2024年7月7日日曜日
ラブレター #文披31題 day7
2024年7月6日土曜日
呼吸 #文披31題 day6
昼寝する子の腹がゆったりと上下している。同じリズムで猫のしっぽも揺れている。右に左に振り向き続ける扇風機の首もなぜか時々ぴったりシンクロして私は少し笑う。すると猫のしっぽはバシバシと抗議を示し、子は寝返りを打ち、扇風機は向こうを見る。もう一緒に寝てしまおう。(129字)
2024年7月5日金曜日
琥珀糖 #文披31題 day5
友人の蟻のため、せっせと琥珀糖を作り庭の東の端に置いている。友人の暮らす巣の入口は庭の西側にあるので、もっと巣の近くに置こうかと訊いたこともあるのだが「美しい琥珀糖を運ぶのは、重たくとも好い気分なのだよ」という。わかる気がする。今日は黄色の琥珀糖を作ろう。(128字)
2024年7月4日木曜日
アクアリウム #文披31題 day4
一緒に暮らすことになった小さな人魚の姫のために水槽造りを始めた。優雅に揺れる水草。そうだ、城も建てよう。築城中に姫は成長し、水槽は手狭になり、インテリア好きの姫により、この家はすっかり人魚仕様になった。今夜もシュノーケルをしたまま人魚に抱かれて眠る。(125字 )
2024年7月3日水曜日
飛ぶ #文披31題 day3
大きな紙飛行機が飛んでいたので「乗せて」と叫んだら、すぅと降りてきた。折り目の隙間にうつ伏せに乗り込むと凄い勢いで飛び立った。あぁ紙飛行機だから誰かが飛ばしたんだ。どんなに大きな手だろうか。振り返りたかったけれど、うつ伏せでは難しく、ただ入道雲が迫ってくる。(129字)
2024年7月2日火曜日
喫茶店 #文披31題 day2
神輿や、法被を着た者たちが窓の向こうを次々通り過ぎる。外の喧騒をよそに店内は驚くほど静かだ。ぬるい珈琲を啜りながら祭の様子を眺める。異形の者が紛れ込んでいる。彼らは私に見られていることに気付くと会釈を寄越す。その瞬間だけ祭囃子が私の鼓膜を激しく揺らすのだ。(128字)
2024年7月1日月曜日
夕涼み #文披31題 day1
さっきまでカキ氷を頬張っていた君が寒いと言う。熱気の抜けた風が吹く夕暮れは近頃、滅多にない。「昔の夏はこんな感じだったよ」カーディガンを貸してやりながら言う。いつの間にか私の服がブカブカじゃなくなってきたね。まだ柔らかな手を繋ぎ直す。ゆっくり歩いて帰ろう。(128字)