「キナリちゃん、何飲む?」
「ココア」
よく晴れた夜、少女と月は鬼の部屋にいた。
「ハイ。どうぞ、めしあがれ」
「いただきます!…オニ、今日のクッキーはカクベツにおいしいよ」
少女がそういうと、ココアがクッキーを食べ始めた。
クッキーが次々とマグカップに飛び込んでいく。
たっぷりあったクッキーは、瞬く間になくなった。
「おい、まだ私はひとつも食べていないぞ。卑しん坊のココアめ。」
月が嘆くと鬼は言った。
「もう一度作りましょ」
「でも、またココアが食べちゃうかもしれない」
「心配ないわ、キナリちゃん。ココアはもう満腹で食べられないはずよ」
2005年5月6日金曜日
THE MOONMAN
「……月の男は、エリーをしっかりと抱きしめ、口づけをしました。エリーにはそれがお別れの挨拶だとわかりました。とうとう、二人のくちびるが離れました。そして、月の男は振り返ることなく去ったのです。おしまい」
長い名の絵かきは「THE MOONMAN」と題された本を閉じると、月に言った。
「この月の男は、ずいぶんモテるんだね」
背の低いコルネット吹きは
「この月の男は、ちょっとばかり、かっこつけすぎているよ」
と笑う。
「ナンナルは、こんなこと書かれてイヤじゃないの?」
少女の声は、刺々しい。
月は溜め息をついた。一体誰がエリーと月のことを書き残したのであろうか。863年も前の恋物語を。
長い名の絵かきは「THE MOONMAN」と題された本を閉じると、月に言った。
「この月の男は、ずいぶんモテるんだね」
背の低いコルネット吹きは
「この月の男は、ちょっとばかり、かっこつけすぎているよ」
と笑う。
「ナンナルは、こんなこと書かれてイヤじゃないの?」
少女の声は、刺々しい。
月は溜め息をついた。一体誰がエリーと月のことを書き残したのであろうか。863年も前の恋物語を。
2005年5月5日木曜日
月をあげる人
「お月様をあげます」
月と少女は、男に声をかけられた。
差し出された手には「月」と書かれた紙があった。
二人が何も言わずにいると
「お月様をあげます」
ともう一度言う。
「月は私だが…」
と月が言いかけると少女が遮った。
「ありがとう。お礼に飴あげる」
男はニコリとして去って行った。
「なんだ今のは。キナリ、やっぱり文句を言ってくる」
すぐに「お月様をあげます」と後ろでも声がして月は溜め息をついた。
その晩、街を歩く人は皆「月」の紙を持っていた。
「ねぇ、ナンナル。あの人、お月様がきれいなことをみんなに教えたかったんだよ。ほら、みんな月見ながら歩いてるよ」
月と少女は、男に声をかけられた。
差し出された手には「月」と書かれた紙があった。
二人が何も言わずにいると
「お月様をあげます」
ともう一度言う。
「月は私だが…」
と月が言いかけると少女が遮った。
「ありがとう。お礼に飴あげる」
男はニコリとして去って行った。
「なんだ今のは。キナリ、やっぱり文句を言ってくる」
すぐに「お月様をあげます」と後ろでも声がして月は溜め息をついた。
その晩、街を歩く人は皆「月」の紙を持っていた。
「ねぇ、ナンナル。あの人、お月様がきれいなことをみんなに教えたかったんだよ。ほら、みんな月見ながら歩いてるよ」
2005年5月4日水曜日
水道へ突き落とされた話
月と少女が歩いていると、すぐ目の前のマンホールのフタが勢いよく跳ねて中からレオナルド・ションウ゛ォリ氏が顔を出し、「ほほーい」と言うとすぐ消えた。
月が驚いていると、ションウ゛ォリ氏は月の背後に現れて背中を押したので、月は水道に墜落した。
「ナンナル!」
心配そうに水道を覗き込む少女の隣で
「ナンナル殿、水も滴るいい月のできあがり、ですぞ」
と満足げなレオナルド・ションヴォリ氏は、じいさんだ。
月が驚いていると、ションウ゛ォリ氏は月の背後に現れて背中を押したので、月は水道に墜落した。
「ナンナル!」
心配そうに水道を覗き込む少女の隣で
「ナンナル殿、水も滴るいい月のできあがり、ですぞ」
と満足げなレオナルド・ションヴォリ氏は、じいさんだ。
2005年5月3日火曜日
はたして月へ行けたか
「ヌバタマ、今夜は一緒に月へ来てもらう」
月がそう言うと、しっぽを切られた黒猫はプルンと左耳だけを動かした。蝿でも追い払うように。
「キナリも行く」
少女は高らかに声をあげた。
「ヌバタマだけだ」
「なんで? どうして? ナンナル!」
月は応えず、黒猫を抱えて出て行った。
少女は長い時間ベッドの中で泣いていたが、やがて眠った。
朝、少女が目覚めると、黒猫はいつもの通り、お気に入りのクッションの上で丸まっている。
「ねぇ、ヌバタマ。月に行ったの? どんなところだった?」
黒猫は寝返りをうつだけ。
月がそう言うと、しっぽを切られた黒猫はプルンと左耳だけを動かした。蝿でも追い払うように。
「キナリも行く」
少女は高らかに声をあげた。
「ヌバタマだけだ」
「なんで? どうして? ナンナル!」
月は応えず、黒猫を抱えて出て行った。
少女は長い時間ベッドの中で泣いていたが、やがて眠った。
朝、少女が目覚めると、黒猫はいつもの通り、お気に入りのクッションの上で丸まっている。
「ねぇ、ヌバタマ。月に行ったの? どんなところだった?」
黒猫は寝返りをうつだけ。
2005年5月2日月曜日
2005年5月1日日曜日
星でパンをこしらえた話
ドシン
「流星!」
月は不機嫌な顔で流星の後姿を見送る。
「ナンナル。これ何?」
少女は道にばらまかれたものを指差した。
「あぁ、それはヤツのカケラだ。激しくぶつかったから、砕けたんだろう」
「流星は痛くないの?」
「痛いものか。それ、パンに混ぜると美味いぞ」
「じゃあ、オニに作ってもらう!」
月と少女はオニを訪ねた。「まぁ!星のカケラ!素敵ね。早速こしらえましょう。どんなお味かしら、楽しみだわ」
小さな少女と恐ろしい顔の鬼が一緒になってパンをこねる。それを見て、月は流星にぶつかるのも悪くないと思った。
「流星!」
月は不機嫌な顔で流星の後姿を見送る。
「ナンナル。これ何?」
少女は道にばらまかれたものを指差した。
「あぁ、それはヤツのカケラだ。激しくぶつかったから、砕けたんだろう」
「流星は痛くないの?」
「痛いものか。それ、パンに混ぜると美味いぞ」
「じゃあ、オニに作ってもらう!」
月と少女はオニを訪ねた。「まぁ!星のカケラ!素敵ね。早速こしらえましょう。どんなお味かしら、楽しみだわ」
小さな少女と恐ろしい顔の鬼が一緒になってパンをこねる。それを見て、月は流星にぶつかるのも悪くないと思った。
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