どうしてもクロワッサンが食べたくて、パン屋を5軒巡ったが、どこもかしこも売り切れなのだ、クロワッサンだけが。
あんぱんも、チョココロネも、クリームパンも、メロンパンもあるのに、クロワッサンだけ売り切れ。
「どうしてでしょうねえ」
「今日はモンスター日和だからかもしれません」
「モンスターはクロワッサンを食うのですか」
「いや、私もよくは知らないんですけれど」
と、店の人やほかの客と言葉を交わしたが、まったくもってよくわからない。
6軒目のパン屋で、潰れたクロワッサンをようやくゲットできた。美味かった。
2016年7月22日金曜日
2016年7月2日土曜日
七月二日 エスカレーター男
エスカレーターを動かすおじさんは、普段は見えないところで働いているはずなのだが、蒸し暑い週末の夕暮れ、エスカレーターもエスカレーターを動かすおじさんも油断していたらしい。
大型スーパーのニ階で、おじさんは黙々と上りエスカレーターの下段で手すりを回している。人々が怪訝な顔でおじさんの横を通り過ぎる。
「見えてますよ」と小さく呟いたが、おじさんの耳には届かなかったようだ。
大型スーパーのニ階で、おじさんは黙々と上りエスカレーターの下段で手すりを回している。人々が怪訝な顔でおじさんの横を通り過ぎる。
「見えてますよ」と小さく呟いたが、おじさんの耳には届かなかったようだ。
2016年6月23日木曜日
2016年6月13日月曜日
六月十三日 梅雨とキノコ
私はその大きな傘にだんだんと近づき、追いつき、追い越した。追い越し際にチラリと大きな傘の主に目をやると、小さな婆さんであった。
そして、婆さんが歩くたび、傘の内側から、ブワッと赤い粉が僅かに吹き出すのだった。
その胞子を吸い込んでいいのか、悪いのか、一瞬逡巡し、大きく息を吸ってみた。 なんの匂いもしなかった。
2016年5月14日土曜日
2016年5月10日火曜日
五月十日 駅前の道端で入れ歯を拾った話
老人Y氏に聞いた話。ある日、Y氏は駅前の道端に入れ歯が落ちているのを見つけた。
Y氏は自身も歯で苦労しているから、「落とした人はさぞ困っているだろう」と、ちり紙に包んで拾って、交番に届けることにした。すると、入れ歯が突然「警察はやめてくれ!!」と喚きだしたそうだ。
Y氏は、入れ歯に負けない大声で説教をしながら交番へ向かった。お巡りさんは、迷惑そうに入れ歯の遺失物届けの手続きをしていたそうだが、その頃には入れ歯はすっかり大人しくなって、自白でもしそうな様子だったという。
Y氏は自身も歯で苦労しているから、「落とした人はさぞ困っているだろう」と、ちり紙に包んで拾って、交番に届けることにした。すると、入れ歯が突然「警察はやめてくれ!!」と喚きだしたそうだ。
Y氏は、入れ歯に負けない大声で説教をしながら交番へ向かった。お巡りさんは、迷惑そうに入れ歯の遺失物届けの手続きをしていたそうだが、その頃には入れ歯はすっかり大人しくなって、自白でもしそうな様子だったという。
2016年5月6日金曜日
五月六日 空き缶を拾う
コロコロと転がってきた空き缶を拾ったら、厳密には空き缶ではなかった。中に雷神様が入っていたからだ。「出してくれ~」と声がするので、どうにか振って、引っ張って、雷神様を出す。手乗り雷神。
缶が古びたので、新しい缶に住み替えたいと雷神様は言う。「お好みの缶はありますか?」というと「麦酒」という。私がビールを買いに行っている間、雷神様はひと暴れし、夏が近づいた。
缶が古びたので、新しい缶に住み替えたいと雷神様は言う。「お好みの缶はありますか?」というと「麦酒」という。私がビールを買いに行っている間、雷神様はひと暴れし、夏が近づいた。
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