
主水くんはだいぶトウのたった子供である。
トウがたった子供というのは、不機嫌になるのが得意である。
「もう三度も呼ばれましたが。用件はなんですか?博士」
主水くんはちゃんとわかっている。ションヴォリ氏は腹が減ったのだ。
「ほれ、モンドくん」
「はい。博士」
「おやつはまだかね」
「おやつの時間までは、あと16分38秒あります」
「ほれ、モンドくん」
「はい。博士」
主水くんはだいぶトウのたった子供である。
トウがたった子供というのは、不機嫌になるのが得意である。
「もう三度も呼ばれましたが。用件はなんですか?博士」
主水くんはちゃんとわかっている。ションヴォリ氏は腹が減ったのだ。
「ほれ、モンドくん」
「はい。博士」
「おやつはまだかね」
「おやつの時間までは、あと16分38秒あります」
2003年10月29日水曜日
レオナルド・ションヴォリ氏のこと
レオナルド・ションヴォリ氏はじいさんだ。
どのくらいじいさんかというと、年がわからないくらいのじいさんだ。
「ほれ、モンドくん」
「はい。博士」
主水と書いてモンドと読む。
ションヴォリ氏は漢字が書けないのでカタカナで呼ぶ。
ちなみに主水くんは日本人ではないかもしれない。
「ほれ、モンドくん」
「はい。博士」
ションヴォリ氏を「博士」と呼ぶのは主水くんだけである。
ションヴォリ氏は発明家でも医者でも教授でもないし、過去にそうであったこともない。
単なるじいさんで、だいぶ前からじいさんで、その前がどうだったかは、ションヴォリ氏もわからない。
どのくらいじいさんかというと、年がわからないくらいのじいさんだ。
「ほれ、モンドくん」
「はい。博士」
主水と書いてモンドと読む。
ションヴォリ氏は漢字が書けないのでカタカナで呼ぶ。
ちなみに主水くんは日本人ではないかもしれない。
「ほれ、モンドくん」
「はい。博士」
ションヴォリ氏を「博士」と呼ぶのは主水くんだけである。
ションヴォリ氏は発明家でも医者でも教授でもないし、過去にそうであったこともない。
単なるじいさんで、だいぶ前からじいさんで、その前がどうだったかは、ションヴォリ氏もわからない。
2003年10月28日火曜日
目覚めた機能
オレのひいひいじいさんは鬼だった。
そんなわけでオレの頭には角がある。
父さんもじいさんも角はないから、鬼だったひいひいじいさんの血を濃く継いでしまったんだろう。
角は12の時に生えてきた。2センチもない小さいものだから目立たない。
勇ましくてデッカイほうが鬼らしくていいと思うんだけど。
角というのは予想外に便利だ。
なんとこいつはGPSなのだ。オレは歩くナビゲーション。
おかげで子供の頃ひどかった方向音痴はピタリと治まった。
この機能、ひいひいじいさんの時は発揮できなかったはずだ。
鬼に生まれてよかったなァ。
そんなわけでオレの頭には角がある。
父さんもじいさんも角はないから、鬼だったひいひいじいさんの血を濃く継いでしまったんだろう。
角は12の時に生えてきた。2センチもない小さいものだから目立たない。
勇ましくてデッカイほうが鬼らしくていいと思うんだけど。
角というのは予想外に便利だ。
なんとこいつはGPSなのだ。オレは歩くナビゲーション。
おかげで子供の頃ひどかった方向音痴はピタリと治まった。
この機能、ひいひいじいさんの時は発揮できなかったはずだ。
鬼に生まれてよかったなァ。
2003年10月27日月曜日
2003年10月26日日曜日
砂浜での一夜
きみの涙をぼくは一滴も逃すまいとしたからきみは何時間も、ただただ涙を流し続けた。
きみの涙は濃度を増し、ぼくは段々飽きてきて、しまいに吐いた。
真っ青な吐瀉物にぼくは我に返る。
どうしてもっと早く気付かなかったんだろうね。
きみの涙が甘いことを。きみが一言も喋らないことを。
月に照らされ銀を放ちながら
きみは波間に消えた。
きみの涙は濃度を増し、ぼくは段々飽きてきて、しまいに吐いた。
真っ青な吐瀉物にぼくは我に返る。
どうしてもっと早く気付かなかったんだろうね。
きみの涙が甘いことを。きみが一言も喋らないことを。
月に照らされ銀を放ちながら
きみは波間に消えた。
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