寂しい夜にラジオの電池が切れていると絶望する。
部屋には他にもラジオがあるけれども、寒さと不安で布団から出られない。
2007年12月7日金曜日
十二月六日 本当のイルミネーション
星が見えなくなる、と憤慨しながら、ウサギは家家に飾られたイルミネーションをプチプチと食べていく。
ふゆの夜はしん、としていてほしい。クリスマスを彩るのは本物の星の瞬きが一番だ。
強くそう思う。だけども、ウサギのお腹も心配だよ。赤青緑に点滅するお腹を擦って看病するのは、わたしだもの。
ふゆの夜はしん、としていてほしい。クリスマスを彩るのは本物の星の瞬きが一番だ。
強くそう思う。だけども、ウサギのお腹も心配だよ。赤青緑に点滅するお腹を擦って看病するのは、わたしだもの。
2007年12月6日木曜日
2007年12月4日火曜日
春の訪れ
凍り始めた土をつるはしで掘っても埒があかない。そんなことはわかっている。それでも時間をかけてつるはしを振り下ろせば、冷たく硬い土も少しづつ砕かれて穴が出来る。
俺は出来た穴にポストを設置する。小さなポストだ。まもなく雪が積もってポストは埋まるだろう。やがて冬と春の真ん中になったら、狸のおっさんが滝のような小便をしてポストを埋めた雪を溶かしておいてくれるはずだ。
ポストの中には、動物たちが冬眠中に芽を出してしまった恋が入ってくる。小便臭いポストの扉を開けて、ふぅと息を吹き掛けると、恋の芽はひらひらと飛んでいく。飛び去る恋の芽を見送りながら、いよいよ春だ、と俺はうれしくなる。
時々、元の持ち主に帰れなかった恋の芽の仕業で、みょうちきりんなカップルが出来てしまうのは、ご愛嬌。
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コトリの宮殿規定部門投稿作
2007年12月2日日曜日
十二月二日 必要な印鑑に、必要なもの
印鑑を探して、ベッドの下に潜ったら頭をぶつけた。
痛いのでベソをかいたら、ウサギが赤い舌であっかんべーをする。
なんて意地悪をするんだ、痛くて泣いているのに、と思ったけれど
いつまでも舌を出しているので、よくよく見たら朱肉だった。
痛いのでベソをかいたら、ウサギが赤い舌であっかんべーをする。
なんて意地悪をするんだ、痛くて泣いているのに、と思ったけれど
いつまでも舌を出しているので、よくよく見たら朱肉だった。
2007年12月1日土曜日
仮面
鏡に向かったあなたは、己の顔が真っ白になっていることに狼狽した。のっぺらぼうになったわけじゃない、仮面を着けているだけだろ、と言うと安堵する。だが仮面は外れない。あなたは再び焦り出す。
あなたは呼吸するための二つの穴に指を差し入れた。指が何にも触れない?まさか。鼻にも何も感じないのか。
あなたは視界を確保するための穴に望みを託す。穴の奥にあるはずのあなたの瞳は見えないが、それでもあなたは指を入れようとする。きつく目を閉じて、と言うとあなたは力強く頷く。
指が入り、手が入り、腕が入っても、まだ何も触れないようだ。肩が入りそうになったと思ったら、あなたは穴の中に引き込まれ、消えた。
落下し、硬い音を立て、鏡の前に転がる仮面。これは一体何だ。あなたはあなたの顔を失ったまま消えたのか。消えなければならなかったのか。
わたしはあなたの温もりを求めて仮面を手に取った。
刹那、鏡に映る真っ白な顔。
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500文字の心臓 第72回タイトル競作投稿作
△2
あなたは呼吸するための二つの穴に指を差し入れた。指が何にも触れない?まさか。鼻にも何も感じないのか。
あなたは視界を確保するための穴に望みを託す。穴の奥にあるはずのあなたの瞳は見えないが、それでもあなたは指を入れようとする。きつく目を閉じて、と言うとあなたは力強く頷く。
指が入り、手が入り、腕が入っても、まだ何も触れないようだ。肩が入りそうになったと思ったら、あなたは穴の中に引き込まれ、消えた。
落下し、硬い音を立て、鏡の前に転がる仮面。これは一体何だ。あなたはあなたの顔を失ったまま消えたのか。消えなければならなかったのか。
わたしはあなたの温もりを求めて仮面を手に取った。
刹那、鏡に映る真っ白な顔。
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500文字の心臓 第72回タイトル競作投稿作
△2
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