2015年1月21日水曜日
2015年1月13日火曜日
一月十三日 電話
方方に用事があって、電話を掛けるが、どこにもつながらない。
呼び出し音は「トゥルルルル……」ではなくて「パッパカパーン」と軽快なファンファーレだから、仕方がない。
そのくせ、電話は鳴りっぱなしである。こちらからは掛けられないのに。
取れば、聞いたことのないような早口で、さっぱり何を言っているかわからない。
「どちらにお掛けですか?」「番号のご確認を」と言って切っても、すぐに掛かってくる。
何度目かで、ようやく耳が慣れてきたら、ひとつだけわかった。何かを祝う言葉。
私を祝っているわけではなく、なにかめでたいことがあったらしい。
よくわからないけれど「おめでとうございます」と相手に倣って早口で言ってみたら、電話は鳴り止んだ。
呼び出し音は「トゥルルルル……」ではなくて「パッパカパーン」と軽快なファンファーレだから、仕方がない。
そのくせ、電話は鳴りっぱなしである。こちらからは掛けられないのに。
取れば、聞いたことのないような早口で、さっぱり何を言っているかわからない。
「どちらにお掛けですか?」「番号のご確認を」と言って切っても、すぐに掛かってくる。
何度目かで、ようやく耳が慣れてきたら、ひとつだけわかった。何かを祝う言葉。
私を祝っているわけではなく、なにかめでたいことがあったらしい。
よくわからないけれど「おめでとうございます」と相手に倣って早口で言ってみたら、電話は鳴り止んだ。
2015年1月9日金曜日
2015年1月8日木曜日
2015年1月7日水曜日
2015年1月4日日曜日
十二月二十八日 鳥居
続く鳥居の向こうに、お稲荷さんが見えている。
歩いても歩いてもお稲荷さんに辿り着かない。
「キツネに化かされたかしらん」
とつぶやくと、「ウサギの仕業だよ」とお稲荷さんから声がした。
ウサギは毛を逆立てて、私の後ろで跳ねている。
歩いても歩いてもお稲荷さんに辿り着かない。
「キツネに化かされたかしらん」
とつぶやくと、「ウサギの仕業だよ」とお稲荷さんから声がした。
ウサギは毛を逆立てて、私の後ろで跳ねている。
2015年1月1日木曜日
人工衛星の街角
その人工衛星は、三百年前に役目を終え、今はただ、律儀に軌道を描いているだけ。
地球の人々はそう思っていた。
実際、百年前まではそうだったのだ。だが、人工衛星だって馬鹿ではない。作られた当時の最新技術が搭載されていたわけだから。
つまり、老いた人工衛星は退屈していたのだ。少し遊びたくなったのだ。
人工衛星は、よく見える目を持っていた。地球を何百年も観察し続けていた。それ以外にすることはなかった。だから、地球上の「街」という「街」をよく知っていた。己にも
「街」を作ろうと考えた。
「街」には「道」があり、さまざまな「建物」があった。人工衛星は「教会」がお気に入りだった。鐘があるから。それから「回転木馬」も好きだったそれからそれから。
石畳の道を作った。広場も作った。もちろん回転木馬をそこに配する。大きな教会には、ステンドグラスと鐘。
百年の間に、少しずつ、少しずつ、街を作った。しかし、何かが足りない。何かが足りない。
人工衛星は考えた。一生懸命考え、地球を観察し直したが、人工衛星が思い描いていた街は三百年前にはもう朽ち始めていた街だったのだ。いくら観察しても、そんな街は、もう地球のどこにも残っていない。
思い出すのに四十八年掛かった。そうしてやっとわかったのだ。
「街灯」だ。
人工衛星は自分の街に街灯を立てた。そして、「ぽっ」「ぽっ」とひとつひとつ明かりを灯していった。
地球の人々が夜空を見上げる。忘れられた人工衛星が輝いている。
架空非行 第6号
地球の人々はそう思っていた。
実際、百年前まではそうだったのだ。だが、人工衛星だって馬鹿ではない。作られた当時の最新技術が搭載されていたわけだから。
つまり、老いた人工衛星は退屈していたのだ。少し遊びたくなったのだ。
人工衛星は、よく見える目を持っていた。地球を何百年も観察し続けていた。それ以外にすることはなかった。だから、地球上の「街」という「街」をよく知っていた。己にも
「街」を作ろうと考えた。
「街」には「道」があり、さまざまな「建物」があった。人工衛星は「教会」がお気に入りだった。鐘があるから。それから「回転木馬」も好きだったそれからそれから。
石畳の道を作った。広場も作った。もちろん回転木馬をそこに配する。大きな教会には、ステンドグラスと鐘。
百年の間に、少しずつ、少しずつ、街を作った。しかし、何かが足りない。何かが足りない。
人工衛星は考えた。一生懸命考え、地球を観察し直したが、人工衛星が思い描いていた街は三百年前にはもう朽ち始めていた街だったのだ。いくら観察しても、そんな街は、もう地球のどこにも残っていない。
思い出すのに四十八年掛かった。そうしてやっとわかったのだ。
「街灯」だ。
人工衛星は自分の街に街灯を立てた。そして、「ぽっ」「ぽっ」とひとつひとつ明かりを灯していった。
地球の人々が夜空を見上げる。忘れられた人工衛星が輝いている。
架空非行 第6号
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